部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

きゃっきゃっ

12月30日

明日で今年が終わるという日、僕と七海は七海の家の
近所を手を繋ぎながら歩いていた。
「まさか同棲という大事な話題が僅か10分で
話されていたとは……」
歩いていても話題は昨日の同棲の件だった。
何せ昨日ほぼいきなり決まったのだから。
「まぁまぁいいじゃないですか〜そのかわり
新居の手続きとかは全部やってくれるから
私達は何もしなくていいんですよ〜」
「それはそうなんだけどさ……なんかこう
納得出来ないというか素直に喜べない……」
「にしてもセンパイのお父さん凄いですね〜
昨日あんな凄いの送ってきて」
「全く他に使うところあんだろ……」
昨日の夜に親父から"新居の条件"というのが届いて
今更どんな条件を守らせるつもりだと思いながら
中を見てみるとそこには

ーー駅から何分の距離?

ーー近くに何があるのがいい?

ーー部屋の広さはどれぐらい?

ーー角部屋? 1階or2階?

など新居に対する条件が事細かに書かれている
マークシートだった。
かなり細かく聞かれており、そこに気を使うなら
別に気を回せと思いたかったが、とりあえず
親父の好意? に甘える事にした。
と言っても僕が答えたのは駅からの距離だけであり
"今までと同じ距離"と答えた。
それを朝送ると、親父からわりとすぐに返事が来て

"分かった。お前と七海さんの要望を出来る限り汲んで
新居を選ぶ事にする"

と返事が返って来た。
そんな事もあり、親父に言おうと思っていた文句は
とりあえず今現在は言わない事にした。
……だからと言って文句を言わないつもりは無い。
次会った時に言ってやろうと思う。
だが今は……
「センパイ〜どうしたんですか?」
「ん? 何が?」
「なんか妙に顔がいかつくなっていたので」
「あぁ悪い。何でも無いよ」
とりあえず今は七海と楽しいデートを楽しむ事にした。
「変なセンパイ。あっ、変なのはいつもか」
「……喧嘩売ってるのかな?」
「冗談ですって〜可愛い彼女の冗談の1つや2つを
許してくださいよ〜」
「ーー帰ったら飯抜きな」
「またまたセンパイ、ご冗談を〜そんな可愛い彼女に
あのお人好しのセンパイが出来るわけ」
「あっ、七海のお母さんですか?
国木田拓海です、今日の晩御飯ですが……」
僕は七海のお母さんに電話をすることにした。
「それは冗談じゃ済まない奴ですよ!?」
「ハハッ、彼氏の冗談ぐらい1つや2つ許してくれ」
「センパイの鬼ーー!!」



なんて思いながらしばらくぶらぶらしていると
「あれ? ななみん?」
「ん?」
僕らが同時に振り向くと、そこには七海と同年代ぐらいの
女性がいた。
若干茶色が入っている髪をショートにして中々の美人だと
思うが個人的には七海に軍配をあげたい。
「あっ、明里ちゃん〜!!」
七海は名前を呼ぶとその子の方に走っていき抱きついた。
「ななみん、こっちに帰ってきてたんだ〜
夏休み振りだよね!!」
「そうだね!! いや〜明里ちゃんに会うと地元に
帰ってきた気がするよ〜!!」
と美人がきゃっきゃっしている姿は
とある後輩の言葉を借りると

"美少女が抱きついている……!!
私も混じりたい!! いやむしろ混ざる!!"

なんだろうと思う。
まぁ確かにこの光景は見ていて心が和む。
「あれ? ななみん、後ろの人は誰?
まさか彼氏なんーー」
「うん!! 私の彼氏だよ!!」
「えぇぇーー!! ななみんに彼氏が出来たの!?
あんな生活能力皆無のななみんに!?」
……どうやら周りの人からも七海の生活能力の
低さは周知の事実だったみたいだ。
「ちょっと明里ちゃん!? 言葉辛辣過ぎない?」
「だって毎日遅刻ギリギリで授業中寝てるのに
成績は学年上位のななみんが!?」
「わぉ、今と殆ど変わってない……
というか七海、君は何をしているのさ」
「だ、だってテストって教科書の内容しか出ないから
教科書覚えればだ、大丈夫だし!!」
……うわぁ、出たよ。出来る奴の言葉。
七海は大学のテストであってもそれなりに高い点数を
出していたりする。
「まさかあんなに自堕落の塊であったななみんに
彼氏なんて……年末に今年一番の驚きが来たよ」
「明里ちゃん……私ってそこまで自堕落かな?」
「「何を言っているの?」」
思わず僕も同じ事を言ってしまい、見事にハモった。
「うわぁ〜息ぴったりだぁ〜へこむよ私?」
「いや七海? 日頃の生活態度を見て、そう思わない方が
おかしいと思うんだ僕は」
「ななみんの10数年間見てきて自堕落以外の言葉が
私には思いつかないかな〜」
「ほ、ほら他に無いの? 可愛いとか美少女だとか」
「「……何を言っているの?」」
「2人の声のトーンが下がった!?
というかそこまで2人で息ぴったりにならなくても
いいじゃ〜ん!! 私泣くよ!!」
「「泣け」」
「あんまりだぁ〜〜!!」

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