虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

巫女 その01



 なんだか『陰陽師』の時と、ほぼ似たようなパターンだよな。
 うん、今回も殺されまくっております。

「よく来たの……な。私がこの神社で巫女を行う者じゃ……だ」

 簾の奥に見えるのは、小柄な少女だ。
 ……御子じゃなくて、巫女だったのか。

「──『超越者』が末端、『生者』と申す者です。この度は、あちらのお方に招かれてこの場に馳せ参じた次第です」

「そうか、其方が『千苦センク』を永劫の封印から解いてくれた者か……このような場所からではあるが、礼を言いたい」

 簾の奥に映る影が、ペコリと頭を下げたように見えた。

 へー、センクっていうのか。
 千の苦しみ……悪鬼はたしか、節分でも使われている本来の鬼。
 病魔や不幸を連れる者だしな。

「で、あれば……友好的な関係でありたいとだけ。私から、貴方がたへどうこうしようとする企てはありません。さっきを放たれたならば別ですが、友好的な相手に殺気を向けるようなことはどうかと思いますので」

 この台詞セリフに半分の殺気が和らぎ、もう半分の殺気が増大する。
 物ノ怪の威圧も人の威圧も大差ないので、気にせず状況の変化を見届けることを選ぶ。

「……なるほど、あい分かった。自身で理解している者、まだ分かっていない者たちを連れて一度下がれ。センク、お主は納得しない者どものための護衛だ」

「ハッ、畏まりました」

「では、やってくれ」

 その言葉に、半数の物ノ怪たちが立ち上がり──もう半数の物ノ怪たちを無理矢理引っ張り、この場から連れだしていく。

「おい、離せ!」「巫女様の命だ。あのまま居るわけにはいかない」「『超越者』がこれまで俺たちに、何をしたのか覚えていないわけではないだろう!」「黙れ! ……奴は、センクを救った恩人。あの悪魔のような人間とは違う」「……くそっ」

 なんだか、先輩の中に問題児が居たみたいだな……何をしたんだか。
 お蔭でいなくなる物ノ怪たちは悲観ムードになっており、凄く悔しそうな顔を浮かべてこの場から去っていく。

 ……俺、悪人っぽいですかね?

「すまんの……ないな。アヤツらも、悪気はないのじゃ……だ」

「あの、普通に話してくれて結構ですよ。お気になさらず」

「……そうか? なら、お主も素の口調にしてもらいたい。相手がそうして硬いと、ついこちらもせねばと思ってしまう」

 ああ、お互い様でしたね。
 コホンと咳を吐き、改めて会話を続ける。

「改めて、『生者』のツクルだ。感じて分かるように、風が吹けば死ぬような虚弱体質だから気をつけてくれよ」

「私は『狐魅童子』じゃ。よろしく頼むぞ、『生者』ツクルよ!」

 こうして俺は、悪鬼が仕える巫女と初めて邂逅するのだった。


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