虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カジノ その08



 少し前に『拳王』と、同じように道を歩いた……だがそれも、ひどく昔のように感じてしまうのはなぜだろうか。

 どこまでも続く黄金回廊。
 これまでの派手派手しい道と異なり、そこは鏡のように透き通った金色の道だった。

「ここは……趣味ですか?」

「趣味ではないけど、気に入っているわよ」

「この金が、ですか?」

「ええ。透き通る黄金……これはどんな手を使っても破壊されないわ」

 なるほど、たしかに激レアアイテムだな。 気になった材質を確かめてみたが、前に使用した星の金属……には劣っているものの、かなりの強度を誇っているようだ。

 ただまあ、性質がまったく異なっている。
 名称は後で調べるとしてこの黄金、たしかに『賭博』が言っているように絶対に壊れない不壊の性質が宿っていた。

 ……壊せるけどな。
 絶対に壊れない物なんて存在しないし、壊れないことにも何かしらの条件がある。
 それを破る手段さえ有していれば……どんな物でも砕くことができるのだ。

「そんな黄金が廊下中に……なんだか、レア冥利に欠けますね」

「誰も取れないんだし、観賞用としてなら使い勝手もいいのよ。こうやって展示しておけば、勝手にその価値に気づく人が現れる。そして──次の会場でそれを要求する」

「手に入るんですか!?」

「ええ。もちろん、それなりの額が必要になるわよ?」

 その気になれば、掌から自在に生みだせるような物だが……いちおう言わないと、なんだか話の流れ的に怪しまれるしな。

 価値がどれくらいか? と聞かれれば、僅か一グラムで小国が買えるぐらいの額だ。
 むしろ聞かなきゃアウト、ぐらいのレベルのレアアイテムだよ。

「──そろそろ着くわよ」

 延々と回廊は続いている。
 飾られた備品でしかその場所を特定することはできず、ただ栄える黄金だけが視界を埋め尽くしていた。

 だがここで、大きな変化が映った。
 超巨大な扉が突然現れたのだ。

 これが幻影で隠されていたのか、それとも水平線の先から現れたものなのか……それはまだ分からない。

 遠近感が上手く掴めず、ただ巨大であることだけが認識できる。

「あの扉、大きいですね……」

「大きい? そう、アナタには大きく見えるのね?」

「? どういう意味で──」

「それも含めて、近くに行ってみれば分かるわよ……さ、あと少しだから」

 はぐらかされるように誘導され、扉へ近づいていく。
 あれも神代の魔道具? なら、その性能はいったい……。


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