妹はこの世界でただ一人の味方

さらだ

ローション

学は走りながらあるものを手に持ち、それを兵士が走ってきている道にばらまいた。夜とはいえ、まだ人通りは多い。そんな中、それがばらまかれたら欲の塊でしかない人間は拾いに行くだろう。

「・・・これは・・・お金?」

1人の市民が言うと、道端にいた市民たちが一斉にお金を拾い始めた。一銭や二銭と言うわけではなく、十円や百円玉がほとんどを占めている。
市民がこれほどの額を一気に手に入れることはそうそうないだろう。学の思惑通り市民はお金を不規則な動きで拾い始めた。兵士たちもその動きに対応できずに、ゆっくりと進むしかなかった。
当然、学たちと兵士の距離は広がっていくのだった。





結衣は百円を持って目的の店に入っていった。鼻歌を歌いながらだったため、周りから少し注目の的を浴びていた。

「はじめてのおつかいみたいだな・・・。」

学は店に掲げられている名前を見て心底疑問に思った。その店は魔物の肉をメインにした店で、市民から見れば高級店の印象があった。
別段意味もなく、足元で行列を作っていた蟻の数を数えていると兵士が視界に見えた。

「うわ・・・律儀なことだな。お前たちみたいに働き者だな。」

蟻に向かってそう言っていると結衣が店から出てきて学へと言った。

「蟻に向かって何言ってるのお兄ちゃん?大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。ちょっとあの兵士たちがしつこくてイラついただけで。」

そこで初めて結衣は兵士たちがすぐそこまで来ていることに気がついた。

「やっちゃう?」

結衣は学に向かって聞いたが、学は首を横に振った。

「いや、やめておこう。ここで争ってもこっちにしか損がない。やるだけ無駄だ。」

学の判断に結衣は頷いた。
2人はそのまま兵士とは反対方向に走り、そのまま壁を超えて逃げて行った。残された兵士たちは息を荒くしながらじっと学たちがいなくなった壁を見つめていた。






「ふ〜〜〜・・・。」

カポーンとでもいいそうな銭湯風のお風呂に学は浸かっていた。

「お兄ちゃん。タオル置いとくよ〜。」

扉越しに結衣の声が聞こえた。

「あ゛〜ありがとう。」

お風呂に浸かりながら段差のところに肘を置いていてそう言った。久しぶりのお風呂はすでに30分を超えていた。当然、学は最初に結衣を入らせていた。

「ていうかちょっと肩凝ってるか? もうおっさんだな〜。」

「え、お兄ちゃん肩凝ってるの?あとでマッサージしてあげようか?」

結衣は学にとってありがたい申し出てを言うと、学はとっさに反応した。

「お願いできるか?代わりに俺も後でやるから。」

「ほんと? じゃあ頑張るね。」

「おう。楽しみにしてるぞ。」

パタパタと結衣が小走りで走り去ると学は湯船から出た。長時間の入浴で学の体からは湯気がたっていた。




学はマットの上でうつ伏せになっていた。クチュクチュという音と共にツボを押される。

「あ゛あ゛あ゛〜そこ気持ちいい・・・。」

「ここ?」

結衣は首を傾げて学に聞いた。

「そこ。本当に気持ちいい・・・。」

結衣はそこを集中してマッサージした。強く力を加えるたびに学は気持ちよくなっていった。

「あれだな。結衣の手って意外と小さいんだな。」

「むっ。」

結衣はバカにされたと思いそのような声を出した。学は慌ててフォローを入れた。

「小さい手で可愛いなって事だぞ。決して馬鹿にしたわけではないぞ。」

「そうですか。」

そして結衣は力一杯押しながら捻った。

「う゛っ!」

痛みで学は声を出すが、結衣の手はそれをやめない。

「痛い痛い。やめてください結衣さん。僕が悪ぅございました。何が悪いのか分かりませんが許してください。」

学が痛みで変な言葉遣いになると結衣は強く押し捻っていた手を止めた。

「・・・もういい。」

結衣はローションまみれであえう学の背中をタオルで拭き始めた。
少しずつ背中のヌルヌル感が取れていく学は結衣になんで怒ったのか聞いたが、はぐらかされてしまい答えは分からなかった。

「次は私の番だね。」

「そうだな・・・と言いたいとこだが、どうするんだ?俺は男だから上半身は大丈夫だったが、結衣は可愛い可愛い中学生だ。何か方法はないだろうか?」

学は今更思いついたことを言って迷っていた。しかし結衣から言われた言葉は学の心臓を一瞬止めるほどの威力だった。

「別に大丈夫だよ。うつ伏せだから、仰向けにさえならなければ問題はないでしょ?それに服とか着たらお兄ちゃんはやりづらいだろうし、兄妹なら問題ないでしょ?」

結衣はそう言ったが、学はまだ悩んでいた。

結衣はああ言ってくれたが、万が一事故があって見てしまった場合には嫌われるだろうな。だが、ここで断ったりしたら結衣は残念がるだろう。俺だけマッサージをしてもらうっていうのは流石に罪悪感があるな。それに結衣は俺を信じてくれてるからそう言ってくれたんだろう。なら断ることは結衣の信用を踏みにじることになる。それだけは避けたい。・・・結局選択肢は1つしかないのか・・・。

「分かった。後ろ向いとくからうつ伏せになったら声をかけてくれ。」

「はーい。」

シュルシュルシュルという何気ない音だが、結衣が服を脱いでいると考えると、学の心臓の鼓動はとても速くなった。

落ち着け! 落ち着くんだ! 結衣は兄妹だ! そう、兄妹だ。仲がいいとは思うが、所詮そこまでだ。それ以上先に進めば、兄の威厳がなくなる。落ち着けー・・・。

パサッと結衣の服が地面に落ちたことで、通常の鼓動の速さに戻ってた心臓が再び速くなり、学の顔は少し赤くなった。

「お兄ちゃん。もういいよ。」

「...っ!」

学は精神統一を終えて振り返ったが、すぐに精神はかき乱されることとなった。結衣の顔は学の方を向いていて、一見何事もなさそうに振舞っているが、結衣の顔は言動とは正反対に過去最大級に真っ赤になっていた。

学もその姿を見て柄にもなく見とれてしまった。しかしその顔は結衣と同じように赤かった。学はもともと世界一可愛いのは結衣と思っていたが、学はその姿を見て全生命体の中で一番と考えを改めた。

学は動きが鈍いロボットのようにゆっくりと結衣の方へ向かい、置かれていたローションを手につけた。
ローション特有の音が鳴り、学が結衣の背中に手を置くと・・・

「ひゃっ!」

結衣は悲鳴をあげた。いつも以上に反応してしまった学は赤らんだ顔で結衣に聞いた。

「どうした? 」

「ご、ごめん。冷たくて・・・。」

「あ、ああ・・・悪い。」

「うん・・・。」

学はローションをクチュクチュと鳴らして、自分の体温をしっかりと込めた後再び結衣の背中に手を置いた。今回は大丈夫だったようで何もなかったことに学は小さく息を吐くと、マッサージを始めた。


・・・なんで私あんなこと言っちゃったんだろう。し、死にたい・・・。恥ずかしい・・・! 
お兄ちゃんの手。私をいつも助けてくれてる手。さっきあんな事をしたのにお兄ちゃんはやらないんだ。優しいま・・・。


30分ほどマッサージをして、両者の恥じらいが薄れた頃、学の反撃が始まった。
新しくローションを結衣の背中に塗ると、学はそのまま息を吹きかけた。ローションを塗られた部分はスースーして余計に敏感になっていた。

「ひゃん!」

若干涙目になった結衣が睨むように学の方へ顔だけを向けた。
その顔だけで見とれそうになる学だったが、どうにか持ちこたえて言い返した。

「お返しだ。さっきはよくもやってくれたな。」

学はさっきよりも長い時間息を吹きかけた。

「ひゃうっ! んんん〜〜〜っ...!」

なんとか声を押し殺していた結衣だったが、ついに我慢の限界に達し・・・。

「・・・・・・カ。」

「何だって?」

小さな声で呟いた結衣だったが、その声は学には届かなかったため、学が聞きなおした。

「お兄ちゃんのバカァァァァァァァァァ!!」

結衣は左手で自分に胸を守り、右手で学をと殴った。学は防ごうとしたが、自然と手で隠された胸の方へ目が向いてしまい・・・。

学が殴られたのは言うまでもないだろう。


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以下作者のコメント
今日は家族で千葉にあるのに東京と名前が付いている夢の国に来ています。金ばっかりなくなる夢の国です(笑)人多すぎます。

そういえばこのアプリって保存すると結構通信量食われるんですよね。2〜300MBほど使っていると思います。
まあ月3GB使えて今日まで200MBしか使ってなかったんで大丈夫なんですけどね。

そういえば前回言い忘れたんですけど、ダンジョンが終わりました。予定の約3倍の量になりました。まとめる力が無さすぎました。申し訳ないです。

では残りの約5時間楽しんで来まーす ︎
・・・はぁ。


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コメント

  • さらだ

    有難う御座います。

    1
  • ミラル ムカデ

    お疲れ様です!
    次も楽しみに待ってます!
    GW楽しんでください!

    1
  • さらだ

    僕は1日と2日が学校なので7連休ですかね。学校が挟んであるので連休と言っていいのか分かりませんが。

    1
  • 田中  凪

    私は小説書くのをほっぽって友達と秋葉原行ってました()
    私はGW九連休ですが作者さんはどうなんっすか?

    1
  • さらだ

    僕もです。

    1
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