虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大盛り
「なるほどね……つまり、俺たちがこっちの世界に来たからそんなことになったと……悪いことをしたみたいだな」
「へちゅに、ほっしゃんだけぎゃわりゅいわへじゃなにんじゃろ?」
「それもそうなんだけどな。ただ、間接的に俺も関わってたんだ。だからそう思った」
少年からわけを聞いてみた。
どうやらプレイヤーへの援助金のために、少年のような社会的地位の低い者たちが見捨てられたようだ。
プレイヤーは金の卵。
ショウたちのような優れた人材を支援すれば、その利益は多大なものになるだろう。
だが、利益が出るのもすぐではないし、全てのプレイヤーを援助しようとすれば、消費する額もかなりなものとなるはず。
……だからと言って、見捨てるのか。
ゲームの世界だからって、さすがにシビア過ぎやしませんか?
「……んっ。おっちゃん、報酬の方はいつ頃できるんだ?」
「見て嗅げば分かるだろ。ほら、凄い香りが漂ってる漂ってる」
「少し待ってろよ、坊主。どうせ材料も全部ソイツ持ちだ、この店で一番高いヤツを作ってるからな」
「マジで! おっちゃんありがと!」
「マジで!? ふざけんなよおっちゃん!」
店主の言葉に、最初は同じ言葉を発する。
確かに代金は持つって言ったけどさ……そういうのって、安いのにしとくもんじゃないのかよ。
「出せる時に旨い物を出す。出し惜しみなんてしてたら、商売上がったりだろ。お前さんも、出すなら最高の物を出した方が良かっただろ?」
「……それもそうだな。足りない材料が有ったらすぐに用意する。だから、孤児院の奴らの分だけでも焼いてやってくれや」
「おっちゃんっ!」
感極まっている少年だが、俺の心には小さな罪悪感が生まれていた。
これだって、焼け石に水に過ぎない。
スラム街は孤児院の子供たちだけが住むのではなく、もっと大勢の貧困層が住む場所である。
だから、これはただの偽善なんだ。
たまたま困っていた子供を見つけ、ソイツの家族にだけ食べ物を提供する。
仕方がないんだ。
俺には……俺独りには、そんなちっぽけなことしかできないのだから。
「――よし、これで充分だろう」
「……すげぇ。こんなにいっぱい食べ物があるの、初めて見た」
「おっちゃん、普通こんなに持ってけないって分かってるよな」
山のように、比喩として使われる言葉なんだが……目の前の光景はそれに似ている。
店で一番大きい皿の上に、これでもかと大量の焼き串が積み重ねられていた。
縦横ともにタレや肉の種類にばらつきを出し、子供たちがどの場所から取ろうとランダム性を感じられる一品となっている。
――だが、その山は異常にデカいため、通常の方法では持ち歩くこともできない。
「お、おっちゃん、俺がしっかり運ぶから、それは気にすんなよ」
「ん? いいっていいって、おっちゃんはこの対処法もちゃんと分かってやったんだよ」
「へ? どういうこと――って、え゛!?」
少年の疑問に答えるべく、持ち上げた皿をどこかに消し去る。
――少年の目には、服に付いている小さなポケットの中に、皿が吸い込まれたように見えただろう。
「プレイヤーの権能、アイテムボックスだ。一定の大きさの物なら何でも入るぞ」
……実際には少し異なるのだが、細かいことを説明することは俺にもできない。
目を輝かせて質問をしてくる少年をどうにか捌き、スラム街へと案内させた。
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