龍の子

凄い羽の虫

11話 『お話しよっか』

「さて、晩御飯が出来るまでこっちでおじいちゃんといっしょに待ってようか」

うおっ!さっそくおじいちゃんズラか。

まぁ、そっちのが争いが無くて楽だけど…。

てか、俺もじいちゃんって呼んでるけどこの人の名前もどこに住んでるかも何にも知らないな。

「ねぇ、じいちゃん。じいちゃんの名前ってなんて言うの?」

ここは本人に聞くのが一番かな?

「そう言えば、名乗ってなかったな。俺の名前はフレッド。『フレッド・リンドヴルム』だ。気軽にフレッドおじいちゃんって呼んでくれ!」

先ほどまでのピリピリした態度とはまるで真逆な笑顔を見せるフレッドじいちゃん。

そして、一つ気になることがある。

「わかったよ!ありがとうフレッドじいちゃん!それと一つ気になることがあるんだけど良いかな?」

こちらも満面の笑みで返答する。いや、特に作ってるわけでは無い。自然と溢れて来る。

「ん?何かな?なんでも質問してごらん?」

「うん、名前の後についてるリンドヴルムってもしかして苗字かな?って」

半分ワクワクした気持ちで質問する。

ワクワクしてる理由はと言うとリンドヴルムってなんかカッコよくね?って思ったからだ。それと…

「…え?ミアレから名前のこと教えてもらってなかったのかい?」

何ぃ!!

「ううん、母さん名前の事とかなんも話してくれてなかったし。俺も今の今まで気にした事なんて無かったからね!格好いい苗字でびっくりしたよ!」

そう言えば聞いたことすら無かったなぁ。

「そうかい?なら今日からエル君も『エル・リンドヴルム』と名乗ると良い!」

自然と笑顔が溢れてきていた。

龍激の継承者エル・リンドヴルム…!

良い響きだぜ!!

そう、建前だけの家族じゃなく、苗字を名乗ることによってようやく本当の家族になれたのだと認められたのだ。

まぁ、今までだって別に気にしてはいなかったけどこの人に認めて貰えたのがなんとなく嬉しい。

そんな些細なことだ。

「兄貴、ニヤニヤしてて気持ち悪い…」

き、気持ち悪いっ!?

「そ、そんなことないぞ?ミーシャ??ほら、ミーシャも家族として認められて晴れて『ミーシャ・リンドヴルム』だぞ??かっこいいぞ!?」

うん、かっこいいよね??

「かっこよくない!兄貴のばーか!ついでにおじい様もお馬鹿!!」

何で何ですか!?

「お嬢様、何故に!?」

そりゃ、じいちゃんもツッコむわ。

「ミーシャはミーシャだもん。レイアなんとかって言うよくわからないのじゃないもん!!ミーシャ怒ってるんだから!!」

そ、そりゃミーシャも怒るわ…?

「も、申し訳なかった!!お嬢…ミーシャちゃん!!この通り許してくれ!!」

そ、それは!!

古来より日本の習慣であり、地面に頭をつけることから恐縮の意を組むものとして、大抵の事は許されるとされているが、その反面恥辱にも値するため中々現代人が進んでやろうとは思わない行為!!

土下座!!

「何やってるの?お馬鹿!ミーシャ、母様のお手伝いしてきちゃうから!!」

無念!!

まぁ、この世界の人に土下座は通用しないんじゃ…

って!?

なんで、この人土下座の事を知っているんだ!??

「むむむ、流石に最近レンヤ君に教えて貰ったばかりの謝礼術の技は通用しないか…。龍激は極めたがやはりこちらの方はまだまだ未熟か」

な、何やらブツブツ言っているけど、どうやらミーシャに無視されて落ち込んでる訳ではなさそうだ。

とりあえず今は土下座の事を聞いてみよう。

「じいちゃん。今のは、今の行為は何なの?」

「あぁ、今の技の事かい?今の技は二年ほど前にドラゴンの里。あぁ、俺らの住んでいるところだ。そこにやって来た少年、レンヤ・キノシタ君に教えて貰ったのだ。なんでも謝礼術と言って戦闘力が低い者が戦闘を行わなくても平和的に解決できる処世術の一つらしいのだ。先ほど行ったのは謝礼術の中の基本中の基本で『初歩の礼  ドゥゲザー』と言うのだ。他にも『空中礼術  ジャンピンドゥゲザー』と言う技もあるのだ!!私はまだまだ見習得なのだがな!!」

わ、技?謝礼術??

いやいや、それより、レンヤ・キノシタ??

『きのした れんや』???

これって日本人なんじゃ…??

「ねぇ、じいちゃん。そのレンヤ・キノシタって人もしかして勇者だったりする??」

勇者の可能性が高そうだ。

「バカを言え、勇者とは真逆の方だったのだ。どちらかと言うと勇者討伐の為、連れのヨーコちゃんという女の子と一緒に異世界からやって来たそうなのだ。どうやらこれから強者を集め勇者に対抗しうる集団を作るらしいのだ。現に、ヨーコちゃんが九つの尾から発せられる魔力や龍激とは違う何とも奇妙な力で勇者を容易く屠る所を目撃したのだ。まぁ、あの程度の勇者は我が龍激でも容易く屠れるがな!!」

勇者を討伐する為に来た??

日本人が??日本人を?

それはそれで色々と問題があるような気もするけどな…

てか、ヨーコちゃんだっけ?何者なんだ??

異世界、恐らく日本から来たはずの人間が九つの尻尾だって??

意味がわからない…。

ただ日本人なら一度会って話をしてみたい気もする。

「じいちゃん、その人達って今どこに居るのか分かったりする?」

「どうした?エル君も勇者討伐に興味があるのかい?」

「いや、ちょっとお話してみたいなって。うーん、討伐に興味は無いかな?俺は家族を守る力があればそれ以外は要らないと思ってるし」

「そうかい?じゃあ、ミアレやミーシャちゃんの事は頼んだよ!…と言っても今はまだミアレの方が断然強いんだけどね!!」

そ、それは言わないで!!

確かに、龍激をマスターしたとしても母さんには勝てる気が一切しないなぁ…。

ミーシャが来る前はちょくちょく母さんと一緒に狩に出掛けてた事もあって、間近で母さんの戦いを見た事があるけどものすごい圧倒的だった。もちろん相手が狩の対象で雑魚モンスターや野生動物だったりもしたからなのだが、何と言うか…魔法のレパートリーが凄いと言うか…。

「母さんは何であんなに魔法が使えるんだろう…」

しかも、無詠唱の高速射出。

もしかしてドラゴンってそういう生き物なのかな?

「うむ、我が娘及びエル君のお母様は天才なのだ。産まれてからまだ幼龍だった頃、人化変化をしていた俺をみてすぐに変化を習得していたからな。まぁ、何を間違えたのかその時に褒めてしまって以降ほとんどが人の姿で生活をして居たのだ。それ故かドラゴンの友達は少なくてな…。よく人里で人間の子供達と遊ぶ事が多かったのだよ。おかげで龍激の修行にはまともに参加せず、人間達と魔法の練習ばかりしていたのだが。それでよく龍激を教えようと思ったものだ…」

なるほど、ドラゴンである母さんが人間達と仲が良い理由が何となくわかった。

ん?でも母さんって街の人にはドラゴンって事を隠して暮らしてる筈。

何年も姿が変わらなかったら流石に街の人たちも気づくんじゃ…?

「ねぇ、母さんっていつからここのダンジョンに居るの?」

「うむ、忘れもしない。ミアレがこのダンジョンに呪われたのは16年前の事になるな。しかし、それがどうしたのだ?」

え?16年前???

なんか思ってたより最近??

いや、長いと言えば長いけども…

てか…。

「母さんって、何歳なの!?」

「む?エルよ。私は今年で26になるのだ!お前を拾って来たのは7年も前になるのだ。感慨深いものだなぁ」

に、26歳!?

なんか、さっきまでうん百年とかとんでもない数字が出て来てたから少し表紙抜けだなぁ。

「何を唖然としてるのだ??まさか、お前!!お母様を500歳くらいのババアとかと勘違いしてたのではないだろうな!?」

「い、いや!ちょっとさっきまでの話を聞いてたら表紙抜けしちゃって…」

おっとっと、不味い不味い…

「こら!ミアレ!!口が悪いのだ!!今年で600歳くらいになる俺がジジイだとでも言いたいのか!?」

フレッドじいちゃん。俺からしたらあなたはジジイです。

いや、見た目はすごい若いけど!!ジジイというより30代後半のイケてるおっさんみたいな感じだけども!!

「パパ上は今日からおじいちゃんなのだ!間違っては居ないのだ!!ほら、ミーシャも見てるのだ」

「じとー…」

「はうっ!?キラキラしてない上目遣い!!しかし、これはこれで…」

ミーシャは相変わらずフレッドじいちゃんの事をそんな目で見つめて…。

まぁ、じいちゃんも嫌がってないし特に注意は要らないか。

「もう!!良いのだ!とりあえず晩ご飯が出来たのだ。さっさと席について行儀よく食事するのだ!」

「「はい」」

「はーい!」










こんにちは虫です。


年明けて気づいたら5日も経ってました。

時間経つのって早いね。

なんか、もうさっさと修行開始させてさっさとエイル君達を成長させてやりたいですね。

全く、一日が長い世界だ!!!

…おっとっと、いけない。つい本音が

なんか、学業を疎かにしてたせいで留年しそうになってるので一週間奮闘しなければならなくなりました。
↑お前いつも投稿一週間ペースだろ!!

この作品は何があってもぐだっても誰にも読まれなくても完結はさせますので、絶対に失踪はありません。ストーリーの進行度的には10分の1も進んで無いし…








『その頃の秋葉』

秋葉「ついに、着いた。ここがエイル君の魔力反応があった街…のはず…??」

辿り着いた街は確かに先日、千里眼でサーチしたはずの街であった。

しかし、そこにはエイルや他の人間の魔力はいっさい感知出来ずに一人佇む秋葉の姿があった。

秋葉「おかしいなぁ。アタシが全力で走ってきて2日も掛かるのにエイル君がこの短時間でサーチに掛からなくなるほど遠くに行けるはずがないんだけどなぁ…」

それもそのはず、当のエイル達は魔力やスキルによる探知を一切遮断するダンジョンの中にいるのだから。

秋葉「しょうがない、しばらくはこの街に滞在しよう。もし、反応が一切無いようならまた、旅に出るとしようかな」

秋葉はしばらく悩んだ後、宿へと歩みを進めた。


『龍の宿り木亭』


秋葉「こんばんは〜、部屋空いてますか?」

「あらあら、こんな時間にお泊まりのお客さん?しかも女の子なんて…冒険者かしら??」

秋葉「あ、まぁそういうところかな??それで一つ部屋を借りたいんだけど大丈夫かな?」

「ごめんなさいね〜、相部屋なら空いてるんだけど男性の方だから…、女の子一人を相部屋に入れるのは危険だしオススメはしないわぁ」

ふむ、相部屋かぁ。まぁ、大抵の男だったら襲われても反抗出来るから問題は無いかな?

秋葉「あぁ、相部屋で構わないよ。それより今晩の寝床が心配でね」

「そうかい?結構、大胆な性格をしてるんだねぇ。おやおや?噂をすれば相部屋の男性の方が酒場の方に行ったみたいだよ?突然部屋に入るのも何だし、挨拶に行ってきたらどうだい?長身でハンサムなおじさまって感じの人だったわ。見ればすぐわかるわよ」

何で襲われる前提なんだよ…。別にそんなつもりで言った訳では無くてただベッドで寝たいだけなのだが…

まぁ、良いや。確かにいきなり部屋に入ったらこんなピチピチのJKが居たら襲いたくもなっちゃうかもね!

今年で26になるけども…

だって!!一切年を取らないんだもの!

で、えーっと。

長身で、ハンサムなおじさまねぇ。

あ、居たわ。むさ苦しく踊り騒ぐおっさん達の中に一人だけ落ち込んだ雰囲気のおっさんが…

多分この人だな。

秋葉「あのぉ〜、こんばんは。ご一緒いいですか??」

「む?なんなのだ??俺は今、すっごい落ち込んでるのだ…一人で飲みたい気分なのだ…放っておくのだ!」

な!?ピッチピチのJKが話しかけてやってるってのに物凄い目つきで睨み返された!!

これはピチピチJKの心に傷がついたよ!!

秋葉「え、えっとぉ。今日お泊まりの部屋を相部屋させていただくアキって言いますぅ。良かったら一緒に飲みませんかぁ?」

どうだ!!若い女の子がブリブリした感じで接すればおっさんは大体おちるはず!!たぶん!!漫画とかだと成功してたし。きっと行ける!!

「…もっと、上目遣いで!」

秋葉「へ?こ、こうですか??」

「いい感じなのだ…」

なんだこのおっさん。

変な奴かと思ったら変な奴だったんだけど…。

秋葉「え、えっととりあえず何があったか聞いてもいいですか??」

「……」

はっ!?

上目遣いでか!?

「…いいだろう。俺には娘が居るんだがな。実は知らんうちにその娘に7つになる子供が二人も出来ていたんだ」

ふむふむ、そりゃずいぶんやんちゃな娘さんなことで…。


割愛


「それで、その孫がだな。可愛くて可愛くて、一緒に孫の寝顔と共に俺もベッドに入ろうと思ったら娘に強制的に家から追い出されてしまってな…。今ここで飲んでる訳なのだ」

あー、なんか可哀想なような自業自得なような。

私も昔お父さんには反抗的な態度ばっかとってたなぁ。お父さん、元気かな??

私にべったりだったから、突然居なくなってきっと悲しんでるだろうな…。

秋葉「…お父さん」

しまった、つい口に出てしまったよ。

「!?」

ついでに、おっさんも反応しちまったよ…

「そういえば、アキちゃんはどうして冒険者なんかやって居るのだ??」

む、そういえば理由を特に考えてなかった!

まさか、魔族の村滅ぼして呪い掛けられたから勇者辞めて一人の男の子を求めて旅してるなんて壮絶な理由を暴露する訳にはいかないし。何より勇者だったとバレたくない。

しかも後から本とか読んで気づいたけど、レイアってば本当に魔王の後釜だったし。

まぁ、悪いことはしてなかったんだけど…。

わ、私殺してないよね?あれ、自殺だよね??あわわわわ…

村は滅ぼしたけど…

いつか、時間が出来たらお墓まいり行かないと…。

「どうしたんだい?何か話しづらい理由があるなら無理して話さなくても平気なのだ」

秋葉「あ、いや!えっとー…お父さんとお母さんがえーと、えーと。勇者!!勇者に殺されてえっとー、お金!お金稼ぎに冒険者になりました!」

ユウシャ。ヒト、コロスヨネ?フツウニ?

「そ、そうか、大変な人生を歩んできたのだな。しかし、勇者か…。人の身でありながら人の子をも殺める腐った根性の持ち主どもめ。…やはり、俺もいつかレンヤ君たちに協力し、共に勇者を討つ時が来るのか…」

うわ、ブツブツ言い出した!

なんか、ごめんなさい。

「それはそうと、アキちゃん」

秋葉「はい?」

「君さえ良ければ俺の事を、お父さんと呼んでくれてもいいのだぞ?」

は?目を輝かせながら何言ってんだこの人は??

もしかしてさっきの言葉忘れてなかったのか??

秋葉「え、っと…?何を…?」

「……」

そ、そんなにシュンとしなくても!!

秋葉「わ、わ、わかりましたよ!!お…お、お父さん??」

「うむ!やはり、いい響きなのだ!これから何か困った事があったら何か相談するといいのだ!本当の娘のようにいつでも駆けつけるのだ!」

秋葉「あ、ありがとうございます。えっと、あの。アタシ、もう部屋に行ってますね?鍵は開けときますので、早めに戻ってきてください」

「あぁ、鍵は閉めておいていいのだ。部屋は一人で使うといいさ。俺は野宿で十分なのだ」

秋葉「え?でも…」

「俺のことは気にしないで、安心して眠りにつくといいのだ。では、おやすみなさい」

秋葉「あ…えと。おやすみ、なさい」



お父さん、元気かな…。

知らない世界で私、汚れちゃったよ。

こんなの家族がみたら皆んな悲しむよね…。

あの人、名前も聞くのも忘れちゃったよ。良い人だったなぁ。

変人だったけど…

でも、きっと私の事を全部話したらきっと嫌われるに違いない。

あぁ、家族かぁ。私も、もう一度だけで良いから家族で晩ご飯を食べたいな。












「あ、おはようございます。アキさん。いきなりで申し訳ないんですが、昨日の食事代を払って頂いてもよろしいでしょうか?」

は?

「昨日、ここでお食事なさったでしょう?その…お会計の際、もう一人のお客様が突然消えてしまったものでアキさんにお支払いをと…」

……

秋葉「ぁんの、のだのだ野郎ーーー!!!!」





「む、何か忘れてるような気がするのだ…」

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