美少女同級生が新たな家族に!!

藤航希

ようやく始まったデート 中

 店の近くにあるエスカレーターに乗り三階に上がると、ゲームショップはすぐそこにあった。さっきの店とは違い、おしゃれな感じは全くしない。
 そして、そこを出入りすのは小さな男の子や、俺と同い年くらいの男子、さらには大人の男性まで、まさに男ずくめだ。まぁ、女性も普通にいるんだけどね。
 たしかに、女性も出入りしている。だがそれは子供の親であったり、ゲーム好きの女性だったりだろう。デートで男女がここに来ることはまずないと思う。
 はぁ……まじで来てしまったぁ……というか着くの早すぎ。もう少し覚悟を決める時間が欲しかったぞ。それにしても、来て余計にわかってしまうな、この場違い感……本当にこんなところでもよかったのか?本当は嫌々じゃないだろうか?どうなんだろう……
 そんな思いが、俺の脳内を駆け巡ていた。そのせいなのか、俺は雪村さんをいったんゲームショップから少し離れたところに連れてきた。

「どうしたの?入らないの?」
「いや、あの……本当にここでもよかったの?」

 結局、俺は頭の中で考えていたことをしゃべっていた。

「どういう意味?」
「その……嫌々ついてきてくれたんじゃないかなって思って……嫌なら言ってくれていいから」
「そんなわけないよ。私、こういうところ行ったことないから少し興味あるんだよね。だから今はすごく楽しみだよ?」
「そうなの?」

 雪村さんは優しかった。その言葉はたぶん嘘だと思うけど、俺の気持ちは少し軽くなっていた。

「えっと……雨宮君も行きたくないところだったらそう言ってね。さっきは、私だけが楽しんでたと思うし……」
「そんなことはないよ。俺も楽しかった」

 初めて行くような場所で緊張もしたが、学園にいるとき以外の雪村さんの表情も見ることができたし、なによりあの姿を見れたのだ。楽しくなかったわけがない。
 そんなことを思ていると、雪村さんがワンピースを着ていた姿が脳内に浮かびあがってきた。
 うん、やっぱり可愛かったし似合ってたよなぁ……本当にいつか着てほしいなぁ……

「もうっ!変なこと思い出さなくていいから!」

 俺の顔をがにやけでもしたのだろう。雪村さんに思い出してるのをバレてしまった。
 そして、雪村さんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている。

「いやいや、変なことって……すごく似合ってたと思うけど?」
「っ~~~。もう、早く行こ!」

 そういうと、顔を赤くしたまま、俺よりも先に中に入っていく。
 今までの反応から見て、雪村さんって意外と恥ずかしがり屋さんかな?
 そんなくだらないことを考えながら、俺も雪村さんの後を追いかけた。

 ここのゲームショップは割とすごい。現代のテレビゲーム機から携帯ゲーム機、ゲームソフトはもちろんのこと、何十年前のゲームも中古として売っている。さらに、海外でしか販売されていないゲームまでわざわざ輸入して売っているそうだ。ここに来れば手に入らないものはないと、ちまたでは言われている。俺も学園に入ってからはよくお世話になっているところだ。

 そんなところに、俺は雪村さんと一緒に来ている。中に入ってからさらに場違い感が増してきた。
 雪村さんはあのように言っていたが、目的を果たしてすぐにこの店から出よう。そうしよう。
 俺は心の中でそのように決意した。そして、目的の場所に行こうとした時、雪村さんが話しかけてきた。

「雨宮君は何を見たいの?」
「えっと、新作と中古のゲームかな?」
「そうなんだ……ねえ、一つお願いがあるんだけど……いいかな?」
「もちろんいいよ」

 うん?なんだろう、お願いって……早くここから出たいとかかな?いや、さすがにそれはないか。じゃあ……

「えっとね……少し見て回ってみたいんだけど……ダメかな?」
「えっ……そんなこと?」
「う、うん……」
「もちろんいいよ」
「ありがとう。それと……案内もお願いしていいかな?」
「もちろん」

 雪村さんのお願いは俺の予想とは全然違うものだった。
 本当に、ここに興味があったんだな。雪村さんのことを信じれていなかった自分が恥ずかしい。
 それに、雪村さんが自分の意見を言ってきたってことは、少しくらいは俺に遠慮しなくなってきてるってことかな?そうだったら、嬉しいかな。まぁ、今は雪村さんを案内するこを考えるか。とりあえず。俺が行こうとしていたところからでいいかな。
 そう考えて俺は、RPG系のゲームが売っているところから案内することにした。

「ここが主にRPGがあるところだよ。たぶんテレビのCMとかで見たことある物もあると思う」
「うっわぁ……いっぱいあるね。すごい目移りしちゃう。あっ、これ私も知ってるよ」

 雪村さんが手に取ったのは、とても有名なテレビゲームだ。
 簡単に言えば、勇者が魔王を倒すというものである。俺もそれは好きだ。やっぱりRPGの王道は勇者と魔王の戦いだと思う。

「それは、かなり有名だからね。俺も持ってるし」
「そうなの?少しやってみたいかも」
「なら、今度やってみる?」
「いいの!?」
「もちろん」

 まさか、雪村さんがやってみたいと言うとは思わないかった。かなり驚いている自分がいる。でも、楽しんでくれてるみたいだし心配することは何もないだろう。
 それからも、他のものをあれこれと説明しながら見ていった。俺もほしいゲームを見たり安くなった中古を見たりして、この場を後にした。
 やはり、ゲームのパッケージとかを見るだけでも楽しかった。
 次は、対戦系のゲームがあるところに来た。ここには、野球とかサッカー、格闘など様々な対戦ゲームがそろっている。
 すると、雪村さんはテニス部だからなのかテニスのゲームに興味があるらしく、中古のテニスゲームを手に取っていた。

「雨宮君、これは持ってる?」
「ごめん。それは持ってないかな」
「そうなんだ」

 少し残念そうに聞こえる。テニスということでやってみたかったのかもな。

「じゃあさ、この中で持ってるのってある?」
「えっと……これかな」

 俺は、野球のゲームを雪村さんに渡した。自分で選手を作ったりできるやつだ。
 オールAを作るのが難しいんだよなぁ……まぁ、俺が下手なだけか。

「これもおもしろそうだね」
「じゃあ、これも今度やってみる?」
「やってみたい!」
「わかった」 

 なんだかんだでここでの案内も終わった。
 この後はパズルとかリズムゲーム、一応ギャルゲーとゲーム機などの紹介もしていった。
 そして、見せられるものは見せたし、俺の新作と中古のチェックも終わったので、俺たちは店を出てることにした。
 今は近くのベンチに休憩がてら座っている。

「初めてのゲームショップはどうだった?」
「結構楽しかったよ」
「ならよかった」
「それと、案内してくれてありがとう」
「あれくらい、お安い御用さ」
「あと……本当に今度、ゲームやらしてくれる?」
「もちろん。やりたくなったらいつでも言って」
「うん。ありがとう」

 雪村さんは本当に嬉しそうにしており笑顔だ。
 でも、意外だな。ゲームに対してこんなに興味を持つなんて。まぁ、楽しんでくれたみたいでよかったけど。
 そんなことを考えながらスマホで時間を確認してみたが、時間はまだまだあるみたいだし、そろそろ移動すべきだろう。

「さて、そろそろ次行くか。まだ夕食まで時間あるし」
「そうだね。次は私の番かな?」
「うん。どこでもいいよ。どこ行っても楽しいだろうし」

 本当に雪村さんとならどこでも楽しいと感じている。まぁ、たぶん一緒に行動してるのが女子だからだろう。これが男子とかだったら逆につまらなくなってるはずだ。

「そう?じゃあ、テニス用品見たいんだけどいいかな?」
「いいよ。なら二階に降りよう」

 目的地も決まったので、俺たちは移動した。

 ここのスポーツ用品店にはテニスだけでなく、野球やサッカーなどの様々なスポーツに対応している。今もテニスの格好をした人や部活の帰りだろうという人が歩いている。

 雪村さんは目的地が分かってるようで、迷うことなく店内を歩いている。たぶん、よくここに来ているのだろう。
 黙ってついてくとテニス用品が見えてきた。なんだか、懐かしいな。
 雪村さんは、シューズのコーナーに向かって行った。

「シューズが見たいの?」
「うん。今はいてるのが壊れそうだから、新しいのでも探しておこうかなってね」
「なるほど。それで、どれにするのか決めてる?」
「うん。いつも使ってるとこのにしようかと思ってるよ」

 そう言って雪村さんが手に取っていたのは、有名な会社のやつで俺も中学の時使っていたメーカーだった。

「これか。俺もこのメーカーの使ってたな」
「あれ?雨宮君ってテニス部だったの?」
「うん。中学の時にね」
「そうなの!?」

 意外だったらしく、雪村さんは結構驚いていた。まぁ、雪村さんに話したことないから仕方ないけどね。

「でも、今はテニス部に入ってないよね?」
「うん。まぁ、俺って飽きやすい性格なんだよね。だから、中学で部活を引退した時にもういいかなって思ってね」
「そうなんだ」

 雪村さんは少し残念そうな顔をしてるように見えたが、まぁ気のせいだろう。
 それからは、シューズの値段を確認したり、新しいラケットやユニフォームを見たりしていた。
 ユニフォームを見てる時に、スカートタイプのを着てるのかな?だったら見てみたい!、とか考えていたのは内緒だ。
 そして、雪村さんは目的を達成できたらしく、俺たちは店を出た。
 さて、まだ夕食までには時間があるぞ。そして、次は俺の番だ。

「次は俺かぁ……」
「うん。次はどこに連れてってくれるの?」

 何故か雪村さんは俺のことを期待のまなざしで見ていた。
 次は、どんな楽しいところに連れてってくれるんだ、と言われている気がする。
 少しでもその期待には応えてあげるべきだろう。
 だが、ここでも思いついたのは一つだけだったが、雪村さんもたぶん楽しめるだろう。そんな気がした。

「じゃあさ……ゲームセンターとか行ってみない?」

 さぁ、どうだろう。大丈夫かな?やっぱり心配になる俺である。

「行ってみたい!」

 大丈夫なようだ。
 雪村さんからは、とても楽しみだという感じが伝わってくる。ここもあまり行ったことがないのかもしれないな。

「じゃあ、行くか」
「うん!」

 やっぱり、雪村さんは楽しみなのだろう。嬉しそうに俺についてきた。

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