虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
移動失敗
E1
「……冒険だ、冒険がしたいんだ」
草原を歩いて進み、新たなフィールドの開拓を行っていく。
そう、俺はもう『超越者』に追われるだけの日々に疲れたんだ。
真・結界装置の作製も順調に進み、俺では説明ができない技術が使われている不思議な代物に改造された。
『SEBAS』が用意してくれた設計図を元に、テンションアップモードの俺がいつの間にか作っていたんだよ。
それでも、まだまだ『龍王』さんの結界に追い付いていないのが恐いところだ。
現段階ですら、とある鞘型の宝具みたいになってるんだぞ。
現段階で確認している最堅の結界――封神結界を再現できたなら……それこそ、神が家族を襲おうと少しは安心だな。
さて、本題に入ろうか。
確かに俺は、結界装置によって守るための力はある程度強化できた。
しかし、戦うための力が欠けたままだ。
「魔物を倒す作業がしたいんじゃない、俺がしたいのは戦いなんだよ」
激臭や寒天やスタンガンで倒すことを、俺は戦いとは認めないぞ。
他にも、毒とか病気とか色々とあるからこそ、そういうのはあんまりやりたくないんだよなー。
「……ハァ、今はこれが限界だしな」
現れた角兎を避け、スタンガンで気絶させたから回収する。
結局、口でどう言おうともやることは変わらないし変えられない。
武器として認定される物は重くて持てないし、魔法は偶に発動しただけで俺を殺すし。
……最も俺が生き残る方法は、効率を求めたものなんだよな。
抗うことのできない実情に少々ため息を吐いてから、再び歩を進めていく。
◆ □ ◆ □ ◆
E2?
「……あれ? 聞いていたのと違う」
E1との境界線を越えて、俺はE2に着いた……はずだったんだがな。
タクマに聞いていた話だと、E2は奥に森が広がっているとのことだったんだが――
「完全に、山道では無いよな」
見渡す限りの草原、だがE1とは異なる風景が広がっている。
「……まあ、死に戻りをすれば元の場所まで戻れるし、今は調査が大切だな」
かつて『アイプスル』で使用したドローン装置を起動して、八方角へと飛ばしていく。
座標もまた、足元に小さな装置を埋め込んで登録する。
転送陣は危険時用の物なので、今は座標だけ『SEBAS』に分かるようにした。
「湖に、山に、街に、城か……なんかもう、犯人グループは特定できたな」
あれから確認できた地形的特徴は、そんな感じである。
湖や山の説明はし辛いが、街や城は地球でも古代文明などによく見られる、摩訶不思議な石造りとでも言えば例えられるだろうか。
「単独かどうか、それは分からない。でもこれは確信犯だろうな――『超越者』」
俺はこのゲームで、望む行動はできないのだろうか。
遠くにうっすらと現れた影を見ながら、俺はそう呟いた。
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