虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

革命 その12



 アイプスル

 久しぶりに戻ってきたこちらの世界。
 するべきことを行うと告げて、いったんこちらに帰還を行った。

「『SEBAS』、イケるか?」

《はい。旦那様であれば》

「……俺というより、:DIY:だがな」

 それに使われている、というのが正しい表現だろう。
 実際、意識を空っぽにしている時の方が品も出来がいいし。

「さて、設計図を確認するか」

 スキャンしてくれた神代魔道具の図面を投影してもらい、じっくりと眺める。
 当然、俺が俺の状態では理解もできない複雑な構造なわけで──

「:DIY:スタート」

《:DIY:が起動されました
 使用者『ツクル』の指定能力値の概念崩壊……成功しました
 アイテムの作成成功後、または条件無視によって解除されます》

 解放された無限の能力値、その思考力が叡智を俺に齎す。
 転移門を直すときもそうだったのだが、これを使っていると全能感が半端ない。

 ……戦闘に関する能力だったなら、ソイツは間違いなく最強の戦闘狂になれたかもな。

「まあ、俺には関係ないけどな。それより、街の方もついでに解析しておくか」

《畏まりました。そちらも投影します》

 街と工場のデータを見比べて、同じ術式が使われている部分を探っていく。
 未だに運用されていて、リンクしている部分がどこかしらにあると思っていた。

 それを見つければ、少しは状況に変化が起きるのだが──

「まあ、『SEBAS』が探していたんだから分かっていたか。俺にできるんだから、もう少し深めないと意味ないよな」

 思考のギアはゆっくりと上がっていき、今まで分からなかったことは判明していく。
 ……もちろん、それでもベースが俺なのであんまり分からないんだけどな。

「──工具が足りない。アレを使わないと無理だな」

 神代魔道具の正体……とまで仰々しくする必要もないが、結局それは人によって造られた物だ。
 神が創造したわけではなく、人が法則に遵い生みだした便利グッズ。

「来い、『万能手袋』」

 神器にして、究極の工具。
 本来であれば、俺みたいな虚弱な人に与えられような品ではないが……まあ、手に入れられたのだから有効に使おう。

「理論上はこの手袋と例の工具さえあれば、神代魔道具の製造は俺でも可能になる……けど、やれるのか?」

 悩む必要なんて、本当は無い。
 賽は投げられ、すでに動きだしている。
 俺にできるのは小細工をして、確実に勝てる方向へ導くことだけ。

「まあ……やるだけやってみるか」

 失敗したとしても、必要な要素だけを取り入れた魔道具であれば簡単に作れる。
 ──あれ、それでもよくないか?


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