虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

入賞者情報



「は? ランキング入賞者の情報?」

「売れるか?」

「……あー、無理だな。残念なことに、部門は発表されたがそこは出なかったんだよな」

 翌日、拓真にランキングについて訊ねる。
 拓真に訊けば、大抵のことは分かるんだけれど……この言い方は。

「──お前の関係者がランキング入賞者、そうだよな?」

「うげっ」

「情報屋のくせに、お前はいつも隠していることが顔で分かるからな。知り合いを庇う時なんて、それが良く分かる」

「……マジで?」

「仕事の時も自分のことなら要領よくできるのに、誰かといっしょにやるとそういうのが出てくるからな。だからお前は一人でやらされることが多いんだよ」

 まあ、大半は冗談だが。
 顔ではなく仕草で気づいていることも、今はまだ内緒にしておこう。

「あっちだと顔を隠しているし、無表情スキルも入れてるんだけどな。こっちでもそういうスキルが欲しいぜ」

「それもそうだな。……さて、話を逸らさせはしないぞ。早く話せ」

 少し顔を歪めてはいるが、ため息をしてから渋々話し始める。

「優勝者を全員知っているわけじゃない。ただ……入賞者を数人な」

「へー、それってどの部門なんだ?」

「魔法と冒険だ。帰ったら掲示板と同業で情報を集めてみるが、今はそれだけだ」

「へー、それで優勝者は?」

「ああ、それは……いや、だから知らないって言っただろ」

 軽快なツッコミを入れる拓真。

 たぶん、こいつは知っているだろう。
 かつていっしょにやっていたネトゲにおいて、奴以上に膨大な情報を持つ者はいなかったからな。

「まあ、別にいいか。お前がそれを隠そうとするってことは特に危険があるわけじゃあないんだし……」

「そうだな、お前がピンチになりそうだったら言ってやるから任せておけ」

 結局、仕事よりも信頼関係を取ってしまう損な奴なのだ。
 ゲーム内で再開したなら、有り余る財力を使って金をばら撒いてやろう。



「──さて、話は変わるんだが……あのゲームにボスキャラっているのか?」

「魔王の存在は確認されてるみたいだから、たぶんそれじゃないか? けど、今は魔王が仲間になるなんて話も少なくないからなー」

「まだ分かってないのか」

 EHOのクリアを目指す……あるかどうかも分からない目的のために、【魔王】という友を見捨てるわけにはいかない。
 もし拓真から、【魔王】を滅ぼす系の情報が入れば……俺も、本格的に動こうか。

「さて、仕事に戻りますか」

「そうだな。残業に入らないよう、上手くやるしかないよな」

 そんな会話をしながら、俺たちは職場に移動していった。


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