とある学園生活は制限付き能力とともに

りゅう

負けられない戦い















「晴樹君、今日はお互い頑張ろうね〜」

僕が廊下を歩いているとご機嫌ないか先輩が僕の肩を掴みながら言う。

「いか先輩、今日はよろしくお願いします」

「うん〜じゃあ、先に行ってるね〜お姫様が2人きりになりたがってるし…」

いか先輩は僕にそう言い残して先にバーチャルリアリティ空間に入るための設備がある部屋に向かう。

「晴樹…」

いか先輩がいなくなった直後、僕の後ろからゆき姉が現れてそっと僕に抱きついてきた。

「ちょっ、ゆき姉?急に何?」

急にゆき姉に抱きつかれた僕は混乱しながらゆき姉に尋ねる。

「………なんでもない。今日頑張ってって言いにきた」

「そう、ありがとう。すごく嬉しい」

そういうやり取りをしている間もずっとゆき姉は僕をギュッと抱きしめていた。

「晴樹…今日、いかに勝ったらこの前の返事聞かせて…」

「え、でもそれはゆき姉に勝ってからって約束じゃ…」

「お願い…」

ゆき姉が放った短い言葉にはゆき姉の強い思いが込められていた。

「わかった。今日雷帝に勝ったら必ず返事をするよ」

「うん。いかは強い…気をつけてね…絶対に油断しちゃダメ…」

「わかった。もうすぐ時間だから僕は行くね」

「うん。頑張って…」

ゆき姉は僕から離れて雷帝との戦いに向かう僕を見送った。





「あ、やっときた〜ねー、白雪姫と何を話してたの?」

バーチャルリアリティ空間に入るための設備がある部屋に僕が入った瞬間、先にこの部屋にいたいか先輩が僕にそう尋ねた。

「ちょっとした約束をしただけですよ」

「ふーん、なるほどねぇ〜どんな約束かは聞かないけど大体察しはつくかな〜まあ、その約束が果たされることはないし君が白雪姫と話すことも2度とないから安心して負けてね〜」

雷帝はニヤニヤと笑いながら僕に顔を近づけて言う。

「………どういうことですか?」

「あれ、白雪姫様から聞いてないんだ〜わたしね〜白雪姫様と賭けをしてるんだ〜あなたが勝つか、わたしが勝つかでね〜」

「何を賭けているんですか?」

僕は恐る恐る雷帝に尋ねる。昨日、僕が出会ったいか先輩とは全く別人のような雷帝に…

「簡単に言うとお互いの自由かな〜わたしが勝てば白雪姫はわたしのもの、わたしが負ければわたしは2度と白雪姫には関わらない…」

「そんなの守る保証が…」

そう、保証がなければこの賭けは成立しない。

「わたしの連れに自分が与えるルールを守らせる能力保持者がいるんだ〜だから大丈夫。賭けは成立する。わたしが勝てば白雪姫はわたしの側にずっといてもらう。あなたに白雪姫は渡さない…」

「悪いですけどゆき姉は渡しませんよ。ゆき姉は僕にとってかけがえのない大切な人なんです。ゆき姉は僕が必ず護ってみせる」

「………楽しみにしてるよ」

雷帝は僕にそう言い残してバーチャルリアリティ空間に向かった。僕も雷帝に続いてバーチャルリアリティ空間に入る。

「いよいよ始まりました。神峰学園ランキング戦2日目、その中で最も注目されている試合、雷帝vs完全なる模倣の使い手、本日はこの試合の解説役として白雪姫にお越しいただいてます。さて、白雪姫、今回はどちらが勝利を手にすると思いますか?」

「そうですね。今回の戦い、正直言って晴樹が雷帝に勝つのは難しいと思います。でも勝て!絶対に負けるな!私のために戦って私のために勝って!」

ゆき姉は生放送の場でそう叫んだ。ゆき姉の声は僕達のもとまで届いていた。

「愛されてるね〜憎いね〜わたしの白雪姫にあんなことを言わせるなんて〜」

「ゆき姉はあんたのものじゃない…その言い方はやめろ…」

「そういうのはわたしを負かしてからいうんだな…」

雷帝がそう言った直後、試合は始まった。絶対に負けられない戦いが今、始まった。



















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