虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カジノ その09


「やっぱり、大きいですね……」

 黄金回廊の果て。
 そこに聳え立つ巨大な扉は、壁のように思えるほど強固な代物だった。

 使われているのは、これまでの道と同様に不壊の黄金。
 一本の筋が入っているため扉であることは分かるが、そこに引っ掛かりなどは存在していない。

「これが今、アナタには巨大な扉に見えているのね?」

「え、ええ……そう見えますよ」

「この扉はね、『選別の扉』という名前の神代魔道具よ」

 やはりそうだったか……。
 名前からして、何かを識別して情報を知るためのアイテムだと思うが……さすがにノーヒントだと、判断は難しいな。

「招かれた客人によって、その大きさを変えるその扉は──その存在の重要性が大きければ大きいほど、扉が大きくなるのよ」

「つまり、私は──」

「ふふっ、気になるわね。王族であれば、地位が世界にどれだけ重要なのかどうかが分かる。……けど、アナタは『超越者』であっても、休人の身。休人自体が重要じゃないことは調査済み、アナタだから大きく見える……面白いわ」

 すでに試している?
 それが正規の方法で門を潜ったということなのか、それとも……無理になのか。

 だが、それが大きいということには関係なかったのか。
 休人は設定上、ただの旅行者。
 運営がどう定義付けているかはさっぱりだが、この話からしてもそこまで必要とされていないのだろう。

 ……というか、休人の数が多すぎて重要にできなかったのかもな。
 大きな意味で休人が必要になっても、それはその事件に関わる一人であって他の休人は必要ない。

「『超越者』だから、という理由でここまで大きく見えているのでは?」

「それは違うわ、そっちも検証済み。大きく見えるって人もいたけど、そうじゃない人も確認済みよ。重要なのは、その本人がどれだけ必要とされているのか……『生者』が凄いのかしら? それとも他の何か?」

「どうでしょうね……私自体に、そうした資質はないと思うのですが」

 ただ、ずっと前に『冒天』の称号を手に入れたことがあったからな。
 もしアレと同じ条件で判定されるなら、この扉が巨大なことにも納得がいく。

「──それはともかく、この先にそろそろ向かいたいのですが……」

「あら、気になるのね?」

「カードを渡された時から、ずっと気になっていましたから……」

「ふふっ、そうね……なら、そろそろこの扉も開けてしまいましょう」

 そう言って『賭博』は、ゆっくりと黄金の扉へ近づいていく。
 この状況で、まさかの手動オープンというわけでもないだろうし……神代の魔道具が開く方法は、いったい何なんだろうな。


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