虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

歓迎会



 アイプスル

「──と、いうわけで新しい住民のレムリアだ。レムリアちゃん、挨拶を」

「……よろしく」

 パパッと帰還した後は、顔合わせを行うことにした。
 魔物たちが集まる行事がちょうどあったので、その場での紹介となった。

「特にやることがあるわけじゃないから、遊びに来たら心よく迎えてやってくれ……最近来るようになった、コミみたいな扱いで構わないぞ」

『はいっ!』『は~い!』

 成体と幼体の魔物たちが、共に了承の声を上げてくれる。
 レムリアの目的が何か分からないので、今は友好的に接触することだけにしておく。
 子供たちはすぐにレムリアに近づくと──

「ねぇねぇ、どこから来たの?」「レムリアちゃんは普人族なの?」「何か面白いことってできる?」「王様とはどうやって出会ったの?」「お腹空いてない?」

「お腹? ……空いた」

 お腹を抱えたレムリア。
 周りの子供たちも、よく見ると一部が似たようなアクションを取っている。
 飯、もう食べたはずなんだけどな。

「それじゃあ、歓迎会ってことで盛大な場でも設けるか。もちろん、今すぐ美味しいご飯も用意しよう」

『ご飯っ!!』

「今日の仕事は無しだ。せっかくだし、みんなで楽しんでいこうぜ!」

『オォー!』

 設営はすぐにできる。
 ホイホ°イカプセルは便利なアイテムで、機材の準備も一瞬で可能なのだ。

 何もない場所でカプセルを使い、離れた場所から放り投げた。
 すると、煙と共に圧縮されたテーブルなどが出現し、会場が設けられる。

「料理ができる者は手伝ってくれ。新しい仲間を迎えるパーティーだ、その間に美味しい食べ物を集められるだけ集めろ!」

 そうして、パーティーの準備はすぐさま始められるのだった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「レムリアちゃん、美味しい?」

美味しいふぉいふぃ

「良かった……なら、もっと食べて! 王様とみんなが作るご飯は美味しいんだから!!」

分かったふぁかっふぁ

 モグモグと料理を食べるレムリアの周りには、子供たちが集まり集めてきた料理をレムリアに勧めている。
 彼女もまた、それを頂き美味しいと感想を述べていた。

「……受け入れてもらえたか」

『当然だ。森の民たちが、人間たちのように異なる者を拒むことなど無い。同じ世界に住む同胞とあれば、こうして仲良くしていられるというわけだ』

「世界ってのは、なんとも幅が広すぎるからな。生きとし生けるもの、皆すべてが同じ星に暮らす仲間だ……なんてことを言う奴が俺の世界にも居たよ」

『ほぉ、そのような者もいるのか』

「だがな、結局は理想論なんだ。生きるために生き物を家畜として喰らい、分かり合えるのは同じ種族である人類だけ……そんな都合の良い考え方をしている者もいる。平等を謳おうと、それは同じ思考ができる者しか入れてないんだ」

 人間らしい傲慢な思考だろう。
 地球の頂点に科学の力で立ち、生物における弱肉強食の法則から抜けだした。

 故に俺たちは、こうして仮想世界を生みだすまでに技術を伸ばした。
 星を食いつぶす勢いで、己が欲望を満たすために。

「まあ、全員が全員そうってわけじゃない。子供たちは純粋に和平を望むことがあるし、要は環境の問題だ……ここの子供たちには、そうした未来もあるって教えてやりたいな」

『うむ。共に励もうではないか』

 物ノ怪の狐魅童子や普人(?)のレムリアと分かり合う魔物の子供たち。
 そうした小さな一歩が、争い続ける世界を変える鍵なのかもしれないな。


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