虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

素材分配



「お待たせしました」

「っ……! だ、大丈夫でしたか?」

「はい、ご覧の通りです」

 心配してくれていたようだな。

 実際大丈夫か、と聞かれれば何度も死んだと答えるのが正解だろうが……そこで真実を伝えて困らせるほど、俺は大人をやってきたわけじゃないんだ。

 大人は子供を不安がらせてはいけない、それが真理である。

「こちらが──先ほどのカエルだよ。君を追いかけていたもので合っているかな?」

「ほ、本当に分けてくれるんですか?」

「当然さ。私は後から割り込んだだけ、本来ならこの素材はすべて君の物なんだが……」

「とと、とんでもない! 貴方が倒してくれたお蔭で、生き残ることができました。本来ならすべての素材は貴方の物です!」

 やけに卑下する少年だが、子供から素材全部を奪うというのもあれだしな……。
 まあ、説得を続けるか。



 交渉を重ね、どうにか受け取ってもらえることになった。

 俺と少年の欲しい物が被らなければ、残りはすべて少年の物になる。

 途中から譲り合いになっていたものの、どうにか大人という立場をゴリ押しして交渉に勝つことができた。

「じゃあ、解体するね」

「お、お願いします」

 少年の許可も得たので、:DIY:を使いながら解体を行う。
 当然失敗などいっさいなく、完璧に素材ごとに解体することができた。

 皮鎧などに使う皮や食べ物となる脚、他には錬金に使える毒袋や舌などが有る。

 俺は少年に、最初の二つと魔石をプレゼントする予定だ。

 ──錬金術師でもなければ・・・・・・・・・・、必要としない物だからな。

「じゃあ、私は──」
「ぼ、ボクは──」

『これを……えっ?』

 俺と少年、双方が指さした先にある物──それこそが、カエルの毒袋であった。

「……えっと、君はどうしてこれを?」

「あ、あの、その……じ、自分で使おうと思いまして」

「君が? 君、自身がかい?」

「そ、そうですけど……」

 キョトンとした顔をする少年。

 嘘は言っていない、のかな?
 クエストで納品する必要がある、とかならまだ理解できたんだが……これは、もしかしてあるのか?

「どうやってか、訊いてもいいかな? 場合によっては、それを君に譲りたい」

「え、えっと……その、ポーションがこの毒袋で作れるんです。それがどうしても、必要なんです」

「君が……やるのかい?」

「……そうです」

 これも本心、みたいだな。

 嘘を吐こうか悩んでいそうだったが、結局嘘を吐いちゃ駄目だと思ったみたいだ。

 なら、俺もそろそろ訊くべきなのだろう。
 少年がどういった動きを見せるかは分からないが、それでも訊いておいた方が良い。

「──分かった。これは君に譲ろう」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ、ただし条件がある」

「……条件、ですか?」

 その条件を告げると、少年は苦悩した後に受け入れた。

 さて、俺の予想は当たるんだろうか。


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