虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

貢献イベント その18



 あれから、しばらくの時が過ぎた。
 この里でクエストを受けられるようになったので、俺は万屋として働きまくった。
 子供の世話だろうと素材の採取だろうと魔物の討伐だろうと……とにかく必死に活動を行った。

 ……中でも、子供の世話は多かったな。

 ほら、俺ってすぐに死ぬだろ?
 だけど『超越者』なんて大層な役割に就かされているからさ――非常に経験値的なものが貰えるみたいなんだよ(メタルなアレだ)。

 子供がさ、俺を殺すとバンバン成長するらしくて、その噂が里中に伝わっているんだ。

 故にいつも引っ張りだこの大忙し。
 何度も何度も殺され続けた。
 ……同じ対象を殺していると、少しずつ貰える経験値が減っていくというシステムが無ければ、もっとヤバかったかもしれない。

 ああ、別に強制させられたわけでも無かったし、みんな親切にしてくれたぞ。
 最初の頃は不審な目で見られていたが、行動で示していると、だんだんと認めてくれる人が増えていった。

「ツクルさん、今日は空いてるかい?」

「すみません。今日は魔物討伐の方をやることになっていまして」

「あら残念。古くなった調理器具を見てもらおうとしてたのだけど」

「分かりました。今度伺いに参ります」

「助かるわ」

 まあ、こんな感じの会話が行われるぐらいには人気だな。



「――お待たせしました」

『キィエ!』

「遅いぞ。……何か、あったのか?」

「いえ、どうにも子育てに熱心な方が多いもので。何かの依頼のついでに、私を家に呼ぼうとするんですよね」

「……確かに、今ではフリュも里の中で三、四を争う程に強くなったしな」

「一、二は里長兄弟の鳥ですよね」

 ……あの兄弟の、もう伝説上の鳥だし。
 今俺は、スリュ(ングス)と共に里の外に出ている。

 先程も説明していたが、行うのは魔物の討伐だ。
 厄介な魔物の間引きや、食料となる魔物の狩りを行うのが今回の目的である。
 彼と一緒に来たのは……まあ、色々とトラブルを起こした際に一緒に居ることが多かったんだよ。

「それじゃあ、今日もお願いしますね」

「……お前には、これを貰った借りもあるからな。ここに居る間は任せろ」

 彼の手には、弓では無い物――銃が握られている。
 それは、とある理由で弓が壊れた彼に俺が渡した代物だ。
 どうやら銃に適性があるようだったので、この里に居る間だけ、という条件付きで貸し与えている。

 火薬を使わない特殊な弾丸ではあるが、この技術が急にエルフの世界に介入するわけにはいかない。
 ここら辺は里長たちとも話し合ったな。
 俺が渡しておいて何を言ってるんだ、とも言われそうだが……本当に、今は必要になりそうなんだよ。

「――それじゃあ、行きますか」


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