突然不死身という最強の能力に目覚めちゃいました

カナブン

登校2日目

「じゃぁ私ここで降りるね、またね!」

4区中央駅で鈴音が電車を降りる。
昨夜鈴音は玲の家に泊まり翌日の今日玲の通学と共に通勤していた。

「うん、そっちこそ気を付けてな」

玲は去ってゆく鈴音に軽く挨拶をする。鈴音の姿はあっという間に人混みの中へと消えていった。

「おい神谷、おはよう」

突然後ろから肩を叩かれ挨拶をされた。振り向くとそこには玲のクラスの担任、石田の姿があった。

「おはようございます」

玲が軽く挨拶を仕返すと石田は馴れ馴れしく玲の方に腕を置いて来る。

「なぁ神谷・・・さっきの美人さん誰?」

は?何言ってんのこの人さっきの美人さんって鈴音の事だよね・・・もしかして鈴音に一目惚れ⁈これは良い機会かも知れないなぁ

「鈴音の事ですか?俺の育ての親ですけどもしかして先生一目惚れっすか?」

「当たり前だろ、あんな美人滅多にいないからな、と言うか今まで生きて来て見たことないレベルだな」

玲のストレートな質問に石田は戸惑う事なくこれ又堂々と答える。

先生って意外と積極的なんだな。まぁ、ちゃんとした人か一応確かめとくか。鈴音にはいろいろ世話んなったしあんまふざけた奴だったらここで締めとくか。

「先生ってモテそうですけどいままで彼女いたこととかあるんですか?」

石田はルックスだけ見ればかなりモテてもおかしくない、玲は少し気になり聴いてみることにした。

「彼女?恥ずかしながら居たことはないんだよな〜それが」

石田は少し恥ずかしそうに頬を掻きながら答えてくれる。

意外だな、てっきり1人や2人はいたかと思ってたけどまさかゼロだとは・・・まぁ10人とか自慢気に言う女ったらしじゃなくっ良かったよ。危うく自分の担任を殴るところだった。でもなぁこのルックスで彼女居たことないってことは性格相当悪かも

「意外ですね、先生なら元カノの1人や2人いてもおかしくないと思ったんですけどね」

「まぁねこう見えても結構モテたんだよ俺、でもなんかピンッとくる人がいなかったっつうか・・・」

相手がごく平凡な人だったら見苦しい言い訳にしか聴こえないが石田が言うと何だかちゃんとした説明に聴こえてしまう。

「俺何で生徒相手に恋バナしてんだろ」

急に素に戻った石田がぽつりと呟いた。それにつられ玲の頭も一気に冷やされ冷静になってしまう。

本当何で俺担任と恋バナしてるんだろ。まぁ先生がそんな悪い人じゃないみたいで良かった。先生なら案外鈴音とも上手くいくかもしんないな。

鈴音の将来に微かな光が見え玲は少しだけ心が軽くなった様な気がした。

「なぁ神谷、そう言えばお前昨日戦闘学科の奴と喧嘩したみたいだな、やめろとは言わないが程々にしとけよ」

石田からの思わぬ言葉に再び玲の心は重くなってしまう。  

あー、かんぜんに忘れてた今日も放課後生徒会室行かなきゃいけなかったんだ。

「先生情報早いっすね、でも良いんですか先生がそんなんで、普通なら怒るとこっすよ」
 
「まぁ、そうかもね、でも理由も聴かずに怒るのは違うだろ、俺は自分の生徒のことは信じるタイプなんだよ、でも勘違いすんなよ然る可き時は容赦しないからな」

へー、結構良い人じゃん

玲はこれからの学校生活に少しゆとりができた様な気がした。

プシューッ

電車の扉が開く。どうやら電車は玲達の目的地まで来た様だ。

「じゃあこれで」

向かう場所は同じだが玲はここで一旦石田とは別れることにした。

「あっ、先生料理ができる人はモテますよ」

「?・・・ッ!サンキュー、恩に着るよ」

別れ際玲が言ったアドバイスに一瞬戸惑ってった石田だったがすぐその意味に気づき軽く手を挙げ礼を言っていた。


*     *     *     *


学校に着くと既に多くの生徒達が登校しておりお互いに挨拶を交わしている。しかし昨日のこともあり玲に声をかる生徒はいなかった。

まぁ、1日目にあんなことしたんだそりゃそうだよな、思ってたよりしんどいかも・・・

玲は1人この先の学校生活を想像し落ち込んでいると、また後ろで挨拶を交わす声が聞こえてくる。自分にだけされないウ挨拶に玲の思考はどんどんマイナスの方へと引っ張られていく。

これが世に言うボッチと言うやつか、実際になってみないとわからない辛さだな心がどんどん重くなっていく気がする、これはリア充には耐えられる様なものじゃないな。リア充はもっとボッチの精神力に敬意を払うべきだとさえ思えてくるな。

トントンと不意に背後から肩を叩かれる。
「ついに俺もボッチ卒業か」と期待を込め振り返るとそこには昨日助けた2人組みがたっていた。

「あの、昨日はありがとうございました」

「良いよ礼なんて、別にあんたら助けたくてやったわけじゃないし、ただあいつがムカついただけ・・・」

「それでも、僕達が貴方に助けられたことは変わらないので、本当にありがとうございました」

2人組みはそれだけ言うととっとと校内へと走って行ってしまった。

はぁ、ただの礼かボッチ卒業出来るかと思ったのにな、でもまぁ誰かに感謝されるのは悪い気はしないな。

「おはよう!神谷くん」

玲が少しだけ気を持ち直した時とうとう待ち望んでいた挨拶をかけてくれる人が現れた。玲は自分の気持ちに気付かれない様素っ気なく挨拶を返す。

「おはよ」

声をかけてくれたのは同じクラスの雨水 凛だった。凛は何故だか楽しそうに話しかけてくる。

「ねぇねぇ聴いてよ、昨日神谷くんが帰った後乃明先輩と一緒に美術部に行ったんだげど・・・」

玲は凛の話に適当に相槌を打ちながらそのまま教室へと向かう。

あ〜、なんで俺はあんなウジウジとつまらないことを考えてたんだ、俺には周りの目なんて気にしないで話しかけて来てくれるこんなにいい奴がいたのに。

玲の思考が凛によってマイナスからプラスへと変わって行く。さらにそこにもう1人玲に話しかけてくる人物が現れた。これ又同じクラスの黒牙 仁だ。相変わらず精神的な重い病によって一般人には理解し難い言葉を放っている。普通なら多少引いてしまうところだが、今の玲にはそんなことは些細なことでしか無い。

「我が主人よ今日も何処から奴らが来るかわからないからな、警戒を怠るなよ」

「忠告ありがと、でも朝くらいは普通に挨拶した方がいいと思うよ」

しかし玲のその態度は仁に自分の設定が受け入れられたと勘違いさせてしまう。

「そうかすまない、一般人共に俺たちの正体を知られるわけにはいかないからな、一般人に紛れるためのカモフラージュと言うやつか、だが安心しろ我が主人よ俺たちの言葉はサイレントマジックにより周りには聴こえてないからな」

「なぁ、雨水さん今の話聴こえてた?」

「今の話って警戒しろとかサイレントマジック?とかのこと?」

おいおい仁さんよ、サイレントマジックってなんだよ普通に周りに聴こえてるから、もしかしたらそういう能力あるのかと思った自分が馬鹿みたいに思えてくる。

「おい黒牙サイレントマジック(笑)とやらはどうしたんだよ」

「な・ん・だ・と、まさか俺のサイレントマジックを破る奴がいるとはな」

「いや、ウチなんにもしてないんだけど・・・」

凛は仁の目対応に少し困った様でついため息が出ている。玲はその光景に苦笑いしていた。

「ところで神谷くんさ、今日放課後生徒会室行くんだよねウチも一緒に行っていい?」

凛が急に変えた話に玲は再び考えない様にしていた事を思い出してしまう。

「まあいいけど、でもなんで?もしかして俺が怒られるのを観にくるとか?」

玲は冗談めかしに答えるとそれを真に受けたのか凛は慌てて「違う、違う」と胸の前で手を振って否定している。

「違うから、ただ乃明先輩が明日も遊びに来なって言ってたから!それに神谷くん怒られないでしょ、多分」

「どうかな、理由はあったけど人んとこ殴ったんだから怒られると思うんだけどな」

「大丈夫だよ生徒会の人達は正しい事をした人を怒ったりしないからか」

凛は現場にいなかったため玲達の状況は知らないはずだがとことん玲を信じてくれている。

「そいつの言うとうりだお前は正しい事をしただけだ何も心配する必要はない」

励ましてくれる2人の言葉に玲は少し気が楽になった気がした。

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