龍の子

凄い羽の虫

15話 『眠れぬ夜は』

寝れない…。

別に明日、ミーシャと一緒に地上に出掛けるのが楽しみだから眠れないとか言うのではなく、恐らく長い間眠っていたためあんまり眠くないのだろう。

それと…

「母さん、いつまで部屋に居るつもりなの?」

そう、さっきお休みなさいを告げたばかりの母親が俺の眠りをずっと見守って居る。

「えー…と、なんだ、もしもまた寝た後に目が覚めなかったらどうしようかと、不安で…だから、見守ってたのだ」

「そ、そうなの…。でも、大丈夫だよ。多分、起きれるし」

それに、ずっとここに居られたら母さんも眠れないだろう。

何か、適当に言い訳でも言って帰ってもらおう。

「母さん、実は俺。ずっと寝てたせいか全く眠気が無いんだ…。だから、しばらくは寝れないと思うんだけど…。母さんは寝なくて良いの?」

「うむ、お前の母様は数日間寝なくても平気なのだ。まぁ、ダンジョンの主でもある故なのだ」

へ、へぇ〜。そうだったんだぁ。

道理で朝が早い訳だよ…。

「そうか、眠れないのならエルよ。私が、昔眠れない夜によく行っていた事があるのだ。それをエルにも教えてやるとしよう。では、早速外に出るのだ!」

「………え?」





母さんに連れられて外に出てきたは良いが、これから一体何が行われるのかさっぱりだ。

「よし、ここら辺で良いのだ」

場所は俺達が普段生活している階層よりも3階層上の階。

って、ここってもしかして…。

「か、母さん??ここってもしかして、フロアボスの部屋じゃないの!?」

「うむ、もしかしなくともボス部屋なのだ!」

な、なんて所連れてきてんだこの人はぁぁ!!

「ボス部屋って!フロアボスと一体何をするつもりなんだよ!」

「うむ?わからないのか?…ちょっとした、運動なのだ!」

「えぇ…」

「とは言ってもエルにはまだまだこの場所は早いのだ、私も昔は草むらに居る雑魚モンスターと戯れる程度だったからな…っとそろそろ来るぞ」

「え?来るって…」

ズゾゾゾゾゾゾォォォン…

空間にいきなり黒い靄が出現し、それは、やがてある動物を形作る。

「…と、鳥??」

「ただの鳥ではないのだ。あれは我がダンジョン最強にの番人、『サンダーバード』なのだ!」

『ウム、我、サンダーバード。久シブリダナ、オ嬢。ソノ男ハ噂ノ息子クンダナ?』

「うむ、そうなのだ!挨拶が遅くなって申し訳なかったのだ」

『問題ナイ、娘チャンノ方ハ以前ニ会ッタガ、オ前サンハ初対面ダッタナ、我ノ事ハ気軽ニ「サンダーバード」モシクハ略シテ「サンダバチャン」ト呼ンデモ良イゾ』

な、なんか凄くおぞましい声でおちゃらけた自己紹介されてるけど、正直笑えない…。

てか、サンダバって略し方ド○クエかよ…。

…正直、対面した時のエネルギー、プレッシャーはもしかしたら母さん以上かもしれない…。

「あ、あの…」

やば!声が出ない!

「おーい、サっちゃん、そのまんまだとプレッシャーが強すぎて息子がまともに喋れないのだー!」

『……ハッ、シマッタ!!我、マタヤッテシマッタ!!少シ待ッテテ!』

そう言うと、サンダーバードの体が輝きだし、あっという間にサンダーバードの体を縮小させ人型を作り出した。

「これで、どうだ!息子くん!」

人型になったからかいきなり言葉が流暢になったな。

「だ、大丈夫です。喋れます」

いやぁ、本当にプレッシャーで言葉が出なくなる事ってあるんだね。

「おー、良かった良かったー!我、安心!」

…てか、サンダバ?さん。

思ったより、小さい…??

いや、どこがとは言わないが。

まぁ、強いて言うなら全体的に…。

「むむむ!?息子くん、どこを見ていてる?」

しまった!悟られたか?

「もしかして、惚れたか??まぁ、我のようにレジェンドクラスの魔物になると溢れる魅力を隠しきれなくなるのも仕方のない事ですなぁ!」

……ちげぇ。

「こらこら、サっちゃん、あんまり息子をからかわないでほしいのだ」

「なはは!息子くんさえ良かったら我は…構わないんだぞ?////」

いや、そんなちんまりボディで言われても…

「け、結構です…?」

犯罪だろ、これ…

「なっはっは!ふられちゃったぞ、お嬢!」

「あ、当たり前なのだ!!エルにはまだそう言うのは早いのだ!!」

黙って頷く。

「そうだな!確かにお嬢もまだなのに、息子くんが先に致すのはなんとも不思議なことだ」

「わ、私のことはほっとくのだ!それより!ここに来た理由、分かっているな?」

そうだった、もとより何をしに来たのかまだ、はっきりしていない。

何をしにここに?

まさか、サンダーバードさんの自己紹介を聞きに来たわけじゃないだろう。

「もちろんだ、我とお嬢がこうして夜中に密会してやる事と言えばあれしかないであろう」

「うむ、あれなのだ!」

なんだよ…!

「ちょっとした、大人同士の試合なのだ!!」

か、母さん!?

「いやお嬢、さっきの流れからだと卑猥に聞こえるぞ?まぁ、ただの模擬戦だろう」

「ひ、卑猥!?何故なのだ!?」

な、なるほどぉー。

ってもしかして、母さんってそう言う事について結構疎かったりするのかな?

これは、意外な一面が見れたな。

「…ま、まぁとりあえずそう、模擬戦なのだ!用は眠れない夜は体を動かすと良いのだ!特に二人なら尚、捗るのだ!」

も、もう黙っててくれ…

「まぁ、そんな所だ。そう言えば息子くんを連れてきたと言うことは今日はそんなに激しいことはしないのだな?」

「う、うむ。あまり刺激が強いものを見せるのも教育上如何なものかとも思うのだ。だから、今日は軽くで頼むのだ」

サンダバさん、楽しんでるな!?

「まぁ、おふざけはここまでにしておこう。我もそろそろ暴れたくなってきた」

と、急に雰囲気が変わったな。

いよいよ、始まるのか…

ただの、模擬戦がっ!!

「サっちゃん、お手柔らかにな…!」

!?

気がついた時には、母さんは既にサンダバさんに飛びかかっていた。

「速い!」

母さんの拳がサンダバさんの顔面を捉えた瞬間。

「…いいや、まだまだ遅いねっ!」

バチバチッ!!

捉えたはずのサンダバさん残像として消え、その残像は眩いばかりの光を放ち、母さんへとダメージを与える。

「ぐっ!!」

恐らく致命傷を与えるほどの威力は無いのだろう、母さんは直ぐに体制を立て直して辺りを見渡す。

「…そこなのだ!!」

母さんは得意の『ファイアジャベリン』を何もない空間にぶん投げた。

パチッ!!

強い静電気に当たった時のような音と共にファイアジャベリンは掻き消された。

「っ!!」

「残念!我はここでしたぁ!」

突如、後方から出現したサンダーバードの出現に気づけずに母さんは攻撃を受けた。

バチチ!!バリバリバリ!!

「くぅ!!」

俺は始終サンダバさんに圧倒される母さんを見て、まさに開いた口が塞がらない状態にあった。

「なっはっはー!お嬢はまだまだだなぁ!」

「ず、ずるいのだ!!私はお手柔らかになって言ったのだぁ!!!」

凄い、あんなちんまりしたやつが母さんを圧倒するなんて…

「なはは、息子くんが観ているって言うなら少しは良いとこ見せないとなぁって、張り切っちゃった!」

「なっ、それなら私をたてるのだぁ!!」

「ふっ、お嬢はまだまだ、我に守られてると良いさ!」

「ぬぬぬぅ…」

母さん、まるで子供扱いだ…。

見た目はサンダバさんの方が子供なのに…。

「さて、息子くん、どうだったかな?このダンジョンは我がいる限りは難攻不落!安心して暮らすが良いさ!」

凄いドヤ顔だ、確かにこの人が居たらダンジョン内は安全だな。

「さ、サッちゃん!ダンジョン云々はこの子とは関係ないのだ。この子には旅をさせるつもりだからな…」

やっぱここを出ないと行けないのか?

「ふむ?そうなのか。まぁ、お嬢が良いなら我は良いのだが。…後悔しないんだな?」

「さ、寂しくなるとは思うけど…。仕方ないのだ!」

ん?なんの話だ??

俺が旅に出ると何か不都合があるのだろうか?

「おっと、エルは全く気にしないで良いのだ!そ、それより、お前もサッちゃんと一試合してみたらどうだ?」

何!?さっきは危険だから駄目だって??

「お??我とヤるか??」

バチチチリ!!

あ、やばい、今晩はぐっすりと……


眠れそうだっ…!!



バチン!!!







こんばんは。

お久しぶりです。

お疲れ様です。



……
………





次回、ぐっすりと永眠する事が出来たエルは少しお馬鹿で頭のネジが外れてるようで外れていない義理の妹ミーシャと地上の街にお散歩しに行くようです。

もちろん地上には色んな輩がいますね。例えば、幼児趣味で魔王の娘を殺害した容疑が掛けられている元勇者とか…。

次回、『地上にて』

更新予定日。いつか

楽しめるものならお楽しみに〜!!


あー、明日も研修じゃぁ……。もうスーツ燃やしてぇ。

あと、書き直したい感ある。一度リセットするかゴリ押すか……

どうしましょ。

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