虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

温かな目



 そもそも、俺の扱いは現状でも特級会員に近いモノだった。
 人を自在に蘇生させ、あらゆる状態異常を治すことができる人物が、そもそも普通に優秀な者と同じ扱いなわけがない。

 今回の特級会員制度はギルド長にとって、そんな扱いに困る俺を隠すための考えとしてまさに渡りに船だったんだとか。
 ただ優秀だから、というより特級会員だからという方が誤魔化しやすいだからだ。

「──と、いうわけなんだよ」

「大変なんだな……あいよっ、新作の雪狼肉の串焼き完成!」

「おっ、さすがだな。きっと絶妙な焼き加減もバッチリだと信じてたぞ」

「へへっ、全部お前さんのお蔭だよ」

 北で手に入れた素材を屋台の店主に焼いてもらい、さっそく頬張る。
 すると雪のように蕩ける、舌触りのよい味に感激した。

「──ふむ、私にも貰えないだろうか?」

「…………」

「……作ってやってくれ。ちゃんと金は持っているんだろう?」

「当然だ。いくらになる?」

 適正価格を提示して伝えると、スッとどこからともなく金貨を取りだす『騎士王』。
 ──ちなみにプレイヤーは、意識するとお金が出てくるのでほとんどの者が似たような感じでお金を準備するぞ。

「あいよっ、ちょっと待ってな!」

「うむ、期待しているぞ」

 店主が屋台の中に引き籠もると、いつものように風の魔法か魔術で辺りから声が漏れないようにシャットアウトを行う。

「それで、例の豪邸は使えているか?」

「それが予想外な出来事だ。さすが『生者』謹製の品というか、なんというか……持っていても『円卓騎士』が誰一人として何も言わない逸品だったぞ」

「……ん?」

「初めは突然持ってきた品に疑いの目が向けられたのだが、『これは『生者』からの友情の品だ』と言うと、皆なぜか温かな目を向けて勝手に納得するのだ」

 まあ、シルバ二アファミリーみたいな小さな豪邸だからな。
 いきなり王様が、他所の人からお人形遊びの舞台を貰えばそりゃそうなるか。

「遊び道具だと思ったんだろう」

「……私は、そこまでストレスが溜まっていると思われたのか」

「まあまあ、そんなに落ち込むなって。──ほら、ちょうど肉串も来たからな」

「あ、ああ……頂こう」

 疲れているのだろう、話すたびに気力が落ちているように思える『騎士王』。
 俺もそこまで上手いことが言えるわけではないので、ここは美味いものでどうにか癒されてもらいたい。

 と、いうわけで『騎士王』には俺が手に入れた素材をふんだんに料理してもらった物を食べまくってもらう。
 ──ストレス解消には食事がいい、人によるがこれが最適という者もいるからな。


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