虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

貢献イベント その15



 その場所は、濃霧が立ち込める薄暗い森であった。
 視界は悪く、少し先を見ることさえ儘ならないような場所を見つめ、男は言う。

「この先に、お前の望む場所がある。ただ、少しでもオレから逸れたら、多分そのまま出てこれなくなる……本当に行くのか?」

「もちろんです、案内係をお願いします」

「……どうなっても知らないからな。フリュも、頼んだぞ」

『キィエ!』

 すると、彼らは霧の中へゆっくりと入っていく。
 俺もその後に続くように、彼らの影を見失わないようについていった。



 途中でいくつかの装置を使ってみたが――どうやら森の中では、小細工はあまり通用しないみたいだ。
 暗視ゴーグルやソナーなどは反応せず、唯一死亡レーダーのみがこの場でも機能した。

 しかし、森の中は危険でいっぱい。
 どうやら大量の魔物も潜んでいるらしく、辺り一面に死の危険が隠れていて、あとから彼らに追い付くという選択は取れないようである。
 故に必死に彼らの影を見失わないように進み続け、目的の地へと急いだ。

「あの、目的地まであとどれくらいかと」

「そうだな……そろそろ着くと思うぞ」

「そろそろ、ですか」

 ちなみにだがこの質問、既に何度かしており、何度もこの答えを聞いている。

 いくら不死身が如く活動ができる俺でも、嵌め殺しをされると非常に困るのだ。
 なので、できるだけ早く霧を抜けたいのだが――全然目的地に着かないから心配になってくる。

「あ、二時の方向から魔物が来ます」

「分かった、フリュ!」

『キェエエエ!』

 たまに、魔物がこちらに来ることがある。
 そうした場合は即座に彼らに伝え、倒してもらっているぞ。
 鳥に騎乗した状態なのだが、正に人鳥一体の如く、正しい姿勢で弓を構え――放つ。

 すると、矢を放った方から悲鳴が上がり、死亡レーダーからその反応が消える。
 これが魔物に襲われた際の、王道パターンとなっていた。


 しかし、ここまでの道中で男が二の矢を継いだところを一度も見ていない。
 エルフって、本当に弓が凄いんだな。

 俺もアイプスルで、武器を使う練習をしたみたことがあるんだが、どれもこれもフニャフニャした中途半端な出来になった。
 剣を振ればへっぴり腰で、弓を使えば矢が曲がり、槍を使えば振り回される。

 どうにも俺は、王道を歩むには弛まぬ努力が必要なようだ。
 しかし、もう子供もいるような年だし、あまりやるぞ-! という気は起きない。

 それでも使いこなせるように、最低限の訓練はしているが……できるなら、争い事は少ない方が良いよな。


 そして、歩くこと一時間――ついに目的地へと到達した。


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