虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
闇厄街 その05
さて、そんなこんなで無事に潜り込んだ英雄のお部屋。
「……隠す気、ありますか?」
「ななっ、なんのことか!?」
「──これ、なんだか分かりますか?」
英雄の発言はスルーして、これまたポケットの中から一つの眼鏡を取りだす。
「なんだ、それは?」
「古の人々が作りだした、素晴らしい能力を持った物なんですが……一度かけて、鏡を見てくれませんか?」
「…………分かった」
眼鏡というアイテム、そしてそこにあるという素晴らしい能力。
さてこの要素から分かる、眼鏡の能力とはいったいなんでしょうか?
英雄は受け取った眼鏡を少し調べ、別の魔道具で本当に危険が無いかを確認する。
もちろん、危険な能力なんて無いさ。
そうした魔道具で調べられるのは呪いがあるかどうかで、純粋な能力が危険だととらえることはできないんだ。
「そうか……た、試してみるぞ」
今の俺には、認識偽装を施している英雄の様子は理解できない。
なんだか○○っぽい動きをしているな、ぐらいの捉え方が限界だ。
そんな英雄が眼鏡をかけたことで、俺の認識外に眼鏡が行ってしまう。
「ふむ、これはなかなか……っ!」
「どうです、似合ってますか?」
「ききき、君はまま、まさか! ずっと使ってたのか!?」
おやおや、その効果に気づいたようだな。
英雄は眼鏡をかけたまま(だと思う)、俺の肩を掴んで激しく揺らす。
この死に方もよくあるよな。
俺は何も悪くないのに、どうしてこんな理不尽な死に方をしなければならないのか。
「英雄様がどう思うのか、それはご想像にお任せしますよ。私はただ、貴方がたの活動に有意義な品をご紹介しただけです」
「…………」
「この先活動を重ねれば、必ず暗殺者や密偵のような方々が来るでしょう。そんなとき、これがあればそれを看破することも──」
この眼鏡を紹介した理由の一つとして、商品としてのプレゼンが存在する。
持たざる者に手を差し伸べる英雄たちに向けて、プライス価格で売ってみようかと。
けどまあ、俺のそんな都合は英雄には関係ないみたいだ。
「つまり、君には私の姿が分かっていた……そういうことだな?」
「女性、ですよね? その立ち振る舞いは男のように繕っていますが、その程度であればしばらく共にいれば魔道具が無くとも気づかれますよ」
「なん、だと……ま、まさか! つまりアイツらは──」
「皆さん、貴方が女性だと分かった上で協力していたのでは?」
あわあわしている様子から見るに、まったく異なるようだ。
……うん、面白いからいっしょにいるのかもしれないな。
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