紅鯨

ノベルバユーザー162616

コンビ名

マリは相変わらずだなと手塚は苦笑いしながら電話を切った。
手塚はマリとなら漫才師になれるかもと根拠の無い自信があった。というのも付き合っている時マリはいつも手塚を笑わせてその度に手塚はマリにお笑いのツッコミみたいなのをしていた。そんなのが日常だった。その事を思い出し、感傷的な気分になっていると再びスマートフォンがバイブした。マリかな?と手塚は画面を見る。
大手お笑い事務所と表示されていた。急いで通話を押すと「もしもし、大手お笑い事務所ですが?養成所の件どうされますか、100万円用意できますか。」
手塚は考えて「100万円用意出来ないので大手お笑い事務所さんはやめときます。」と手塚はある考えの末言った。「了解致しました。」それだけ大手お笑い事務所は言うと電話を切ってしまった。手塚はあっけにとられて
何だったんだ、今の電話。と思わずにはいられなかった。またスマートフォンがバイブをしている。手塚は画面を見る、マリと表示されている。急いで通話のボタンを押した。なんだか嬉しい気持ちで。「もしもし、なんだったんだ?」手塚は冷静を装って言う。マリが「あっくん、あのねコンビ名どうする?」元気のいい声で手塚に聞く。手塚は考える「ちょっと考えさせてくれ、明日には決めておくから。」
「わかった!あっくんが決めたのがそのままコンビ名で良いからね!」マリは大きな声で言い放つ。
「じゃあ、明日な。」手塚は小さい声でマリに言う。
マリは「あっくん、コンビ名の件よろしくね。」
スマートフォンの通話が切れた。
手塚はコンビ名なるものは考えてはいたが、いざマリと自分とのコンビ名となると白紙である。
唸っているとタブレットとニュースで明日の月は赤みがかった大きな月になります。と書いてあった。それと同時刻に鯨と云う名前の新しい世界旅行船が出来たとのこと。手塚はこの二つを足して赤月鯨なんか語呂がダメだな。赤を、紅に変えて、紅鯨はどうだろう。早くマリの反応が聞きたかったが、電話を、かけるのをやめた。
女々しくなりたくない、でも女々しい。手塚はマリに対してのこの気持ちを隠し通せるのか心配になった。
スマートフォンに手が伸びてマリに通話ボタンを押して少しドキドキしながらマリが電話に出てくれるのを待つ。
「もしもし、あっくん?どうした?」手塚は「コンビ名な、紅鯨な。」恥ずかしくても言えた。
マリは「うわーめちゃくちゃいいじゃん!、紅鯨で、きまりだね。」手塚はホッと胸をなでおろした。

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