俺の妹はヤンデレでした

繭月

10話

〈永田 隆盛〉
まずは第一段階クリア。次はっと、
「ねえ柏木さんどこにいるか知らない?」
廊下ですれ違った同じクラスの女子に訪ねる。
「柏木さんなら先生に用事を頼まれてるって言って職員室に向かったよ」
お礼を言って職員室に向かうとちょうど用事が終わったのか柏木が職員室から出てきた。
柏木も俺に気づいたのか近づいてくる。
「どうかしたの隆盛君?」
「えっと・・・」
そこで俺は周りを見渡す。
放課後といえどまだ校内にも生徒は多くいるわけでもし俺と柏木とで変な噂がたてば葵と柏木をくっつけるという俺の目的は達成されにくくなる。
もちろん一緒に下校してるところを見られる方が変な噂のたつ可能性は高いが俺たちの家の方向からこの学校に登校している生徒は珍しく同学年には一人もいないらしい。
「ちょっと話したいから一緒に帰らない?」
「え!?」
ん?なんでそんなにびっくりしてるんだ?そして何故俺はそんなゴミを見る目で見られているんだ?
・・・あ、なるほど。今の発言完全にナンパじゃん
「あ、ごめん言い方が悪かった。俺も三次元には興味無いから安心していいよ」
「いや、それはそれでどうかと思うよ・・・」
「いや、ほんと。三次元とかどうでもいい。特に柏木歳下以外には全く興味がないから」
「ニュアンス今のおかしかったよね!?」
ちなみに俺がロリコンと知っているのは葵だけだ。
「まぁそれは置いといて、一緒に帰れる?」
「まぁ他意がないのならいいけど」
「サンキュー」
そのあと柏木が教室に行って荷物を取りに行っている間に裏門に俺は移動して待つことにする。
裏門は市街地と真逆にあるので全然使われておらず人気も少ない。
「なんでわざわざ裏門から出るの?」
教室でクラスメイトに捕まり10分ほどして柏木は裏門に姿を現した。
「もしかしたら俺と柏木さんとの間で変な噂がたつかもしれないし。それは嫌でしょ?」
「うん」
即答されるのもちょっと気づつくんだけど!
まぁそれが理由の一つで全部ってわけじゃ無いんだけどね。
「さっそく本題に入るけど今度の週末なにか用事ある?」
「今度の週末?なんで?」
「一緒に買い物でもどうかなと思って」
「やっぱりナンパ!ごめんなさい。やっぱり隆盛君はちょっとないかな」
「いや違うから!葵も一緒だって」
「行きます。行かせてください」
葵の名前を出した瞬間簡単に手のひら返しをしてくる柏木。
まぁこれで第二段階もクリアだ。
あとはどうやって瑞樹ちゃんと翠を葵から遠ざけて葵と柏木さんを二人にするかだな。
一応葵に二人にはバレないように頼んだけどあの二人のことだから尾行でもしてくるんだろう。
まぁそこのところの対策を今のうちから練っておけばいい考えが浮かぶかもしれない。
俺が一人瑞樹ちゃんと翠のことで頭を抱えている間隣を歩く柏木は「どんな服が葵君好きかな?」「なんとかして二人だけの時間を作れたらなぁ」とか一人ぶつぶつと呟いていた。
まぁ柏木にその意思があるならなんとかなるはずだ。
二人でそれぞれのことに頭を悩ませながら家路についた。



ーーーーーーー
〈星原 葵〉
今度の週末久々に隆盛と遊ぶ(買い物についていく)約束をしたんだけど、なぜか隆盛から瑞樹と翠には内緒にしてほしいと頼まれたんだけど・・・家に帰ってる途中でバレました。
瑞樹いわく「お兄ちゃんが隠し事してるのはすぐにわかるから!」とのことです。
俺ってそんなにわかりやすいかな。
「週末私も一緒に行ってもいいよね?」
「いやー、俺と隆盛で買い物すんだよ、瑞樹は楽しくないと思うし翠とかクラスメイトの子とかと一緒に行った方が楽しいんじゃない?」
「でも隆盛さんは一人で来るとは言ってないよね?」
「まあそうだけど。でも俺らと一緒に遊ぶやつなんていないと思うけど」
一応クラスの男子とは会話はするけど一緒に週末遊ぼうと思うほどの仲ではない。
・・・なんか目から汗が出てきたんだけど・・・。
「楓ちゃんとかは?」
「それこそないだろ。もし柏木さんがいたら俺は完全に邪魔者じゃないか」
まだ直接聞いたわけではないが俺の第六感がそう言ってる気がするんだ。
「むー、お兄ちゃんは乙女心をもっと理解するべき!」
「な、なんでだよ」
わけがわからない。なぜ俺が責められるんだよ・・・
「まぁそういうことだからさ、いいだろ?」
「わかった。じゃあ私ともデートして」
「え!?いや、隆盛との買い物だしそもそもデートにはならなくないか?」
「それなら私も行く。絶対何が何でもついて行くから」
そう言い残して瑞樹は部屋に入った。
「はぁ、ああ言い出したら折れないからな。一応隆盛に聞くか」
もともとあまりわがままを言わなかったから瑞樹のこういう態度は新鮮で兄としては頼られていると実感できて嬉しいのだが
「それが独占欲からくるものじゃないのを願うしかないな」



ーーーーーーー
〈永田隆盛〉
すでに時計は12時をまわっていたのだが未だに眠気がこない。
理由は寝ようとしたとき葵から『週末の買い物瑞樹も連れていっていいか?』と聞かれた。
正直言って瑞樹ちゃんがついてくると言い出すのは想定内のことではあった。
だから今俺がなにに悩んでいるかというとどうやって柏木と葵を二人にすることができるかということだ。
なんとかして瑞樹ちゃんが来ないように出来るか考えたが葵からのメッセージの後に瑞樹ちゃんから『私も週末行くから。変なこと考えてるならやめたほうがいいよ?隆盛君のための忠告だからね?わかった?』というメッセージという名の脅迫文が送られてきた。
勿論瑞樹ちゃんの行動力とか判断力、頭の良さとか俺とは比にならないけど葵のことに関してはポンコツになりやすいからな。その隙を突くしかない。
しかしいくら考えても瑞樹ちゃんと葵を引き離すビジョンが見えてこない。
俺は仕方なく目を閉じた。





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