虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

革命 その03



「……そして、この戦いをどう考えます? 貴方にとっても、無視をし続けることはできないでしょう」

『別に。それより、どうして協力しているのかな? もしかして、私を殺そうと──』

「それこそありえません。そもそも私に、貴方を殺すだけの力は持ち得ておりませんよ」

 隣にはフードを被った子供が居た。
 俺の渡した魔道具を使い、変声させた状態でスピーカーのように拡声した言葉を俺に伝えてくる。

「【暗殺王】さん、いったい貴方は私に何を見せてくれる予定だったので? 物によっては、英雄様たちの進軍を止めることができるのですが……」

『見ての通り、無限の兵だよ。その本質はまた別なんだけど、私が暗殺なんて仕事を請け負っても誰も責めれない理由の一つさ』

「……神代魔道具ですか」

『あの二人の所へ行っていれば、それももう分かっているか。そう、私が持っているのは工場みたいな物だよ』

 工場……人形の生産をそこでしているということか。
 そして、工場で創られるモノと言えば──

「食料も、貴方が牛耳っているわけですね」

『正解。畑や家畜が存在しないこの街だと、外部から運ばれる品よりも、私たちの工場で作られた物の方が食べられるんだよ』

「なるほど……そういうことでしたか」

 プレイヤーの[インベントリ]も、この街の住民全員の空腹を満たすだけの食料を持ち込むことはできない。
 神代の魔道具であれば、それすらも可能にしてしまう……だがまあ、闇厄街まで届いていないのだから問題があるんだろう。

『すべての品は同じ製造ラインで作られているから、こうした戦いが続けば続くほど値上がりするんだけど……何がしたいんだろう』

「──逆に、食料だけを作ろうとして、街全域に回すことができますか?」

『? 無理。昔と今とじゃ、想定している人数が段違い。暗殺だけだと生きていけないから、食料は売っている。けど、それがどうかしたの?』

 プレイヤーが来た影響も、少し混じっているかもしれないな。
 絶対に死なない……というより、殺しても殺しても蘇るのだから、わざわざ金を払ってまで殺す意味がないんだよ。

「暗殺ギルドそのものを、一度借りることはできませんかね?」

『……報酬は?』

「問題の解決。また、改善」

『改善?』

 少し説明が足りなかったか。
 解決は自分たちでもできると分かっていそうなので、わざわざ説明する必要もない。

「たとえば今、兵士と食料を同時に作ることはできない。だからこのような行動が長期間続けば、誰も幸せにならない」

『…………』

「私は『生者』、生きるための方法をよく知る者。闇厄街に住まう者たちを生かすため、しばし協力していただけませんか?」

『……足りない、かな? それはまだ仮定の話でしかない。目に見えて支払われる報酬がないと、承諾しかねる』 

 まあ、ごもっともで。
 俺もこれで納得していただけるとは、まったく思ってなかったし。

「では、こちらでどうでしょう?」

『こ、これはっ……!?』

 うん、興味をそそる品みたいだな。
 ──英雄、出番はまだだろうか。


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