紅鯨

ノベルバユーザー162616

ドラティス

手塚は嘘だろ、あのドラティスさんが目の前にいる。しかも自分に話しかけている。どうやらプロからみたら紅鯨はままごとらしい。どの辺りが?とアドバイスを聞きたかったが失礼だと思い口から出そうな言葉を飲み込んだ。ドラティスはホントのところ路上漫才とかやるやんけと思ってほぼ毎日見つけた日からは陰ながら見ていた。でもてんでコイツらの漫才はみていられなくて遂にネタを書いているだろう男の方に声をかけてしまった。
コイツはなんで俺のことめっちゃ見てんだ?
「お前!名前は?」ドラティスが思わず言う。
手塚は慌てて「手塚淳です!」としゃがんでオレンジジュースを取ろうとしていた体勢から思いきり立ち上がって名前を言った。
てづかあつしくん…。普通だな。小さい声で呟く。
「えっ?」思わず声が出てしまった手塚。
ドラティスが「お前ネタ書く方だろ、なんか普通すぎるお前らみたいなもんはネタを普通でいきたかったらもっと技術が必要なんだよ、その技術もねぇ奴が普通やってもウケないのは当たり前だ!」少しぶっきらぼうな感じで手塚に言った。「あと、相方の女の子に手塚は遠慮してるだろ、何かはわからんが。それやめとけ!絶対にスベる事に繋がってるからな!」手塚はギクッ!どころか他人から見てそんなに遠慮してるのがバレてるなんて…じゃあマリはとっくに気づいてるのかな?と、ドラティスさんのアドバイスの途中でもマリのことを考えてしまっている自分がいた事にびっくりした。ドラティスは「俺らプロなめんなよ!」と言って手塚のオレンジジュースを取って「これ授業料な。」と言って飲みながら歩いて行ってしまった。手塚は夢かなと一瞬思ったがドラティスと喋ってたのはまぎれもない事実だった。まだ暑い夏だ。

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