虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
重力発生装置
「……なるほどね、要するにハイブリッドなカメレオンと言ったところか」
《そういった見解でよろしいかと。なお、種族名は『避役射猿』でした》
「……ああ、そんな名前の幻獣が居るって、聞いたことがあるな」
他には『変色竜』とか『変色蜥蜴』といった表記もあるらしい。
もちろん、カメレオンの話だぞ。
ただその幻獣について、俺はさっぱり分からない。
別名から、竜っぽい可能性もあるが……いつかこの世界でも見つけられるかもな。
《その身が宿す特異な性質により、五感で彼らを感知できなくなるのです。一種の固有な性質だとでも思ってください》
「それは便利だな。再現に成功するだけで、敵に襲われる確率がグンと下がる」
《現在解析中です。また、似た能力を持つ魔物との比較検証を行いたいのですが……》
「ああ、それは別に構わないんだが……そんなの居たっけ?」
少なくとも俺の記憶の中では、透明になったりする魔物と遭遇した気はしないな。
《カムロドゥノンの戦いや、試練の過程でドロップしたアイテムとなります。ドローンにて範囲掃射をしたところ入手しました》
「それなら俺が気づくこともないか。管理は全部『SEBAS』に任せているもんな」
安心、信頼の『SEBAS』である。
ともあれ、光学迷彩以上の新技術を手に入れるためにも、『SEBAS』にはどうにか開発に成功してもらいたものだ。
──使い方は多種多様になるからな。
◆ □ ◆ □ ◆
N8
次のエリアに向かう過程で、道を選ばされるハメになった。
一つはそれなりに厳しい崖を登るコース。
もう一つは回り道をして坂を登るコース。
どちらを使っても目的地に着くのだが、行き先で手に入る採取品が異なっていた。
また、行く手を阻む魔物の種類や数もまったく違うのでプレイヤーたちは悩まされる。
「ちなみに、俺は前者を取った」
早い話、正攻法で崖を登ろうとするハードルが高くなるのだ。
ならば裏技、というか運営が予測しない方法であれば比較的簡単に登れる。
「と、いうわけで重力発生っと」
《『重力発生装置』──起動》
魔道具の中には、重さを自在に変更できるという物が存在した。
それを機械で精密に操作し、常に使用者の立ち位置に通常と変わらない重力を儲けることで好きな場所を『下』と定義できる。
それこそが、『SEBAS』に設計をしてもらった、この『重力発生装置』なのだ!
「魔法で宙を飛ぶなんてナンセンス。山はやはり自分で足で大地を踏みしめなければ」
それでこそ、雄大な山というものを味わうことができるのだ。
……無粋じゃないので、例の刺客たちが来ることもないだろうよ。
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