とある学園生活は制限付き能力とともに
2人でなら何処までも
「志穂…志穂…志穂…」
病院に着いてすぐに楓先輩は志穂先輩の元へ向かった。僕達は先にヴィオラ先輩のもとに行くことにした。しばらく志穂先輩と楓先輩を2人きりにしてあげたいと思ったからだ。
「杏奈先生、花実ちゃん!」
ダイナが2人を見つけて2人の元に向かう。
「ダイナちゃん、大丈夫?怪我とかしてない?」
花実が心配そうな表情でダイナに尋ねる。
「私は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「あの〜僕にも聞いて欲しいんですけど…」
「なんだ、晴樹いたの?」
「いたよ!扱い酷くない?」
「まあ、そういう話は後にしてもらっていいですか?」
「「「あっ、はい」」」
杏奈先生が話に入ってくると僕達は一瞬で静かになった。
「あれ、杏奈先生がここにいるってことは今第11番基地に誰もいないんじゃ…」
「それなら大丈夫ですよ。ダイナさん、非番だったメンバーを呼び出しましたから…」
「そうですか、なら良かった…」
「話が少しずれましたがとりあえずみなさんお疲れ様でした。初日から大変だったでしょう。よくやってくれました」
「あの、ヴィオラ先輩と志穂先輩は…」
僕が杏奈先生に尋ねる。
「2人とも命に別状はありません。幸い2人とも急所ははずれていたみたいです。2人とも既に病室で休んでいますよ。ガーディアンズ付属病院の技術なら明日には退院できるでしょう」
杏奈先生の言葉を聞き僕とダイナはホッとした。
「はあ、はあ、はあ…」
「あっ、楓先輩…」
走ってくる楓先輩を見つけた緑先輩が楓先輩を呼び止める。
「緑…志穂は?」
「幸い急所ははずれてたみたいです。明日には退院できるみたいですよ。もう、意識も取り戻してます」
「そう、ありがとう。志穂をここまで連れてきてくれて…」
「いえいえ、大したことはしてませんので…それよりもはやく志穂先輩のところに行ってあげてください。志穂先輩ずっと楓先輩を待ってますから…」
「うん。ありがとう」
緑先輩にそう言い残し、楓先輩は志穂先輩のいる病室に入っていく。
「志穂……」
「楓…ちゃん…?」
楓先輩の声に志穂先輩が反応する。志穂先輩が起き上がろうとしていたのを楓先輩が止める。
「まだ安静にしてなさい」
「うん…そうだね。」
志穂先輩は楓先輩にそう言い再び横になる。
「志穂、ごめんね。私、志穂に酷いこと言っちゃったし、酷いことしちゃった…本当にごめんなさい…」
「楓ちゃんは悪くないよ。悪いのは私…楓ちゃんの気持ちに気付いてあげられなかったし弥生先生の企みに気づけなくて楓ちゃんのことを弥生先生に任せちゃったのも私…私がもっとしっかりしてればこんなことにはならなかった…ごめんね…楓ちゃん…」
「志穂…」
「ねえ、楓ちゃん、私達が誓ったこと覚えてる?」
「誓ったこと?覚えてるに決まってるじゃない、私と志穂の大切な誓いなんだから…」
「「1人の力じゃどうしようもない時は必ず2人でなんとかしよう。2人の力を合わせれば乗り越えられないことはない…2人で力を合わせてどこまでも高みへ…」」
2人は2人が誓った内容を確認する。
「ねえ、楓ちゃん、この誓いにもう一つ別の誓いを立てない?」
「どんな誓い?」
「2人の間で隠し事はしない。嬉しいことも辛いことも2人で分かち合おう…」
「いいわね。それ、わかったわ」
「じゃあ、楓ちゃん…指を出して」
「うん…」
志穂先輩の言うことを聞き楓先輩は志穂先輩に指を向ける。楓先輩の指に志穂先輩の指が交わる。
「さて、新しい誓いもできたことだし、志穂はゆっくり寝なさい。疲れてるでしょ…」
「そうね…そうさせてもらうわ…楓ちゃんも一緒に寝る?」
「私はいいわよ…」
「そんなこと言って楓ちゃんも疲れてるでしょう?ここのベッド広いし2人で寝れるわよ…」
「もう、からかわないでよ…」
「ごめんごめん、あっそういえば楓ちゃん…弥生先生はどうなった…?」
「あの人なら自分の研究室を爆発させてそれに巻き込まれて死んだわ…」
「そう……」
志穂先輩が少し寂しそうな顔をする。仮にもずっと慕ってきた先生だったのだ、死んだと聞いたら寂しく思っても仕方ないだろう…
「助けられなかった…あんな奴だったけど一応私達の先生だったのに助けられなかった…」
「楓ちゃん…楓ちゃんが気にすることないよ………ごめん、気にするなって言われても気にしちゃうよね…」
「うん…」
「楓ちゃん…大丈夫?」
「ごめん、ちょっと大丈夫じゃないかも…志穂、やっぱ一緒に寝てもいい?」
「ええ、いいわよ」
志穂先輩がそう言いながら楓先輩が入れるスペースを開ける。楓先輩が志穂先輩が寝ているベッドに入ろうとする。
「楓先輩〜志穂先輩〜お菓子とか飲み物とか買って…来まし…た…あっ…あっ…ごめんなさい!失礼しました!」
志穂先輩の病室の扉を開けて部屋に入って行った花実が慌てて病室から飛び出してくる。
「何かあったの?」
僕が花実に尋ねる。
「なっ、なんでもない…2人まだ話してるみたいだったしもう少し時間を空けてから行こう」
そう言い花実は僕とダイナの背中を押してその場から立ち去ろうとする。
「まっ…待って!花実!誤解…誤解だから!」
楓先輩が慌てて花実を連れ去りしばらくして戻ってきた。何があったんだろう…
その後僕達は志穂先輩のお見舞いをしてアパートに帰った。楓先輩は志穂先輩の病室に泊まっていったみたいだ………
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