Copán

4.カリフラワー

どうやら少し眠ってしまっていたようだ。相変わらずあたりは白く僕以外には何もない。さてどうしたものだろうか。休憩を取るまではひたすら同じ方向へ歩いて来たのだが、今となってはどこから来たのか全く分からなくなっていた。まったく、何がユーリアだ。これが本当に僕の思考世界であるならもっといろいろな物があっていいはずだ。僕の思考には方位磁針もないのだろうか。そもそも鼻のない象と白しかない思考なんてものがあるとは僕には到底思えなかった。もしそんな思考を持っていたらカリフラワーと牛乳しか食べられない。いや、あるいはカリフラワーと牛乳だけ食べ続けたら鼻が退化して無くなるということもあるのかもしれない。

彼女は溢れんばかりの青をごく自然にまとっていた。そしてとても端整な顔立ちをしていた。髭を剃らなかったことを僕は少し後悔した。
白い世界に1人でいると過去を振り返って後悔するくらいしかすることがない。僕はもともと1人でいる方が好きなのだが流石に孤独を感じ出していた。鼻のない象でもいないよりはいた方が良いのだ。

予想に反して象はすぐに見つかった。最初に歩いた距離からしてそんなはずは無いのだが、やはりこの世界では時間や空間がほとんど意味を持たないのだ。象は相変わらず一切の表情を示さなかったが、今度は象の方からおもむろに喋り出した。

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