猫好き高校生と人間になった三匹の美人三姉妹

チャンドラ

20話

貴正は、家に帰ると葵が初代バイオハザードをプレイしていたのを見た。
「かゆ、うま……おい! それってYO!のびハザのネタじゃんか! アッアッアッアッ」
 何を言っているんだ、この妹はと思いながら見ていたら、葵は貴正が帰宅したことに気付いた。
「おにぃ、お帰り。帰ってたんだ。今日も部活だったの?」
「いや、今日は友達と少し遊んでた。」
「そうか。」
 さして、興味もなさそうな感じで葵は返事をした。
「なぁ、葵。あの三匹の猫って見かけるか?」
「いつもおにぃが餌あげてた猫のこと? いや、最近みないね。」
「そうか……」
 美賀子たちは、食事を猫又のところでするようになったため、貴正の自宅にはいかなくなっていた。そんなことは全く知る由もない貴正は、猫たちが来なくなったことに寂寥感を感じていた。
「もうあの猫たちこないのかなぁ……」
 ポツリと貴正は寂しそうに呟いた。

 次の日、貴正は、いつもよりギリギリに登校した。
「あっぶね! ぎりぎり間に合った。」
「貴正くん、おはよう。ぎりぎりに着くなんて珍しいね。」
「ああ、今日少し遅めに起きてしまってな……」
 昨日、貴正は、夜遅くにネットでアニメを視聴していた。一人部屋で、「はっぴーにゅうにゃあ」と歌っていたら、葵から「うるさい! 早く寝ろ!」と怒られた。今日は、朝練もできなかった。

 一限目、二限目と眠い目をこすりながら、授業に励んだ。

 三限目は、文化祭でのクラスの出し物決めをするのだが、文化祭で何をするのか、決めるのは難航を極めた。

 三つの案の主張が強く、どれにするか意見がまとまらないのである。
「クラスの出し物は絶対に、映画上映がいいと思います! 絶対に評価は高いと思います。」
 演技劇部のエース、渡辺が主張した。渡辺は去年、貴正と違うクラスだったのだが、去年、渡辺のクラスは、クラスの出し物で、映画を行い、文化祭でクラス一位を獲得した。
 一位を取っても賞状が送られてくるだけであるが。
「いや! 絶対にメイド喫茶がいいと思います!」

 これを視聴したのは、もちろん五十嵐である。去年、五十嵐は同じことを主張したのだが、女子から大反発を受け、却下された。貴正は、その様子を見て、心底可哀想だと思った。
 メイド喫茶は、文化祭の出し物として、王道を行くイメージが高いが、実際は、メイド服を用意するなど、手間もかかるため、採用されることは少ない。

 クラスでのメイド喫茶は、ロマンにすぎないのである。そう、ポケモンのはかいこうせんの採用率のように。
「いえいえ。ここは、占いの館にするべきです。最近、私、当たる占いの方式を導きだしましてね……」
 もはや、貴正が、ほとんど話したことない生徒が主張した。彼の名前は、岡留斗好おかるとこう。オカルト部という、全部員数、五人前後の規模の部活の部長である。
 彼の目は、いつも髪で隠れている。彼の目には、何か秘密があるのではないかともっぱら、噂になっているが、多分何もないのだと思う。
「う〜ん。意見がバラバラでどれにしたらいいか、わからないなぁ。」
 イケメンのクラス委員長が、悩んだ。大抵の女性陣は、このイケメンの委員長が決めたやつなら何でもいいんだから、早く決めてくれと貴正は思った。できれば、楽で自分の負担にならないものが望ましいと思っている。

 例えば、そう。メイド喫茶とか。男子はあまり手伝うこともないし、美賀子のメイド服は見てみたいと、貴正は思った。
 突然、美賀子が手を挙げた。
「美賀子さん、何か意見がありますか?」
「はい、文化祭は土日、二日行われますよね。メイド喫茶も映画も占いも二日に分けてやるというのは、どうでしょう。」

 クラスがざわざわしだした。さすがにそれは、厳しいように思えた。
「いやぁ……美賀子さんそれはちょっと日程的に厳しいんじゃないかな。一日目と二日目の映画、占い、メイド喫茶のどれかを一日ずつやるのが限界じゃないかな……」
「映画は、撮影終われば、そこまで上映の手間はかからないと思います。例えば午前中映画上映して、午後は占いの館をするというのは、どうでしょう。それで、次の日にメイド喫茶をやるみたいな。」

 なかなかえげつないことを美賀子は言った。映画は暗くするだけらともかくメイド喫茶と占いは教室の装飾に時間がかかると貴正は思った。
「うーん……占いの館も教室の装飾が必要になるから、午前中に占いかメイド喫茶をやって、昼休みに急いで装飾を片付けて映画をする方がいいかな……」
 イケメンクラス委員長は、あたかも三つやるみたいな意見を言いだした。
 俺は手を挙げて発言した。
「あの、委員長。一クラス、三つ出し物をやっても大丈夫なのか?」
 貴正は、どれかに絞ってくれという意味合いで、発言した。
「確か、問題ないはずだよ。去年の三年生で一日目と二日目に別の出し物をするクラスがあったからね。そこは去年、クラス一位だったはず。」
 去年の先輩め。余計なことをしやがってと貴正は心のなかで、毒づいた。貴正は、部活のほうを優先したいため、あまり文化祭の手伝いはしたくないと考えていた。新人戦も近々、行われるので、そちらのほうに専念したかった。
「とりあえず、複数出し物やるかどうか、多数決を取ろう。」
 イケメンのクラス委員長は民主主義的な提案をした。
「まず、複数やるのに、賛成な人。」
 ざっと見た感じ、半数以上が手を挙げていた。
「それじゃ、複数やるの反対な人。」
 賛成派に比べて、反対派は人数が少し少なかった。
「複数やるに賛成する人が多いね。それじゃ、複数やる戸言う方向性で。あと、出し物だけど、映画、メイド喫茶、占いの館の三つ全部やるか、二つに絞るか決めようか。」
 話し合いの結果、結局出し物は二つに絞ることにした。貴正たちのクラスは、文化祭一日目に映画上映、二日目にメイド喫茶をすることになった。まったく忙しいことこのうえない。どうやら、貴正のクラスは、文化祭に対して、意識の高い人が多いみたいである。
 仕方ない、今年は忙しくなりそうだが、手伝うしかないかと貴正は、諦めた。


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