虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

情報交流



 ログアウトをすると、俺の意識は現実へと回帰した。
 アーションを外して瑠璃の方を見ると、既にアーションだけが置かれていた。

「……遅れたかな?」

 EHOを始める前に、家族で話し合った。
 自分がどんなステータスにしたかを確認するため、ログインしたらすぐにログアウトをしてリビングに集まると。
 だが、気絶やら手袋の鑑定や色々とやっていたからな。少し遅れたみたいだ。



「父さん遅いよ!」

「翔、アンタだって私が見つけなきゃチュートリアルをやろうとしたでしょ」

「うぐっ、や、やってないんだから、それは言わなくても良いじゃん」

「はいはい。お父さんは……いつものことでしょうし、ちゃんと理由を訊いてからにしましょうね」

『ハーイ』

「……瑠璃、それどういうことだ?」

 リビングに向かった俺を、家族全員で待ってくれていた。
 やっぱり最後だったみたいだな。
 翔が少し怒っていたみたいだが、舞と瑠璃で抑えてくれた。

 だけど、俺が遅れた理由をいつものことで纏めるのは少し傷付いた。
 いつもじゃないだろう、俺に不幸体質でも付いてるっていうのか?
 ……いや、瑠璃の幸運度と比べれば、全人類が不幸に当て嵌まるんだけどな。

「だってアナタ、前にやってたゲームでも他のプレイヤーにケチ付けられてたでしょ? その前にやってたゲームでも、その前でも」

「あ、あれは……」

 とあるオンラインゲームの話だ。
 趣味丸出しのゲームスタイルを貫いていると、必ずという程に絡まれた。
『お前みたいな趣味丸出しの奴、調子に乗ってんじゃねえよ!』だの、『うらやま……けしからん!』だのと言われ続けたものだ……大半が、瑠璃が原因なのだが。
 リアルラックが半端無い瑠璃は、どのゲームにおいてもトッププレイヤーとして崇められていた。
 レイドボスを単独討伐、タイムアタック最速記録保持、初見クリアは御手のもの……かなり凄かった。
 そんな瑠璃と一緒にプレイしていた全然強くも無いプレイヤー、狙われるのも当然としか思えないな。
 瑠璃には全然自覚が無いみたいなので、俺に問題があるのだと感じているようだが。

 いつもネタプレイな俺にそんな輩に対処するだけの力は無かったため、いつもやられていた。
 まあ、そういう奴って一回やると満足するのか、それ以上は手を出してこなかった……不思議なものだよな。
 あ、ちなみにだが、子供たちにはそれについて話したことがある。

『母さん……やっぱ凄ぇんだな』
『お父さんも苦労してるんだね(そして、裏で工作している人も)』

 そのときの子供たちの感想は、こんな感じだった。
 翔は母の最強無双の部分に感動し、舞は俺の不憫さを嘆いてくれた。
 本当、舞は優しいなー。

「ま、まあ、俺が遅れた理由も、後で説明するから……とりあえず始めようか」

 そして、第一回家族情報交換会が始まる。


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