邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜

クロシヲ

第九十九話 モノクロの世界

6章 玩具は盤上で踊る


『私、一応ここの主人のはずなんだけどなぁ』

そうぼやいたクトゥルフに対して反応するものはいない、ダゴンはすでに調査に戻り、シグレはゴーレムの改造に集中しているため聞こえてすらいないのである。

『何作るの?』

「………」

シグレは聞こえていないのか反応せずに黙々と作業を進める。

「ふむ…モンスターっぽい形にでもしてみましょうか…」

シグレはゴーレムに手を触れて形をミノタウロスのようにする。

「さて、ここから魔改造の時間ですね」

『お?なにやんの?』

このまま無視を続ければ質問し続けられて作業の邪魔になるのは火を見るより明らかである。
そう考えたのかシグレは振り返りもせず淡々と喋り始めた

「とりあえず武器と何か体に仕込もうかと。邪魔はしないでくださいね」

『おっけー、了解』

注意が聞いたのか真っ黒な神殿をを静寂が満たす。
その静寂を破るのは時折シグレが無意識に呟く「何を仕込みますかね…」「あれだからやっぱり武器は…」などといったものか、波の音のみであった。

「すいません。ここらあたりで一度失礼しますね」

『ああ、さようなら』

そして、外の世界では夜の帳が下りる頃、一度作業を中断して何処かへ消えていった。

『……………暗いよなぁ』

無論、クトゥルフにはこの空間がはっきりと見えている。
この神殿には光源と呼べるものは一切ない。
基本的に深きものどもけんぞくは深海でも周囲をはっきりと視認することができる、つまり、光源などなくとも関係はないのだ。無論クトゥルフも封印されているとはいえもともと暗視はできるしいざとなれば他の方法でどうとでもなる。
シグレが来た時は初めはただの人間だと思って一応あかりをつけておいたのだが最近はあかりがなくとも気にする様子がない。

自分が暗いと思っているのは、明るさではなく、自分の内面なのだろう。
何千万年、いや、何億年経ったのだろうか、時間の感覚などもとよりない。
もとより苦痛など感じぬこの身、何万年も、何千年も、何億年もただただ待ち続けた。

そこにあるのはただ一つ、それすなわち「退屈」である。

苦痛とも言えぬこの小さな感情は、少しづつ、確実にクトゥルフを蝕んでいた。
何千何億年と待つうちにクトゥルフの体を灼き、世界がモノクロに変わる。
何をやっても変わらない、退屈な世界。
それに耐えかねたクトゥルフは、ついには世界のシステムへの介入などという暴挙に出るまでとなった。

そして、モノクロの世界が色付く、退屈だったこの世界に、退屈であったこの時間に、一つの小さな波紋を呼び起こす。
たかが一度、されど一度、夜明けとともに戻ってきて作業するシグレの姿を見ながらクトゥルフは微笑む。

『ありがとう…』

消え入るような声で言ったその一言は、黒い神殿に溶けて消えた。


はい、なんかよくわからない回でございます

あ、一応ゴーレムは完成しています

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