部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

同棲!?

「ところで私達から提案なんだけど」
その日の夜ご飯の時に七海のお母さんが唐突に
話を切り出してきた。
「なんですか?」
「なに〜?」
僕達がその様に聞き返すと
「拓海くんと七海、貴方達
ーーどうせならもう一緒に暮らしたら?」
いきなり重要な話をぶち込んできた。
「はぁ!?」
僕は机に手をつき、身を乗り上げた。
「わぁ〜い!!」
そして反応が真逆な僕達。
「いやいや待ってください!! 
話がいきなり過ぎてついていけないんですけど!?」
「私は大賛成だよ〜!!」
「七海は少し静かにしてて。
で、何でそんな話になったんですか?」
「実は前から拓海くんのご両親とも話していたのよ。
もう2人で同棲してもいいんじゃないのって」
「あの両親どもめ……僕には何も相談無しで勝手に
話進めやがって……!!」
今度会ったら絶対文句言ってやろう。
というか前から僕の両親は一言も相談無しで重要な事を
決めたりする癖がある。
……正直言ってあまり良い気分では無い。
だって小さな事なら別に構わないが1人暮らしとか
大きな事を相談無しで進めるのは本当に辞めてほしい。
「ちなみにですが僕の両親とどれぐらいの時間かけて
相談したんですか?」
「えっ、10分未満よ」
「短い!! カップ麺が4つ目出来ていない!!
というか結構重要な話題だと思うんですけど!!」
「大丈夫よ、愛があれば。
ーーって拓海くんのお母さんが言っていたわ〜」
「母さんーー!!」
そうだ。
僕の両親は2人揃って考えがぶっ飛んでいるんだ。
まともな議論を期待した僕がバカだった。
「ちなみにお父さんの方は
“孫の顔が早く見たい!!”って言っていたわ」
「あのバカ親父は……!!」
よりによってそれを娘の両親に言うかな!!
一応親父の方が先輩なんだろうけどさ、
言っていいものと悪い事があると思いますよ僕は。
「ねぇセンパイ」
「ん?何かな?」
と七海は僕の肩に手を置き
「ーー早く孫の顔を見せてあげましょう!!」
満面の笑みで言われた。
「ちょっと七海!? 君までどうした!?」
「だってそこまで期待されたらやるしかないですね。
両親の期待に応えるのが七海クオリティ……!!」
「いやいやそれダメなやつだから。
期待されてもまだダメなやつ」
まぁいつかは七海との子供も欲しいけどさ!!
「むぅ……ヘタレヘタレ〜」
「二度言うなよ!?
ーーというか七海のお父さんはどう思いますか?」
この場合でまともに考える事が出来るのは
七海のお父さん以外にはいないだろう。
そう思って話を振ったのだが……
「お、俺はつ、辛くないから……!!
七海が彼氏とど、ど、同棲しても……!!」
泣いていた。
というかめっちゃ泣いている。
「ちょっとーー!! それって泣くところですか!?」
「な、な、な、七海が……か、か、彼氏と同棲なんて
辛くないからな!! 1週間仕事休むだけだからな!!」
「いやいやそれって結構なダメージですよね!?
というか大ダメージですよね絶対!!」
なんて僕が言っているとお父さんの隣に座っていた
お母さんがお父さんの方に手を伸ばして
「もうウチの人はうるさいわね〜
あなたしっかりしなさい〜」
慰めていた。
「だ、だって……俺の娘が……!!
お、男とど、同棲なんて……!!」
「あなただって私と両親に秘密で同棲していた
じゃないですか」
「うわぁ……何しているのパパ」
明らかに引いている七海。
「毎度ですが何しているんですか……」
「し、しょうがないだろ!!
お母さんの家が厳しい家だったんだからな!!」
「そうなんですか?」
「ふふっ、そうね〜私の家は厳しかったわね〜
門限とか色々とあったからね〜」
とその頃を懐かしむ様に言うお母さん。
なんやかんや言いながらもその頃は楽しかったのだろう。
まぁ確かに彼女の家が厳しい家だと一緒に暮らしている
事がバレたら本当に面倒になるだろうし。
「というかパパって散々私達の事を言っているけど
ーー大体パパ自身に返ってくるじゃん!!」
「グハッ!!」
「あっ、言っちゃったよ……」
多分、今それって一番お父さんの心に刺さる言葉だよ。
娘に言われた言葉が余程刺さったのだろうか。
「娘に言われたぁ……!! 俺はもうおしまいだ……
うわぁぁぁぁ……!!」
本格的に泣き出した。
「あらら泣いたわ〜」
「パパって良く泣くよね〜」
「……2人とも見てないで慰めてあげましょうよ」
というかこの家にお父さんの味方っていないのでは?
なんて思ってしまう僕であった。



お父さんが泣き止むと再び話が始まった。
「ねぇセンパイ〜いいじゃん〜!!
同棲しようよ〜今よりもっと長く会えるんだよ?」
「……というか今の状態でも半ば同棲だよね?」
七海の1日の家にいる8割以上はほぼ僕の家にいる。
「誰も正論は求めてないよ〜重要なのは事実だよ!!
ーー両方の両親から認められいる同棲という事実!!」
「……果たして事実って一体なんなんだろうか。
ーーというかいいんですか七海のご両親は
僕と大事な娘さんが同棲しても?」
「全然大丈夫よ。むしろして欲しいわ」
「俺も……拓海くんなら認めてもいいか……
他の男より数段マシだからな……」
すんなりと彼女の両親からの許可が降りた。
「ほらセンパイ、私の両親からの許可は降りましたよ!!
あとはセンパイの決断だけ!!
ーーさぁどうする? 彼女と楽しい同棲か?
1人で寂しく過ごすのか?」
「極端過ぎないか!? というか中間は無いのか!?」
「フッフッ……中間が分からないんです」
「キメ顔で言うなよ……」
「どやっ」
「いや全然威張れないからね。
というか僕の部屋だと流石に2人は狭いよ?」
今僕が住んでいるアパートは僕が1人で暮らす事を
考えている為、七海の私物が入ると部屋が狭くなる。
「それは大丈夫よ。拓海くんのご両親と相談して
同棲する事が決まった瞬間に新しい部屋が決まるから」
既に先手を打たれていた。
「……ですよね、なんかそんな気がしてました」
僕の両親が何も考えずにそんな事をする筈がない。
相談はしないくせにしっかりと考えている。
それが尚更ムカつく。
「ちなみに家賃は折半で、って話はついているわ」
「そこまで話がついていたのか……」
「同棲するかの話し合いの10分間で」
「本当に即決ですよね!!」
というか10分間でそこまで決めるのか普通?
そもそもそれを話し合いと言うのだろうか。
ただのお喋りだったのではないだろうか。
「センパイは私と一緒に暮らしたくないの……?」
「い、いやそういう訳じゃないよ?
ーーただあの両親の思い通りに進んでいるのが
とても癪に触るだけ、ただそれだけ」
だって七海という愛しの彼女との同棲なんて
断る理由があるだろうか?
いや、ないだろう!!
ただ、ただただあの両親の思い通りに進んでいるのが
癪に触るだけ。とっても癪に触るだけ。
「センパイ……」
と寂しそうに上目遣いで見てくる七海。
「うっ……」
「センパイ……」
「分かったよ、一緒に暮らそうか」
「やったぁーー!!」
七海が勢いよく僕に抱きついてきた。
この瞬間、七海への愛が両親への感情を上回った。
やっぱり彼女は大事だよ。
……だからと言って両親に対してのイライラが収まった
訳では無いのだが。
「じゃあ2人は同棲するって事でいいのかしら」
「お願いします」
「うん!! えへへ〜センパイと一緒に暮らせる。
ーーつまり合法的に夜這いが出来る……!!」
「……寝る時は別の部屋にしようか」
「そんな!! 私に死ねと言うんですか!!
センパイの薄情者!!」
「自分の発言を振りかえろ!!」
「あれ? 私って何か言いましたか?」
「都合良く忘れんな!!」
「えへへ〜可愛いから許してっ!!」
「それとこれとでは話が違うからな!?」


とこんな感じに僕と七海は休み明けから同じ家で
一緒に暮らす事になった。

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