虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
宮殿
容赦なく連れていかれました。
目の前には巨大な宮殿が存在し、そこへと繋がる門はゆっくりと開いている。
物凄く歩かされたわけだが、この光景を見ていると微妙に湧いていた怒りも消え失せてしまった。
かつて存在したとされる、黄金郷が金だけでできた場所だと言うのならば……この場所は財宝郷なのだろう。
金だけに飽き足らず、この国(?)の入り口で見かけた門以上に金銀宝石が注ぎ込まれた宮殿は、見る場所全てがキラキラと眩い光を放っている。
宮殿そのものや装飾はもちろんのこと、歩く道も木々すらも、全てが金銀や宝石のような輝きを魅せているのだ。
「これ、地球で再現するならどれだけ金が必要になるんだろう……てか、一体売れば額はどれほどになるんだろうな」
《調べますか?》
「……いや、止めておこう」
ドローンは既に飛ばしてあるので、ある程度は調べることができる。
しかし、どうせ冥界の物を盗ったらアレ、的な神話を見たことがあるので、そうした欲望に火を点けないようにしておこう。
「しっかし、宮殿もまたユニークな感じだよな。形は普通だが所々に何か仕掛けが施されているよ」
《旦那様の死亡レーダーに反応するので?》
「ああ。魔道具とか魔方陣とかが主になっているな。つまり、中は利便性に富んだ要塞みたいなものか」
この場所は複雑怪奇で、建築技術や売られている物で地域や神話のベースを明らかにすることは無理だった。
宮殿もまたそうして不明な要素が多く、海外などでよくある丸い宮殿をベースに、さまざまな建築法を織り交ぜた建てられていた。
いろいろと人に優しく俺に厳しいその仕掛けは、そうした不思議な宮殿の至る所に存在している。
――その一つが、認証式の門であった。
「さて、そろそろ完全に開くみたいだな」
《既に、騎士らしき者たちが待ち構えておりますね》
「お出迎えご苦労様なこって」
というか、目に見える先で三人程、騎士らしき格好をした男たちが待機している。
死亡レーダーによると、『超越者』級の者ではないものの、かなりの強者が一人混ざっている。
ゆっくりと開いていた扉がその動きを止めると、俺と騎士たちは互いに何の遮りも無く対面する。
「君が報告された第一権限の保持者か?」
「はい、そうらしいです」
「……ふむ。言ってはなんだが、あまりそのようには見えないな」
「見た目と立場が釣り合わないことは自分でも思いますが、第一権限とやらがどういったものか未だに理解していませんので……。あの、どういった物なのですか?」
「それは全て、王の間で訊くといい」
そう言って、騎士は俺の誘導を始める。
……え゛? 会うのって、やっぱり王様とかだったの!?
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