虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
冥王
そうしてやって来た王の間。
骨でできた玉座や鬼火の照明、または鉱石でできた煌びやかな場所を想定したいた俺だが……少し違っていた。
例えるなら、黒い礼拝堂だろうか。
席や十字架は無いものの、天上から降り注ぐ神々しさというか禍々しさというか……俺はとにかく、その場所を見て礼拝堂に近しいものがあると感じた。
それが、扉が開かれてから思ったことだ。
よーく奥を注視すると、奥の方に一人の子供の姿があった。
喪服のようなドレスに身を包み、頭から黒いベールを被った少女。
こちらを向かずに奥の方で天井を仰ぎ、何かに祈るように両手を絡めていた。
だが、扉が開いたことで俺たちが来たことには気付いているのだろう。
少女はゆっくりと立ち上がり、自身のサイズにあった玉座(よくゲームとかで見る普通のヤツ)に座る。
「……もう、来たみたいね」
それが、少女が立ち上がる際に呟いた言葉だった。
補聴器で微かに聞き取れたその言葉に、少しの違和感を感じながらも……謁見は行われていく。
◆ □ ◆ □ ◆
「初めまして、『超越者』君。ワタシがこの国の女王である『冥王』よ。貴男もワタシも同じ『超越者』、気軽に話して結構よ」
「……そうはいきません。貴女は女王という地位に就いていますが、私はただの無職の風来坊です。それに、同じ『超越者』と言っても格が違います。私のような末端は、貴女様に敬語を使うのが当然です」
少女らしいソプラノボイスで、『冥王』は俺に挨拶を行う。
この場には俺たち以外にも、人型魔物問わず強者が居るので、俺はしっかりと断ったということを主張しておく……調子に乗って殺されたくはないからな。
「あら? ではこうしましょう。貴男はワタシに敬語を使ってはいけません。格下と貴男自身が自分をそう評価している間は」
「……ちょ、『超越者』の階級に関しては置いておくとしても、貴女様は女王。私のような者は、いくら命じられてもそれを行うのは心が痛いと言いますか……」
「構いません。それに、貴男は正式な方法でこの国を訪問された賓客ですもの。どのような物言いであろうと構いませんよ。――そうですよね?」
最後の部分だけ少し声を上げると、周囲から放たれていたプレッシャーが少し強くなっていく。
……あの、それだけで何度も死んでいるんで勘弁してもらえませんか?
「……分かった。ただ、たまに敬語になるかもしれないけど許してくれ」
「ええ、充分よ。それじゃあ、貴男に訊きたいことがあるの」
口調を変えた途端、直ぐに話題を切り替える『冥王』。
顔は笑っているのだが、心なしか目が冷たくなっている気がする。
「答えられることなら、答える」
そう告げると、視線は冷たいまま『冥王』の口が開く。
「では問いましょう――第一権限、一体どのようにして手に入れたのかしら」
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