虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カジノ その06



「そしてまあ、予想通りと」

 色だけなら説明もできる──金だ。
 キラキラ眩い黄金だけでできた、成金たちが気に入るような場所。

 だが俺が説明できるのは、ここまでだ。
 その目に悪いはずの光景にも、計算された美が存在する。
 それらが感嘆の息を自然に吐かせるほど、見る者の視線を奪う。

「いったい、どれだけの金を注ぎ込めばこんな幻想郷が現実に置けるんだろうか」

《算出しますか?》

「しなくていい……けど、報告しないだけで把握はしといてくれ。通常エリアとVIPエリア、それと裏VIPエリアでどれだけ使われてるかだけ気になるから、計算用に調べておいてくれ」

《畏まりました》

 少し気になってしまうからな。
 日本にもゴールデンテンプルがあるし、それとセットで産出するのもいいだろう。



 少しふらふらと歩いてみれば、当然ゲームしている人々の姿も目に移る。

「しかしまあ、随分羽振りの良さそうな客ばかり集まっています。さすがVIPエリア、そしてさすが……『賭博』さんですね」

「あら、気づいていたの?」

 そしてバレた、この場所の主に。
 偽装はしていたはずだが、『賭博』の領域で抵抗すること自体無駄だったのだろう。

 だが、周りもまた『賭博』に気づいた様子が無い……存在が希薄な気がするし、何か仕掛けがあったのだろう。

「ああ、たまたま見つけただけよ。……そんなこと、本当はありえないのにね」

「偶然の出会いですか。それはそれは、とても素敵ですね」

 ──嗚呼、俺の運LUC! お前のせいでバレたのかよ!

 この街は神代魔道具。
 当然その時代から存在するという意味で、それとは別の魔道具もこの地のどこかに収められていたのだろう。

 そうした魔道具であれば、今の俺の偽装を見抜くこともできる。
 科学を超えた魔法を、それすらも超えた神代の技術……転移以外解析できてないし、本当に厄介な物だよ。

「ところで『生者』、裏VIPにはまだ来てくれないのね?」

「ええ、もう少しこの場所を楽しんでから行きたいので……普通の方がそこへ行くための条件、などはありますか?」

「あるゲームで多大な額を稼ぐ、それかすべてのゲームで一定以上の額を稼ぐ。あとは、誰か別の裏VIPから承認があれば入れるようになるわ……もちろん、貴方は私が認めたのだから問題ないのだけれど」

「そうですか……では、すべてのゲームで楽しんできますね」

 返答は聞かず、そのまま近くにあったゲーム会場へ向かった。
 というか、向いてはいけないと直感と死亡レーダーが教えてくれたからな。


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