龍の子

凄い羽の虫

24話 『帰宅』

「た、ただいま〜」

恐る恐るダンジョンの最下層、そこに建つ一軒家のドアを開く。

物陰に隠れるかのように後ろに付いてくる妹。

「うむ、おかえりなのだ!」

声のトーンは極めて普通。

晩御飯を作ってる最中なのだろう。もう、何度も嗅いだ事がある良い匂いがする。

よし、怒ってはいないみたいだ。

『マ、全部報告ハサセテ貰ッタガナ』

俺の傍から黄色い小鳥が羽ばたく。

「って、もしかしてサンダバさん!?」

『アァ、子守ニ我ヲ寄越ストハヨッポドノ心配性ダナ、オ嬢ハ』

「報告?子守?って、全部見てたの!?」

「うむ、娘ちゃんが暴走するところから息子君がエゲツない魔法を使うところまで全部ナ」

サンダバさんは人間の姿に変身しながら今日の出来事を語る。

「や、やっぱりエゲツなかったですか?」

「あぁ、エゲツないね。瀕死である人間を一瞬で完治させるなんて『亜神』であろうとそう易々と出来る技ではないだろう。一体、なんて言う魔法なんだ?と言うか、どこで覚えた?」

複合魔法はサンダバさんでも知らないのか…。

と、言っても神様から教えて貰ったから普通は知らない者なのかも知れないな。

「えーと、『か』……」

神様と言おうと思ったけど、そんな事言っても信じてもらえるのかな?

と言うか、言っても良いのだろうか?

『うん、良いよ!』

……っ、この声は!?

『私だよ!コノシャだよ!君がようやく私の事を想像してくれたから脳内に介入する事が出来たよ!』

……とりあえず、言っても良いんですよね?

『うん、でも自己責任でお願いね!いやぁ、人間とかの知的生命体は何かあったらすぐにやれ神様のせいだ。神様のお陰だーとか言って良い事も悪い事も都合よく捉えて来るからめんどくさいんだよねぇー!そんな中、神様に魔法を教えて貰ったなんて言ったら完璧に神の代行者として祀られてしまうだろうけどね!そして、有る事無い事勝手に仕立て上げられて良くも悪くもない人生になっちゃうんだろうなぁ!』

うん、わかった。言わないです。

とりあえず言ったら面倒くさい事になるのはわかった。

『うんうん、でも言うのは勝手だから好きにしていいよ?』

あ、本当大丈夫です。

『そ?じゃあね!』

はい。

「……?息子君よ。どうした?ぼーっとして」

「あ、いやいや!何でもないです!」

一応、建前として言って良いとは言ってたけど本当は言って欲しくなかったんだろうな。

そもそも、神様の掟に俺らとはそんな深く関わっちゃいけないってルールあったっぽいし。

絶対に黙っておくのが吉だろうな。お互いに……。

「ふむ、で『か』なんなのだ?」

「『か』……」

「『か』……?」

「『か』……感覚で……です!」

感覚!言い切った!!

「……感覚…とナ?」

無理あったかな?

実際、感覚というのも嘘ではない。与えられた知識の中には『複合魔法』という概念だけ存在していて、そこに完成されたやり方なんて存在していなかったんだ。だから、その場で適当なのを当てはめてみたら『あれ』が出たのだ。

感覚ではある。

「むぅ…、息子くんは『亜神』になれるかも知れないな…」

「『亜神』?そう言えばさっきからちらほら出てる来る『亜神』って何なんですか?」

「うむ、例えるなら何かしらを極めた者達が神により神格化された生物だ。人間、魔族、エルフ、ドワーフ、はたまた魔獣だったり。剣、魔法、学問に呪術、如何にもすごそうな者から何年もの間、岩を割り続けるだけで亜神になった者、人の身でありながら水中に長時間潜り続ける事で亜神に成った者も居る。また、亜神になれる条件としてこの世界で生まれ育った者に限られている。勇者召喚の多いこの世界が完璧に人間の王国に支配されていない一つの理由だな。まぁ、別に亜神ではなくてもそこら辺の勇者と対峙出来る者はごまんと居るがナ」

「う〜ん、水中に居るだけで亜神になったやつなんて明らかに弱そうじゃないですか?そんなの闘えるんですか?」

「ふむ、確かに側から聞いたら弱そうに感じるが、残念ながら現存する亜神の中でその者が一番の強者だと言う話だぞ?」

「え、何で!?」

「さぁ、何でだろうナ。元々強かったと言うのもあったのだろうが、本来亜神になるとスキルとして固有の加護が発現するらしい。その加護がえげつないのかもな!因みに現存して居る亜神の数はたったの8名だ。そこに息子くんも加えるとなると9名になるナ!!なっはっはっは!!」

この人、変なタイミングで笑うなぁ……。

「それで、俺が亜神になるとしたら何を極めれば良いんでしょうかね?」

「んあぁ〜、回復魔法がすごかったから回復魔法を極めてみれば良いんじゃないか?確かに回復が得意な亜神は居なかった気が……ん?どうしたお嬢?」

へ?母さん?

「ん、晩御飯が出来たのだ。エル…、エルには特に亜神になって欲しいとかそう言うのは私は望んでは居ないのだ。ただ、一人前になって可愛いお嫁さんを貰って幸せに暮らして、そしてたまにこの家に帰ってきてこうして晩御飯を食べに来てくれればそれで満足なのだ。まぁ、エルの人生だからとやかくは言わないが」

「お、お嫁さんって!話が先飛びし過ぎてるって!それに、別に亜神にもなろうとは思ってないから安心してよ!」

まぁ、元より亜神になるつもりが無いのは本心だし。

それに、いきなり悲しそうな顔するんだもんな……。

「そうか、それはそうと今日はミーシャの事をしっかりと守ったらしいじゃないか!流石はお兄ちゃんなのだ!偉いのだ!」

そう言えば、サンダバさんに聞いてたんだっけ?

「でも、俺は魔力切れになったミーシャを回復させただけで直接的な危機を退けたのは俺じゃないんだ」

「うむ、それはサっちゃんから聞いてるのだ。でも、エルがミーシャを回復させたのを守ったって言うのは妥当なのだ。それと、ミーシャに危害を加えようとした輩は二人組の少年少女にそれはもう例えようが無いくらいにボッコボコのボコにされたと聞いたのだ。それについては明日、私も含めてお礼をしに行くのだ!」

「え!母さん、地上に出るの!?」

「え!ダメなの?」

「いや、ダメじゃ無いです」

「母様と一緒に地上に出るのは初めて!」

ミーシャは喜んでるな。

ちょくちょく地上には出てるらしいけど、確か料理を教えて貰ったり、他にも色々……。

俺も昔に一度だけ母さんと一緒に地上に出た事があるけど街の人は母さんに割と友好的だったイメージがあるから変な不安は抱かなくて良いのかも知れないけど、何だろう。

母さんと一緒にどこかに出掛けるって考えるとなんかムズムズするこの感覚は一体なんなんだ。

「そう言う事だから今日はさっさと冷めないうちに晩御飯を食べて明日に備えるのだ!」

「うん、いただきます」

「いただきます!」

「それじゃあ我は住処に帰るぞ!明日はお嬢が居るから護衛は必要なさそうだ」

「ちょっと待つのだ。サっちゃんの分のご飯も作ったのだ。要らなかったか?」

「お嬢?我は食事をしなくても生きる事に関しては何にも支障をきたさないのだが…」

そうなんだ。

ぐぐぅ〜~

「せっかくお嬢が我の為に作ってくれたと言うのなら、これはこれは是非にいただきます!」

「え、今お腹鳴ったよね!?必要なかったんじゃ?」

「細かい事は気にしない方が健やかに育てるぞ?息子くん!!では、いただきますっ!」

……すげぇ、食いっぷりだ。












一方その頃。





何か色々あって『龍の宿り木亭』に戻って来ていた。

「あー!異世界!凄かったぁ!!」

美雲は満足そうで何よりだな。

「ざこくん!回復魔法すごくね!マジ、すごくなかった!?あれ使えればすぐにお金持ちになれるよ!!一生遊んで暮らせるね!」

がめついやつだ。

「美雲も超能力を上手く使えばお金持ちになれそうだけどな」

「ほえ?」

まぁ、無理そうだな。

「そう言えばベルちゃんが帰って来たらプレゼントがあるって言ってたけどなんなんだろうね?」

コンコン

「こ、こんばんは。ふ、ふ、二人とも居る??は、入って良いかい?」

ベルロか?

何でこんな挙動不審なんだ。

「ん、早く入って来いよ」

「し、失礼します!」

「何だよ、堅苦しいな」

「だ、だって!その、良い歳の男女の部屋に入るだなんて、その、度胸と言うか勇気と言うか…」

「ベルちゃん……。何言ってんの?」

「さぁ?そう言えば、ベルロ。お前、俺らにプレゼントがあるって言ってなかったっけ?」

「ざこくん、ざこくん!そう言うのはちょっとがめついよぉ〜!もうちょっと、ほら、言い方って物があるでしょ?にひ、にひひ」

プレゼントと聞いて口元が緩むがめつい女が何か言うておりますわ。

「そうだ!プレゼントだったね。まぁ、プレゼントと言うよりも必需品だね。まずはこれ、男の人と女の人の一般的な衣服のセットだよ。君達の格好はここではほんのちょっとだけ浮くからね!」

む、服か…。いや、まぁ欲しかったから丁度良かったか。

「わぁ!ありがとう!!まごうごとなき!『THA・異世界ワンピース(白)』!どう?ざこくん!似合ってる??」

「ん?あぁ、異世界でそこら辺に居そうな普通な感じの女の子風で似合ってるぞ」

「わーい!」

「え、それ褒めてるの!?……まぁ、良いか。はい、ソウイチロウにはこれ」

美雲風に言うと『THA・村人なりきりセット』的な感じの上下セットと革靴だな。

まぁ、こんなので申し分ないだろう。

「ありがとうな、ベルロ」

「このぐらいどうって事ないよ。それと二人にとって必需品なのがこれ」

「これは、なんの紙だ?」

一枚の紙に何やら文字が書いてあるが全く読めない。

「これって、ベルちゃんのサイン?」

「その通り!」

「は?美雲!お前、これ読めるのか!?」

今生最大に驚いた。

「気に食わないが、なんでお前のサインが必需品なんだ?」

「ちょっと!何が気に食わないのざこくん!」

「その紙には僕の名前と、ミクモさん、ソウイチロウの三名の名前が書かれている。例えばその紙を持って冒険者ギルドに行けば君達は冒険者になれるし、学園に持っていけばそれは僕からの推薦状になる。まぁ、僕としては冒険者になるよりも先に、君達には学園に通って欲しいんだけど……。まぁ、要は君達の身分を保障する物さ」

なるほど、それはさぞかし融通の利く紙なんだな。

Aランク冒険者恐るべし。

「おやおや、宗一郎さん。これは鴨がネギを背負って闘いを挑んできましたよ?」

「美雲の言いたい事は何となく分かった。ありがとうベルロ。早速、明日学園に行ってみる。場所わからんけど」

「あー、初めてだとこの街は大き過ぎてちょっとだけ迷っちゃうよね。わかった、明日、出発前に学園までの地図を君達にあげるよ!残念ながら僕は明日は急用が出来たから付いていけないけどその紙があれば何とかなると思うよ」

何とかならなかった時が非常に不安だがここはベルロを信じるか。

「それじゃあ、今日はお暇します。そ、それではご、ごゆっくりと!」

「……何を想像している」

「っっ///!?お、おやすみ!!」

ベルロはバタンとドアを閉めた。

「それじゃあ、ざこくんもおやすみ」

「あぁ、おやすみ。今日はゆっくり眠らせてくれよ?」

「ほえ?何の事??」

「まぁ、いいか」









『ドア向こう側の出歯亀』




「それじゃあ、ざこくんもおやすみ」

「あぁ、今日はゆっくり眠らせてくれよ?」


きょ、きょきょきょ!今日は///!?

き、昨日は一体ナニをしたと言うのだろうか!!

そ、そう言えば今朝方、襲ったとか何とか……

「////っっっ////!!!??」











どうも蒸しです。お久しぶりです。


久しぶり過ぎて、前の話を読み返してたけど、色々と取り消したい設定とか矛盾とかステータスとか諸々ありますねぇ。萎えるわぁ。

めんどくさいからそのまんまにしておきますけど、いずれ上手く話に絡められればと思います。

まだまだ、自分の想像する面白いシーンまで辿り着くのに時間がかかりそうです。

茶番劇ばっかでスマソ!!

※何度も言いますが、絶対に投稿は辞めないので、応援よろしくお願いします。

投稿頻度をあげたいけど、どうも最近仕事終わりに眠るといつのまにかもう出勤時間になってるんですよね?

何なのでしょうかあれ。

学生の時のフリーダムは一体何処へ!!

いや、言うて学生の頃も……。

はぁ、仕事辞めてぇ。やっぱあんとき頑張らないでニートになっときゃ……


……いや、言い訳は辞めよう!別に嫌なわけじゃないんだ!!本当に!!信じてくれよぉぉおおおぉぉおお!!



はい。頑張ります。


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