虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

職業について



「職業は、レベルが100になるまで変更することは難しい。というか、普通の方法だと100にならないと転職できないんだ」

「ゆとり世代にゃ厳しいシステムだな」

 アイツら、コロコロと職種を変えようとするからな。
 何が「自分に向いてなかった」だ、好き嫌いで選んでたら全員スポーツ選手になっている時代だってあったんだぞ。

「前に一度説明したけど、もう一回だな。多分、そういうゆとり世代に教えたかったんだと思うぞ。一つの職業をやり遂げた時の達成感ってヤツをさ」

「……話が戻ってないぞ」

「おっと、悪い悪い。まあ、職業にもランクがあってさ、低ければ上げやすく高ければ上げ辛い。例えるとだな……最初のチュートリアルで就ける『見習い○○』なんてのは、1区画目の魔物を200匹ぐらい倒したり、生産で最も簡単なアイテムを200個ぐらい作れればカンストする」

「へー、結構簡単なんだな。要するに、職業ごとに決まった方法でもレベルアップ用の経験値が貯まるってことか?」

「そういうことだ、支援職や非戦闘職じゃ難しいからな。カンストすれば転職できるし、その職業で手に入れた初期スキルも継続して使える。……カンストする前に転職すると、一時的に凍結されるらしいが」

 ただ、数じゃなくて経験値だしな。
 ショウやマイは純粋なバトルで、ルリは回復行動でレベルが上がったのかな?
 どちらにせよ、難しいことばかりやっていそうなアイツらはすぐに転職したんだろう。

「そこが称号とのはっきりとした違いだ。称号はすぐに変えられるが、効果は決められていて変えられない。職業はすぐに変えることができないが、自由に変更できるし性能は上げれば上げるほど向上する」

「細かい設定があるんだな」

「むしろ、お前みたいに全く転職していない方がレアだからな。なんだよ、レベル表記が無いって、お前から聞いたとき驚いたぞ」

 転職システム、俺使えないんだよな。
 まあ、今の会社を貫くつもりの俺だし、このゲームでも一つの職を貫こうか。
 ……情報未定の謎の職業ブラックジョブだが。

 そしてここで、これまでに会ってきた凄い奴らのことを思い返してみる。
 称号組の『超越者』、彼らは一点特化の優れた力を持っていることになるのか。
 職業組の【仙王】、まだ一人しか会っていないがかなり多様な能力を使っていた。

 でも『超越者』って、ただでさえ凄いのに職業の力も加算されるのか。
 それに【仙王】も、称号も合わせることでより強くなる(もしかしたら、それ込みのあれだったのかもしれないが)。

「……前途多難だな」

「お前の話を聞く俺がな」

 拓真からまた新鮮な情報を仕入れ、俺は家に帰宅する。
 出迎えてくれた瑠璃、リビングで休憩していた翔と舞に職業と称号を聞いてみると――「それは会った時のお楽しみ」と言われた。

 なんだか、会うのが楽しみになったようなそうでもないような……圧倒的な差に落ち込む自分の姿が浮かぶよ。


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