虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

幼女式神



 しばらく引き籠もった。
 その間に新たな技術を会得したが、それより何より国民たちと仲良くなれた気がする。

「──けど、これでもう終わりか」

《正確な場所を特定できました》

「コメ! おー、プリーズラーイス!」

 え、座標云々の話?
 今回ばかりはどうでもいいし、コメという偉大な存在の前には平伏するしかない。

「こればかりは『超越者』に依頼した方が早いか。プレイヤーが関わった物を使うと、あのセーブが働くんだよな?」

《はい。ですので、あくまでこちらの世界の者に行ってもらうことが最適かと》

「となると、チャンスは一度きりか? この機会を逃せば難しい」

《一度向かいさえすれば、何度でも転位可能ですがね》

 だからこそ、『騎士王』や『闘仙』、『錬金王』の元へ行けるのだ。

「さて、それじゃあアポを取りますか」

《連絡はこちらから行います。旦那様は、先日と同じ場所へ》

「ああ、行ってくる」

 転位装置を使い、すぐに街へ移動する。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──お待たせしました。あと、下手な敬語より素の態度の方が好ましいです」

「……いきなり言うのう」

 まあよい、と言って幼女はカランコロンと下駄を鳴らして近づいてくる。

「お初にお目にかかる、『超越者』よ。妾は『陰陽師』が式神──『一火』と申す」

「二度目ですけどね──ツクルです」

「……細かいことに口出しするでない。妾なりの誠意として、こうして本来の話し方で主からの伝言を伝えさせてもらう」

「伝言……ですか?」

 陰陽師、といえばあれだろう。
 彼女が言うような式神を操り、魑魅魍魎たちと戦う──東洋版エクソシスト。

 俺と接点が無いと思うんだが……そもそも極東の住民って【魔王】が会いに行くのだろうか?
 そんなことを考えていると、一火が正解を言ってくれる。

「では、伝言をそのまま読むぞ──
『新たな『超越者』よ、一度会って話をしてみたい。これは全員に一度は伝えたことのあるもので、ソチだけに言っているものではないから安心しておくれや。無論、もてなしはしますで?』
 だそうだ」

「一火さん、質問をいいですか?」

「妾に答えられるのならば、答えよう」

 予めそう確認してから──尋ねる。

「コメはありますか?」

「主食だからな。他にもいくつかもてなしの品を用意してある」

「──では、早く行きましょう」

「……お主、コメが食べたいのか?」

「そう、なのか……『超越者』という者たちは、いつも不思議な考えを持っておるな」

 何やら納得した様子の一火。
 ……あっ、やっぱりみんなそんななのね。


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