龍の子
14話 『もういくつ寝ると』
うぅん…
ここは。
「ベッド?俺、寝てたのか?」
頭がクラクラする。
とりあえず、起きないと母さんにガミガミと怒られてうるさそうだ。
「よいしょっと」
ん?うちのベッドってこんなに低かったっけ?
早速違和感に気づく。小さい頃はベッドが高くて母さんになんども抱っこして貰ってた記憶がある。
なんだろう、なんだかすごい昔の気がするな。
とりあえず部屋を出て下のリビングに行こう。
「んぁ〜、少し寝すぎたかなぁ。体がすごいバキバキする…」
喉も痛いし。早く洗面所行ってうがいでもするか。
フラフラする足取りでドアへと向かう。
「ん?ドアノブが、あ、あった」
ドアノブの位置こんなとこだったっけ?
あー、喉いてぇ、取り敢えず洗面所だな。
洗面所に行くにはまず、リビングを通らないと行けない。まずは母さん達に挨拶して、なんて言おうか。確か今日から修行するって…。
修行??なんのだ??
まぁ、いっか。
「おはようー」
って、誰も居ない。そっか、先にミーシャが修行してるのかな?俺も後で行かないとな。
「うがいうがいっと」
前世から喉が痛い時はうがいしてたなぁ。
治るわけじゃなかったけど、気持ち的な問題って言うか。
ってか。誰こいつ…。
洗面所に着き、鏡と対面した瞬間、やっと気づいた。ボサボサに腰あたりまで伸びた髪の毛。身長170cmくらいのガリガリな体。
「…なんか、一歩も家から出ないどこぞのヒキニートみたいだな」
…。
え?
これ、俺!?
「えええぇぇぇぇ!!」
なんでだ?年齢からすると俺はまだ7歳くらいのはず!鏡に写ってるヒキニートはどう見ても15.6歳はいってる!
どう言うことだ!?
……あ、思い出した!!
確か、魔族には適齢期になると超成長って言うのがあって一夜にして大人の体になるって本に書いてあった気がする!
きっとそれだ!今思ったら服も白い布みたいなのだけだし!
「なるほどな、っても、不健康極まりない体つきじゃないか?丸で何年間も飯を食ってないみたいじゃんか…」
てか、髪の毛邪魔だなぁ。
髪の毛切りたいなぁ。確か、ここら辺にハサミが。
…うーん、見つからないなぁ。母さんかミーシャがどっかに持ってったな?
ナイフでも良いからどっかに切るもの無いかな?
…あ、そうか。無いなら作ればいいじゃないか!
「ウィンドカッター」
シュパッ!
バッサ!
「ふぅ、スッキリした」
って、あれ?
俺って確か魔法苦手だったはず、そもそもウィンドカッターなんて使ったことも無いのにこんなコントロールが良いはずがない。
「これも超成長のおかげなのか?」
でも一応、俺は魔族みたいだから魔力のコントロールが上手くても変じゃないのかな?
試してみるか。
「トルネード」
ヒュォォォ!
すご!!切った髪の毛を一纏めにゴミ箱に入れることが出来るなんて!
魔法が使えるって便利すぎる!!
これは、母さん達に自慢したくなってきたぞ!俺も早くみんなの所に行かないと。
ガチャ
「ただいまー」
あれ?帰ってきた??
「母様、挨拶しても返事なんて帰ってこないよ」
「そんなこと言わないのだ、ミーシャ。まぁ、私も分かってるのだが、癖みたいなものなのだ」
「あの、おかえり?」
何この返事しづらいやりとり…。
て言うか無視か?
てか、母さんの後ろに居る美少女だれ!?
まさか、ミーシャか!?ミーシャも超成長をしたのか!?まぁ、俺と大体同じくらいの歳だしおかしくないのか。
「おーい、おかえりー」
「分かってるのだ。…ただいまなのだ…」
あれ?どうしたんだ母さん?そんな表情が固まっちゃって。
「…え」
ミーシャに関しては返事すら無しか。美少女になっても愛想は無いな。
てか、
「なんで、そんなに泣いてるのさ?」
「…バカ兄貴!」
「なっ!?」
また、ミーシャはそんなこと言って。全く、懐かしいな。
懐かしい?
「エル。良がっだのだ!本当によがっだのだ!!」
痛てぇ!!
「ちょっ、痛いって!母さん、抱きしめるのやめてってば!」
「すまないのだ…。つい、抱きしめてしまったのだ。取り敢えずパパ上に連絡するのだ!」
相変わらず慌ただしいなぁ、あの人は。
「兄貴、いつ目が覚めたの?」
ミーシャか、いつの間にか見違えちゃって。あの、ちんちくりんがこんな美少女になるとは。
「ミーシャ、髪切ったのか?」
「…うん、母様とお揃いにしたくて」
そう言えばお揃いの髪型にしてるな。
「兄貴は今日…」
っと!まさか修行に遅れたことを怒ってるのか?
「あー、ごめんな!ミーシャ、修行。遅れちゃったよ!!一緒に修行が出来なくてすまん!」
「!?……バカ!遅れ過ぎだよ!!」
痛い痛い!!
「だ、抱きしめないでぇ〜!」
「嫌だ!ミーシャ。もう、兄貴よりいっぱい強いんだから!」
って、ミーシャも泣いてるのか。
泣き顔が見られたくないのか、ずっと顔を埋めてる。
「兄貴の方が弱いんだから…」
ん?ちょっと、聞き捨てならないぞ??
でも、見た目は変わってもこう言うところはちゃんとミーシャだな。
「ところでエルよ。これから、昼飯なのだが食べれるのか??」
もう連絡終わったのか。
「そう言えばお腹が減ってるような減ってないような。てか、食べれるとは思うけど…?」
どう言うこと??
「いただきます!」
手作りの料理を口に運ぶと。今までからっぽだった胃に、突然食べ物が入ってきて吐き気を催す。
「…うっ!?」
それでも飲み込む。
涙が出てくる。
もちろん、吐き気からくるものではない。
涙が止まらない。何故?
懐かしい。
「おいしいよ」
「良かったのだ」
「俺は、何年間眠ってたの?」
何となく分かってた。
みんなの反応。
変にやせ細った体を見れば。それでも信じたくは無かった。
「8年なのだ、龍種や魔族からしたらあっという間と言えばあっという間なのだ。でも、お前が寝てる8年間はとっても長く感じたのだ」
母さんはもう泣いていない。
やっぱりこの人は強いんだなぁ。
「ごちそうさまでした」
「ミーシャ、今日の修行は中止でいいな?」
「うん、母様」
「今日は家族水入らずで談話でもするのだ」
その時、家のドアが乱暴に開かれた。
ドガッチャ!!
「エル君、目が覚めたって本当かい!!」
フレッドじいちゃん。
実は出会って1日しか経ってないのに、そんな短い時間でとても良くしてくれた。
「じいちゃん、久しぶり?」
「久しぶりなのだ!本当に!!お前にとっては短い付き合いだったかもしれないけど俺にとっては関係ないのだ!」
ん?心読まれた??
「とりあえず、これを飲むのだ、エル君」
「これは??」
「回復薬なのだ!とってもすごい効き目のある、すごい回復役なのだ!!」
う、うん。
でも、ありがたい。
「じゃあ、いただきます」
ごくごく。
う、美味い!パインみたいに甘い!それでいて後味はさっぱりとしていて何本でもいけそうだ!
「それはアクアドラゴンの最長老から出た汗にグランドドラゴン種の親戚のフルーツドラゴンの脂汁を混ぜたものなのだ!通称『龍湖薬』なのだ!あ、あと成長した体に合うように適当に服も買ってきたのだ」
「おえぇぇぇ!??」
汗とか脂汁とか言ってたけど!??
「あ、なんか力が漲ってくる!!」
「そうであろう!龍族に伝わる秘薬なのだ!だが、ひとまず失った筋肉までもは回復しないから、それはしっかりと鍛え治すしかないのだ」
うーん、力は半端なく漲ってくるんだけどなぁ。
っと、そう言えば俺もあのことを話さないと
「そう言えば俺、魔法が使えるようになったんだ!」
「む?エルよ、お前も魔法が使えなかったのか?」
「え?いや、使えてはいたと思うけど最後までうまく決まらなくって…。でも、今はそんなんじゃなくて、コントロールまで自在なんだ!」
そう言って、軽い風魔法で食器を持ち上げる。
「兄貴!…本当なの?それ!!」
「本当も何も現にやって見せてるじゃないか」
「……ずるい」
「エル、実はミーシャは魔法が使えないのだ。魔力量からしたら全く問題はないんだけど…。一体なんでなんだか」
ミーシャが魔法を使えない??魔力は扱えるのにか?
「…良いもん!それでも私の方が、兄貴より強いんだから!!」
「あっそう?なら魔法の使い方、教えてあげようかと思ったけど辞めとこうかな??」
なんて?
「……私は、使えないの。……良いんだもん!!私も兄貴には龍激を教えてあげないから!!」
りゅーげき??
「り、りゅーげき??って、なんだっけ?」
「む?」
「おや?」
「え?」
待って、なんか思い出せそう…!
確か神様が…。えーっと…。
……。
そうだ、知っている。俺は魔法の使い方も、龍激の仕組みも。
あの時から!
全部、思い出した!
「いや、大丈夫、大丈夫!思い出したよ!俺が眠る前に見せてくれた『異力』と他の二つのエネルギーを混ぜ合わせて発動するリンドヴルム家の秘伝技の事でしょ?おそらく混ぜ合わせる行程に難があって修行というのもそこらへんを重点的にするんだろうなぁ」
うん、なんか言葉が出てきた。
「なっ!?」
「おぉ!」
「す、すごい!」
母さん、じいちゃん、ミーシャもびっくりのようだ。
「お前、あの時のあの一瞬で理解したのか?」
「すごいぞ!ミアレ!!この子は天才だ!!龍族の中でも一回で仕組みを見破るやつは居なかった!」
「私でも5年も掛かってやっと理解出来たのに…!」
「エルよ、体力が回復したらさっそく修行を再開するのだ!平気だな?」
「た、たぶん…」
「よし!じゃあまた、晩御飯の時間まで好きにしてるのだ!ミーシャもエルとまだまだ話足りないだろう?」
「っ!?そんなこと、無い!」
「おや?ミーシャちゃん、修行が終わったらいっつもエル君の部屋に言って自分の自慢話を聞かせてたじゃないっっっがハッッ!!!??」
ぬぉ!!速い!!
「やめて///おじいさま…」
ミーシャの拳がフレッドじいちゃんの腹にめり込んでる…
「ぐふっ、こりゃ、ミアレ以上に逸材かも…しれん…!」
ばたり。
「だ、大丈夫なの?」
「大丈夫、いつもの死んだふりだよ。なんだかんだ言っておじいさまは強い」
いつも殴ってるのかよ…。
それからはミーシャとたくさん話をした。
俺が眠ってる間に起きた話。
たまたまダンジョンに入ってきた勇者をフレッドじいちゃんと一緒に倒す話や地上に新しく出来た学校の話。それと、たまにミーシャは地上の冒険者ギルドに通って実践的な修行もしてるそうだ。もちろんフレッドじいちゃんも付いて行ってるみたいだけど。
その時に嫌な奴に出会ったから髪の毛を切って母さんとお揃いにしたとか言ってたなぁ。
一体どんな奴なんだろうか?
男だったら〇〇ちゃうかも…。
「おーい、晩御飯出来たのだー!」
おっと、もうそんな時間か。
「どうだ?ミーシャとはたくさんお話出来たか?」
「うん、俺が寝てる間に色んなことが起きてたんだね。でも、出来るなら一緒に体験したかったな…」
「何言ってるの兄貴。目が覚めたんだから、これから楽しい思い出を作ればいいじゃん!」
「ミーシャの言う通りなのだ。お前の人生はこれからなのだ」
「そうだ!母様。明日、兄貴と一緒に地上に行ってきても良い?」
「ふむ、なら俺が一緒に監督するのだ」
「おじいさまは付いてこなくて良いの」
「…!!!?」
「まぁまぁ、ミーシャもそう言わないのだ」
まぁ、想像は出来てたけど少しじいちゃんが可哀想に感じてきたぞ…。
まぁ、何にせよこれからまた、家族と過ごす時間が始まるんだ。
じ〜か〜ん〜がーーーー!
何にもしてないのにーー進んでくぅ〜!
神様!1日を48時間にして下さい!!おなしゃす!!
どうも、蒸しです。
ここで話すのも何だけど、やっぱりフォロワーさんて大事よね、、、
私があまりにも投稿するのが遅いからなのか、数少ない大事な大事なフォロワーさんが減っていってるの。
不甲斐ないです。本当に申し訳ない。
話の展開からしたらここからが本編なのでどうかこれからもご愛顧ください!
最終回ではないです!全く違います。一章のスタートですので!!
あと、拾いきれない伏線は……あ、拾います。
あと、キャラ絵も描きたいなぁ、と思ってるんですが中々上手く描けなくって大変です。絵師さんって偉大!
とりま適当な絵を挟んでおきます。ではおまけです。
課題やりながら書こうと思ったけど頭が追いつかんのぉ
11/25
時間の概念を改変しました。(都合のいい矛盾点の取り除き)
おまけ
【日記】『ミアレの部屋』
『 訳あって日記を付けようと思う。こう言うのが大事らしい。 』
『開界歴 1400年 10月21日
今日は、いつも通り魔の森で薬草を採取していたら赤ん坊を拾った。魔族の男の子だ。最初は人間達に引き渡してお金にでもなれば良いかなって思ったけど、この子に見つめられたらそんな野心は吹っ飛んでしまったよ。そう言えば赤ん坊は何を食べるのかわからないから人間の街で本を買ってきた。…しかし、困った。私からはミルクがでないのだ。どうしたものかと、悩んでいたらどうやらこの子には歯が生えている。どうやら「離乳食」と言うやつで間に合うらしい。手料理も少しだけ不安だな。 』
『開界歴 1400年 10月22日
男の子の名前は「エル」にした。とは言ってもフィーリングで決めた訳じゃない。赤ん坊を拾った時の布に血で書かれた文字で書かれてあったのだ。私が名づけても良かったのだが、恐らくこの子の本当の母親はもうこの世には居ないのだろう。本当の事はこの子に言うべきなのだろうか?』
・
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『開界歴 1401年 10月21日
今日はエルの誕生日(仮)だった。最近では少しだけ喋れるようになったみたいだが、何を言ってるのかわからない。ちょっとだけ言葉になっている気もするが、やはりまだまだ赤ん坊なのだ。そんなはずは無いのだ。 』
『開界歴 1402年  2月6日
大変なのだ。貯金していたお金や、ダンジョンに隠していたお宝が底を尽きそうなのだ。狩にで掛けても良いがこの子を置いておく訳にもいかない。やっぱり1人で子を養いながら生活するのは無理なのだろうか。パパに相談するべきか…。いや、ダメなのだ。魔族の子供なんて絶対に認めてくれないのだ…。どうしよう。  』
『開界歴 1402年  2月10日
思い切って狩に連れてきてしまったのだ。何が何でもこの子を守りきるのだ。今日は何故かアングリーボアどもが紙のように柔らかく感じたのだ。おかげで大漁大漁!これでしばらくは狩に出なくても平気なのだ! 』
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『開界歴 1406年  12月7日
エルもだいぶ大きくなってきて、家で1人で留守番をさせる事にも不安が無くなってきた。でも、最近は1人で地上にでたりするようだがそこらへんはまだちょっとだけ不安なのだ。』
『開界歴 1406年  12月8日
大変なのだ。いつも通りにアングリーボアを狩っていたらボロボロの女の子が横たわっていたのだ。年齢は息子と同じくらいかそれより下。このまま見殺しには出来ないので回復魔法を使って、目が覚めるまで見守っててあげたのだ。目が覚めたらさめたで自分の事がわからないだの何故ここにいるかだのと震えながら訴えてきたのだ。ただ、私には何故だか愛おしく感じたのだ。なんとなく息子に似ている気がしたのだ。気がついたら家に連れ帰ってて息子にこの子の事を紹介したら唖然としていたのだ。名前も決めたのだ。この子は「ミーシャ」、昔から女の子が出来たらミーシャが良いと思っていたのだ!まぁ、今の所仲の良いオスは居ないので予定は無いのだ。とりあえず、仲良くしてくれると良いな。 』
『開界歴 1407年  5月17日
息子に突然修行をつけてくれとせがまれた。まぁ、いずれはこの家から追い出さなければいけなかったのだ。その時に戦えずして野垂れ死なれたら寝覚めが悪いのだ。強くなってくれ。息子よ!明日から修行なのだ!』
『開界歴 1407年  5月18日
今日は申し訳無かったのだ…。修行をつけると偉そうな事を言っておいて、結局は2人を危険な目に合わせてしまったのだ。もし、あの時パパが来なかったら。2人を死なせてしまっていたら、私は自害していただろう。…結局今日は色々あったのだ。パパも子供達のことを認めてくれたし。疲れたから今日は寝るのだ。 』
『開界歴 1407年  5月19日
息子が突然倒れた。また、私の所為なのだろうか?娘やパパはそんな事ないと言ってくれたがどうにも落ち着かないのだ。回復魔法を使っても目が覚めないのだ…。このままずっと…。いや、明日にはひょっこりと目覚めるはずなのだ!』
『開界歴 1407年  5月20日
結局、息子は目覚めなかったのだ。できる限りの回復魔法を使ってみても起きないのだ。原因がわからない…。私は息子に何もしてやれないのか?』
『開界歴 1407年  5月23日
娘よ、申し訳無かったのだ。明日から修行を再開しよう。泣いて、泣いて、泣きまくったのだ。もう私は泣かないのだ!』
『開界歴 1408年  10月21日
息子の、8歳の誕生日。相変わらず目覚めないのだ。最近娘は修行が終わると息子の部屋に行き、ずっとお話をしているのだ。いかん、また涙が出てきたのだ!』
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『開界歴 1412年  6月3日
娘が実践訓練から帰って来たと思ったらいきなりハサミで自分の髪の毛を切り出したのだ。なんでも地上で嫌な事があったらしいのだ。母様とお揃いにする!なんて言っていたが私は長い髪のミーシャも可愛らしいと思うぞ?』
『開界歴 1414年 7月7日
修行を終えて家に帰り、いつも通り「ただいま」と言っていたら娘に怒られたのだ。返事も無いのに挨拶するな、だとさ。分かっているのだ…。でも、もう癖がついてしまってるのだ。いつか、おかえりと返事が返って来るのではないか?息子が目を覚ましているのではないかと…。もう7年も経っているのだ。本当にこのままあの子の歩いてる姿や、ご飯を食べてる時の談話や笑い声も笑顔も、何もかも。戻らないのだろうか?』
『開界歴 1415年  5月25日
今日は何となく「ただいま」と言ってしまったのだ。また、娘に怒られると思ってたら。「おかえり」って返事が返って来たのだ!時間が止まったみたいだったのだ。自然と涙が溢れて来たのだ。思わず抱きしめたら痛いと怒られてしまったのだ…。良いのだ。それでも、また私の前に歩いてる姿を見せてくれたのだ。それだけで…………』
『開界歴 1415年  5月25日
涙で書けなくなってしまったので。続きなのだ。
正しく止まっていた時が動き出したのだ。パパに連絡を取って息子の前に戻ると、娘もやはり息子に泣きついて居たのだ。私はもう十分泣いたのだ。息子には極力笑顔を見せよう。なんだか、日記どころじゃないのだ。今日はもう寝るのだ。おやすみ、エル、ミーシャ』
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