邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜

クロシヲ

第三百七十一話 ソーン・オブ・パラサイト

9章 Grim happy end


「なるほど……これが「骸」の所以ですか。「紅荊」でもいい気がしますけどね…」

眼下の川より襲撃を受けないギリギリの距離からゆっくりと川に沿って移動し、偵察を続けていたシグレは、変わらぬその光景にため息をつきながらそういった。

どこまでも広がる赤い色に、水面のいたるところに浮かび、水際では地面が見えないほど大量に存在する腐乱死体や白骨化した死体。
いたるところにウジや屍肉を漁るワームが発生しており、紅に染まる荊の中にはやはり死体が転がっている。

「……随分と無謀な人間がいたようで」

群生する荊の茂み、そこをよく見てみれば、見つかったのは、人間の死体だった・・・・・・・・

余すところなく大小様々な傷が刻み込まれ、胸に大きな穴が空いた皮鎧や腰から下の存在しなくなった防具を纏い、荊に剣を突き立てたままの姿勢で絶命している人間の死体。
死してからあまり時は立っていないようであり、その肉体には荊が根を張っている。
そして何より眼に映るのは、皮鎧に空いた胸の大穴をそのまま貫通した大きな根。
腐乱した肉体の内部にも根を張っており、すでに白骨化した死体の眼窩からは鮮やかな血の色をした薔薇のような花が大輪となって咲いていた。
見回してみれば、周囲にも似たような肢体が散乱している。
荊の棘に貫かれ、ぼろぼろになってしまいだらりと垂れ下がったローブをまとい、宝飾に彩られたきらびやかな杖を持っていたり、片刃の短剣ダガーを腰のベルトに固定したまま白骨化していたり、多少の違いがあるものの、そのすべてが紅い荊に絡め取られ、例外なく肉体に根を張られて絶命していた。

(使い魔経由では鑑定などのスキルが行使できないのが悔やまれますね……まあ、やばいことは確認しましたし、ここのフィールドの名前の理由もわかったので良しとしますか)

湖畔の近くに人間の死体は存在しない。
最低でも人間の死体が存在しするのは湖畔から100mほど離れた位置であり、周囲の荊の茂みの高さは5、6mほどであり、群生しているせいで前など見えなかっただろう。

つまり、人間達は川のことを知らないのだ。
この森を探索しにやってきた人間は全てあの薔薇らしき植物に捕獲されてしまっているため、奥に存在する本当の地獄を知らないのだろう。
だから、侵入者を絡め取りその死骸に寄生して花を咲かす荊の植物がある森。
だからこそここは「荊骸の森」なのだ。


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