虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カムロドゥノン その05



「現れたか……」

 膨大な数の魔物たち。
 多種族で構成された群れが、一つの方角に向けて進軍している。

 目的地はここ、サロックという町。
 大量の岩の柱が存在する岩盤地帯だ。

「ある程度、できる限りの準備はした。モルメスもストック多めに創っておいたし」

 脆弱な魂を切り裂くナイフ、それを数百本用意しておいた。
 ただし通常版より劣化しており、一度限りの使い捨て仕様としてある。

「ドローンによる遠隔攻撃も、設定は済ませてある」

 LMG04『エアロス』、無数の機関銃を取り付けたドローンたちが俺の手が届かない場所にいる魔物を倒す予定だ。

「あとはこいつだ──来い、『カエン』!」

 ポケットからボタンを取り出し、『アイプスル』へ繋がる信号を放つ。
 すると、目の前の空間が歪曲し、中から子供が現れる。

「お呼びでしょうか、マスター」

「かくかくしかじかだ」

「……うまうまさんかくですね、承知しました。私もマスターに用意して頂いた兵装を使用して参戦します」

「あ、ああ……頼む」

 カエンは敬礼をすると、姿を消してどこかへ移動を始める。
 なぜか、俺にしか見えない『光学迷彩レベル一』を使っていたんだが……もしかして、この場所はもう相手から丸見えなのか?

「今さら隠れてもしょうがないし、俺は囮役でもやりますか」

  ◆   □   ◆   □   ◆

 戦いの火蓋は切って落とされた。
 魔物たちには、軍団の長によってある一つの魔法がかけられている。

 ──耐状態異常付与エンチャント・バッドステータス

 あらゆる状態異常に関する耐性を持つことで、これから現れる守護者の攻撃による状態異常の発生率を防ごうとしていた。

 長は知っていた。
 相手が毒ではない毒を操り、触れただけで対象を殺す術を有していると。

 自分が用意した魔法が、『超越者』とはいえ休人ごときに負けるはずがない……そう想えていたからこそ、彼は驚く。

「馬鹿な。なぜ奴は、ここまでの力を有しているのだ! 不死性が奴の権能ではないというのか!」

 上空から舞い降りてきた鋼鉄のナニカ。
 それなら長い筒をこちらに向けて、不快な駆動音とともに現れた。

 遠くから飛んで来たそれは、少しずつ数を増やしていき……数百にも及ぶ数が最終的にその場に集う。

 初めはそれが何なのか、まったく分からなかった魔物たち。
 だが、彼らはそれを己が身を以って知ることになる。

 ──コウゲキカイシ

 ダダダダダダッと軽快に音が鳴り響き、空から弾丸の雨が降り注いでいく。
 魔物たちは、撃たれた弾丸に込められた事象の影響を受け、皆さまざまな死に方を以って輪廻へと向かう。

 これこそが、殲滅戦の始まりを告げる音色だった。


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