部活の後輩と付き合ってみた
2月と言えば?
引越しを手伝ってくれたメンバーとの打ち上げが終わり、彼らが帰った後、僕と七海は2人でリビングでまったりしていた。
「終わりましたね〜」
「終わったというか予想に反して簡単に終わったね」
本来、僕の予想だと明日ぐらいまでかかるだろうと思っていた(七海が仕事をしないとの予想のため)ので今日の増援は嬉しい誤算だった。
「これもセンパイの人望ですね〜」
「それは関係なのでは……」
「でも慕われてなきゃ皆さん来ませんって」
「そうか……?」
「ですです〜にしても同棲ですか」
「そうだね。遂にというか……今までとあんまり変わって無いような気がするんだけどな……」
だって今までだって七海が僕の家に勝手に来て、そのまま僕の布団で寝てしまう事が結構あり半ば同棲状態であったことは否めない。
「お黙りですよっ!! 大事なのは気分ですよ!!」
……来たよ、七海の“大事なのは気分ですよ!!”
よく彼女はこの言葉を言う。
それよりも僕はふと今までの事をしみじみと思い出した。
「というかな……」
「どうしたんですか?」
「いや、1年前からは想像出来なかったな……」
「そう言ったら私もそうですよ〜1年浪人して、大学に入ってどうなるかな〜って思っていたらお人好しのセンパイに会いましてね〜」
「まぁまさか部活のチラシ配りで会った子が彼女になるなんてね……」
「センパイも運が良いですね〜。こんな美少女にチラシを配れるなんて〜!! もっと私に感謝するがいい!!」
「それはない」
「酷いよ!?」
今のこんな状況を昔の僕が見たら何て言うだろうか?
あの頃は自分が彼女、ましては部活の後輩となんて思いもしなかった。僕もこの1年で変わったのだろう。
「グフフ……これからセンパイとの同棲が始まる……」
「いや今までもーー」
「シャラップだよセンパイ!!」
「はいはい」
これ以上七海に言っても疲れるだけなので僕は大人しくする事にした。
「ねぇねぇセンパイ」
「なんだい」
「今って2月じゃないですか」
「そうだね」
「2月と言えば〜?」
「部活の合宿」
「ケッ、つまんな」
ばっさり言われた。
というかこの子たまに言葉遣いが酷い時がある。
……言い方悪いが本当にヒロインなのか?
「いや当たり前だろ」
「では他には〜?」
「就活の準備」
「本当に夢無いですねセンパイ。
人生それで楽しいんですか?」
「勢いだけで生きている君には言われたく無い」
「もうセンパイったら私を褒めても何も出ませんよ〜」
……むしろ貶しているんだが。
なんなら日頃の行動を見直して欲しい。
「分からない、僕の降参だよ」
「しょうがないですね〜センパイの自慢の彼女である私が教えてあげましょう〜2月と言えば……
ーーつまりバレンタインですっ!!」
「バレンタイン?
……あぁバレンタインか」
「今の間は何があったんですかセンパイ……」
「いや今まで僕には全く所以が無かったイベントだったもんだから存在を忘れていたよ」
「いやいや忘れちゃいけないでしょ……
というか与謝野先輩から聞いたんですけどセンパイのチョコ部内で人気だったらしいじゃないですか」
「あぁそう言えば昨年はそんなだったような気がする」
「……センパイにチョコをあげに来た女子部員の心を容赦なく折るぐらいの完成度高めのチョコを作った張本人が何を言っているんですか」
そう言えば昨年僕がチョコをお返しにあげた女子部員が全員何故かチョコを食べた瞬間、落ち込んだのを思い出した。
「そんな事もあったね」
「なので今年は女子部員一同、センパイからのチョコを楽しみにしています!!」
「いや作れ自分達で」
海外のバレンタインは知らないが日本のバレンタインは最初女子の方からくれるものではないだろうか?
「無論私も待っています!!」
「いや七海もつく
ーーごめん君だけは何もしないで待っていてくれ」
「私だけなんか扱い違う!?」
「せっかく新品のキッチンを壊してもらっては困る」
七海が料理をしたらキッチンが壊れる可能性がある。
……いや絶対壊す。
「私よりキッチンの心配なの!?」
「どっちも大事だよ無論。
ーーだから両方とも心配なんだ」
「センパイは私とキッチンどっちが大切なの!!」
「キッチン」
「うわぁ〜〜〜ん!! 泣いてやる!!」
「ごめんごめん嘘だって」
「良いですよ!! さっきの発言忘れなんなよチクショウ!!絶対センパイを満足させるチョコ作ってやる!!」
「……だから言葉使いだって」
「絶対センパイを美味しいって言わせて勝ち誇ったドヤ顔をしてやるからね!! なんなら見下してやる!!」
「はいはいやってみな」
「そのためにご飯ちょうだい!!」
「その前段階は結局僕が作るのね!?」
次回から新章に入っていきます
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