とある学園生活は制限付き能力とともに
作戦変更
「みなさん、おはようございます。さっそくで悪いのですが今日の作戦会議に参加してもらいます」
僕達を起こしに来た杏奈先生が僕達に言う。杏奈先生の目の下にはクマができていて昨晩は寝ていないようだった。昨晩、僕達はアビリティアの大きな部屋を貸してもらいその部屋で寝ていた。部屋の中には全員分のベッドが用意されていて寝るだけの部屋としては十分だった。
「杏奈先生、お疲れみたいですけど大丈夫ですか?」
当夜先輩が杏奈先生を心配して尋ねる。
「ええ、大丈夫ですよ。少し寝不足なだけです」
杏奈先生は笑いながら言ったが当夜先輩や楓先輩、志穂先輩達杏奈先生と付き合いが長い人たちは杏奈先生が無理して言っているということがわかっていた。
「そうですか…無理はしないようにしてくださいね…」
「はい」
当夜先輩の言葉を聞き嬉しそうに杏奈先生が答える。
「じゃあ、準備も出来てるみたいですし行きましょうか」
杏奈先生が僕達を連れて部屋から出る。僕達は杏奈先生の後ろをついて行っていた。花実はまだ寝ているティナちゃんのお守りをしているのでここにはいない。
「皆様、おはようございます。昨晩はゆっくり休めましたか?」
杏奈先生の後ろを歩いていた僕達の後ろからヴィンセントさんが話しかけてきた。
「おはようございます。はい。ゆっくり休めましたよ」
一番後ろを歩いていた僕がヴィンセントさんに答える。
「そうですか、なら良かった…志穂様はいらっしゃいますかな?」
ヴィンセントさんの言葉に反応し、志穂先輩が僕の横にやってくる。
「志穂様、昨日は任務とはいえあの様なことをしてしまったことをお許しください」
ヴィンセントさんは志穂先輩に頭を下げて言う。
「もう気にしてませんから大丈夫ですよ。頭を上げてください」
志穂先輩が優しく微笑みながらヴィンセントさんに言う。志穂先輩の言葉を聞きヴィンセントさんは頭を上げて僕達と別れた。今から今日のレヴナント襲撃の下見に行くみたいだった。
「お待ちしておりました。既に他の者は揃っています。どうぞ中へ」
大きい扉の前で僕達を待っていたテレシアさんが僕達に言う。テレシアさんに言われた通り僕達は部屋の中に入る。僕達が全員入った後、テレシアさんも部屋の中に入り扉を閉める。
「どうぞお座りください」
テレシアさんの言葉を聞き僕達は用意された椅子に座る。
「お待ちしてましたよ。ではさっそく本日の予定を説明させていただきます」
僕達の前に座るビスタさんが僕達に言う。この部屋にはビスタさん、ハンスさん、テレシアさんと僕達が出会ったことのない人達が10人ほどいるだけだった。
ビスタさんがハンスさんに合図を出すとハンスさんが立ち上がりモニターの前に立つ。
「では、さっそく始めさせていただきます。みなさんモニターをご覧ください」
ハンスさんの言う通りに部屋の中にいた全員の視線がモニターに集まる。
「まずここが我々のいるアビリティア本部です。そして、ここがレヴナント本部です」
ハンスさんが指し棒でアビリティア本部とレヴナント本部の場所を示す。見た感じあまり離れてはいないようだった。
「レヴナントに勘付かれると面倒なので今回は歩いてレヴナントに向かっていただきます。もちろん、軍は歩いて移動すると目立つので輸送用のトラックで移動しますが皆様とアビリティアの小隊には申し訳ないが歩いて移動していただきたい」
「別に構いませんがレヴナント本部までの正確な距離を教えてもらえますか?」
当夜先輩がハンスさんにそう尋ねる。
「わかりました。ここからレヴナント本部までの距離は約30キロメートル程離れていますがそちらにはテレポートと呼ばれる能力を使える方がいるんですよね?」
「なるほど、それなら全員一気にテレポートでレヴナントまで移動したらどうでしょう?」
当夜先輩がハンスさんに提案する。
「全員と言ったが軽く1000は超えるぞ、そんなに一気に移動できるのか?」
ビスタさんが当夜先輩に尋ねる。
「大丈夫です。全員が手を繋いだりして1つになっていれば可能です」
当夜先輩に代わり緑先輩がビスタさんの質問に答える。
「なるほど、なら作戦を大幅に変えるべきだな」
「では緑さんの能力を使った作戦変更はそちらに任せてよろしいですか?僕達はこれから少人数でレヴナント本部の近くまで行ってきます」
「何故だね?」
当夜先輩にビスタさんが尋ねる。
「レヴナント本部の正確な座標を調べるためです。正確な座標がわかっているのとわかっていないのでは作戦の成功率が大きく変動すると考えました」
「なるほど。わかった。ただし念のためにテレシアを同行させる」
「わかりました。テレシアさん、同行お願いします」
「わかりました」
その後、誰が緑先輩と下見に行くか考えた結果、テレシアさん、緑先輩、ヴィオラ先輩、当夜先輩、楓先輩、ダイナ、巫女さんの7人で向かうことになった。僕も候補に上がったのだが制限の都合上僕は温存されることになった。
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