虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
当千の試練 その07
各エリアで灰色の人形が戦い続け──
「残るは……一体かな?」
《全区域における魔力暴走の停止を確認。また、一点への集中を観測しました》
「おうおう、最終決戦って感じを醸し出すのも面白い仕掛けだ」
ボコボコと湧き上がるマグマ。
それは、箱庭の中心にある火山の中で生みだされているモノだ。
異常な熱が俺を襲うが、断熱結界を予め構築しているので熱くもなんともない。
「というかこれ、勝たせる気あるのか?」
《旦那様がその場に居ることを予測していた可能性が高いです。そうなれば、確実にこの魔物が必要となるでしょうから》
「そんなに強い奴なんだな」
《詳細はまだ不明です。しかし、残った十五パーセントの魔力すべてが注がれた魔物ともなれば……厄介ではあると思います》
これまではパーセントの割合がさらに九分割されていたため、比較的一体一体の魔物が持つ魔力も過剰とはならなかった。
だが、これから生まれるであろう魔物は膨大な魔力を一体のみに注ぐ……それがどれだけの戦闘力を発揮するのか、俺には理解することができない。
「俺の別荘がある火山に誕生するとは……運の悪い奴だ。全力で俺が阻むと、なぜ分からないんだ」
山のてっぺんに設置した別荘。
まあそれもホイホ°イ式の物なのですでに片付けてあるのだが、それでも『もしも』のことを考えると少々腹が立つ。
「最悪、火山噴火で死の灰が降り積もるなんてオチもあるかもしれないし……ドローン展開、結界の構築を──」
《ご安心を。すでに設置しております》
「おっと、『SEBAS』の仕事の速さにはいつも感謝しているよ。お蔭で俺は、自分のことだけに悩んでいればいい」
《主を惑わすそのすべてを排除する。それもまた、執事の仕事ですので》
それは本当に執事なんだろうか? とも思うがあまり気にしない。
実際にそれをやってもらい、助かってる側でもあるので何も言えないからだ。
頼れる執事AI──『SEBAS』。
彼にすべてを任せれば、たいていのことはどうにかなるんだよ。
「──来たか」
《熱源反応を確認。どうやら、旦那様にお客人のようですね》
「こっちは数十分前から待機して、出迎えの準備を整えていたんだ……盛大にもてなしてやらないと、こっちの気が晴れないな」
魂へ直接攻撃するメスを指の間に挟み、ポケットの中から死の概念をぶつけるアイテムがいつでも取り出せるようにしてある。
準備は万全、これなら勝てる……そのときの俺は、当時そう思っていた。
──何が現れるのか、それを知らずに。
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