虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
決着
戦いは、少しずつ好況になっていく。
先程の裂帛で疲れているのか、今まで通りの動きを取れていなかったのだ。
『くっ、ちょこまかと動きおる。アレで数を減らせてさえいれば』
「タビビトが残したこのチャンス、絶対に無駄にするんじゃないぞ!」
『オウッ!』
一斉に叫び、猛攻していく古代人たち。
武器をヘノプスの四肢に突き立てて、グリグリと抉っていく。
『ガグッ! き、貴様らぁああああああ!』
「怒っているだけでは、勝つことはできないと思いますよ。彼らの強い意志は、勝利を呼び込むに値する信念がありますから」
『休人がぁああ。この世界の者でもない者が意志を語るかぁあああ!』
「言うだけならば、誰でもできますしね」
痛みでキレているヘノプスに殺され続けるが、古代人たちに被害が出ないような立ち位置に徹している。
少しずつ、彼らはヘノプスを弱らせていっており、見て分かる程ヘノプスは衰弱する。
『……お主らは、この世界の先にどんな絶望があるか知らないのだ。例え未来が闇に包まれていようとも、それでも進む覚悟があると言うのか』
「知るか! この場所に居ても、俺たちの未来はすぐに潰える! ならば少しでも希望を求め、前に突き進むだけだ!!」
『そうか――ならば示せ! 終わりなき黒き悪意を払うだけの力が、お主らの魂に刻まれているのかを!!』
何やら、最終決戦のようなやり取りをやっている代表とヘノプス。
空気の読める古代人が攻撃を止めて後方に下がったので、空気の読めない現代人も遠くからそれを見守る。
『これが最後の一撃だ――超えてみせよ』
「これが、我らの選んだ道だ――決める」
大きく息を吸い込んだヘノプスと、槍を構えて突貫する代表。
決着は間もなくつく、俺たちはその瞬間の目撃者となるのだ。
『グォオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
「ハァアアアアアアアアアアアアアアア!!」
咆撃とも呼べるヘノプスの叫び声を、代表は槍一本で突破していく。
光を纏った鋭い槍は、代表に一本の道を生み出していったのだ。
穏やかな静寂が訪れる。
槍を地面に刺したまま、それに寄り掛かるように倒れる代表。
体中に切り傷を残し、虫の息なヘノプス。
「超えていくぞ、守護獣よ。新たな友と、俺たちは新たな世界を生きていく」
『……好きにしろ。この先にどれだけの絶望が待ち受けているのか、それを自分の目で確かめてみるが良い――持っていけ』
「こ、これはっ!」
ヘノプスが代表に渡したのは、ヘノプス自身の魔核である。
これがあれば、古代人たちはこの世界からの脱出が可能となるのだ。
『選別だ、儂の体を弄られるのも少々嫌な気分がしてな。さぁ、行くがよい』
「…………ああ、分かった」
そう言って、ヘノプスから魔核を受け取る代表。
『……これで、儂の役、目は終わり、だ……長かっ、た……永久の、刻は……』
最後に呟いたその言葉の意味を、知ることはできない。
ヘノプスの瞳は、ゆっくりと輝きを失っていったのだから。
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