虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

裏五天談 その04



『ああ、すまんすまん! まさか、こんな所でリーダーに会えるなんてな!』

『…………』

『そうそう、お前……じゃなくてマスターがここに居るのが悪いんだろ!』

『…………』

 俺だと分かってしばらくすると、何事もなかったかのように振る舞う二人。
 かつてのゲーム内での呼び方で、親しく話しかけてくれる。

『……まあいいさ。たしかに俺は、有名どころの陰に隠れるようなダメマスターだしな』

『『そ、そんなこと……ないぞ?』』

『二人で合わせるなら、せめて疑問文にするのは止めろよ……ハァ』

 なんて馬鹿をずっとやっていてもよかったのだが、そうはいかない理由があって──

『苦労しているわね。とう……『死天』も』

『そのようにございますね』

 俺を二人が宥めている最中に、『孤天』が到着していた。
 それを追いかけるように『統天』の虚像が投影され、時間を稼いでいてくれたが……そろそろ限界だな。

 少し強く手を叩き、音を鳴ら……そうとしたが、ペチンという音しか鳴らない。
 だからだろうか、逆に全員の注意を引けてしまう……虚しいな。

『とりあえず、自己紹介をしようか』

 表とは違うメンバーかつ、異なるモチベーションではあるが……同じことをしよう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

『まずは俺から、『死天』だ。権能は死因のアイテム化だ。焼死なら燃やすアイテム、溺死なら水のアイテムって感じでな。悲惨な死に方であればあるほど、アイテムはより強化される……あんまり死にたくないが』

 まったく説明してこなかったが、『死天』は死に方によって強力なアイテムを生みだすことが可能だ。
 まあ、神代の人形を一発で斬れたところから……死んだ理由は察してくれ。

 入れ替わるように立つのはキーシ。
 ニヤリと笑みを浮かべると、高々に叫ぶ。

『『破天』をやっている! 権能は何でも破壊できること! フリーで人探しをやっていたが……リーダー、俺は必要か?』

『まあ、居ないよりは居た方がいいな』

『おいおい、ここはストレートに欲しいって言うところだぜ!』

 人探し、か……破壊不能オブジェクトを破壊して、そこに隠れていた奴を依頼主の下へ運搬することだって、『SEBAS』が撮った映像を見て教えてくれたな。

 だがまあ、それは置いておいても『天』は十人……じゃなくて十個しか無い貴重な称号だしな。
 その持ち主の確保は、プレイヤー同士の争いにはかなり貴重だろう。

『だが、まだこの世界だと『渡り船』ができてないんだよな。タクマにしか会ってなかったのもあるが、何より俺は生産ギルドにしか加入していない』

『『……ハッ?』』

 説明がいろいろとアレだったか。
 追及してくる二人を嗜めて、次の紹介者に番を進めるのだった。


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