部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

七海の会心の一撃

2人への説教?が終わり再びリビングに4人が揃った。
「ふふっ」
ニコニコしている七海のお母さんとは対照的に
「「はぁ……」」
明らかに落ち込んでいる七海とお父さんが印象的だった。
「ねぇ拓海くん」
「はい、なんでしょうか?」
「いつも七海と一緒にいる時は大体どちらの家に
いるのかしら?」
「それはでーー」
「それは勿論センパイの家に決まっているじゃん〜!!
だってセンパイの家の方が片付いているし〜」
「七海?」
「ひぃ、ごめんなさい……」
「謝るの速いな、おい」
「せ、センパイは知らないから言えるんですよ!!
あの怖さと言ったらもうそれは……」
「あなたは懲りないのかしら七海?」
「ごめんなさいーー!!」
「自分で墓穴掘るなよ……」
相変わらずの彼女であった。
とりあえずお母さんの聞かれた事を正直に話さないと
いけないので僕はそのまま続けた。
「まぁ実際に七海は大体いつも僕の家にいますね。
大体いつも家でゴロゴロしてて……」
「ち、ちょっとセンパイ? それ以上言うと
私が本当に危ないって……」
何か隣で言っているけどあえて無視しよう。
……だって地味に楽しいし。
「寝坊はして毎日僕が起こしに行っていて
しょっちゅう僕の布団に入り込んでいますね」
「……七海ちゃん?」
「ぎゃぁーー!! お母さんの目がマジだって!!
センパイお願いだからやめてーー!!これからはもう少し
1人で頑張って起きるから〜〜!!
……4日に一度ぐらい?」
「な・な・み?」
「毎日起きますーー!!」
「……少しは学習して欲しいかな、お願いだから」
なんて思う僕であった。


「本当に拓海くんがいて助かったわ〜」
「でしょ〜? 流石私のセンパイ凄いでしょ!!」
「七海はもう少し拓海くんに依存しないで
生活しなさいね?」
「えぇ〜〜!! 嫌だよ〜〜!! 私はこれからも
センパイにがっつり依存していくよ〜〜!!」
と自信満々に言う七海。
「七海、君は……ハァ」
「そんな事言ってセンパイは私に頼られるの
嫌いじゃ無いくせに〜〜照れ屋なんだから〜」
「ーー拓海くん、1週間七海の料理作らなくて
構わないわ。いやむしろ作らないで」
「かしこまりました」
「ちょっとセンパイーー!? 彼女よりも
彼女のお母さんの言う事聞くの!?」
「だってな……」
だって君のお母さん怖いじゃん。
なんて口が裂けても言えないが。
「でも七海、少しは自分でやらないと拓海くんに
嫌われるわよ?」
「えっ……?」
「だってあなた、そんなわがままばかり言っていたら
優しい拓海くんだって我慢の限界くるわよ?」
「ハハハ……」
お母さん、それしょっちゅう来てます。
たまにあなたの娘さんを布団に放り投げたりしています。
「い、いやでも……」
「拓海くんみたいな男性は女性から引く手数多よ?」
「大丈夫、センパイって鈍感だし今まで彼女
いなかったから大丈夫」
きっぱり言われた。
「おい、七海それは泣くよ」
既に心で涙の大洪水になっている。
「じゃなくてね七海、これから拓海くんが大学卒業して
社会人になった時に職場の女性陣は真っ先に狙うわよ?
その時、いつも家でゴロゴロしている彼女と
家事が出来る女性なら普通どっちに惹かれるかしら?」
「それは……そうだけど……」
「大丈夫ですよ、お母さん。
僕は七海から離れませんよ」
「センパイ……」
「あらどうしてかしら?」
お母さんが不思議そうに聞いてくる。
「確かに七海は毎日寝坊するし家事は出来ないし
料理はキッチンに近づけたくないレベルですが」
「おぉう……めちゃくちゃ酷評過ぎませんか?」
「ですが僕が家に帰ったらこの彼女が笑顔で
僕を迎えてくれるんですよ」
僕がどんなに疲れていても家に着けば七海が満面の笑みで
迎えてくれる。それだけで僕はまた明日も頑張ろうと
思う気持ちになる。

ーー夏目と喧嘩した日も
 
ーー部内でのいざこざに巻き込まれた日であっても

ーー嫌な事があった日であっても

“センパイ〜〜!!”

あの笑顔と元気な声で励まされてきた。
それだけ七海は僕にとって大切な人である。
「この笑顔のお陰で僕は七海と出会ってからの数ヶ月
頑張る事が出来ました。なので僕はこれからも
彼女、七海と一緒にいるつもりです」
まぁ少しは家事が出来て欲しいと思うのは本心だが
それはこれから成長していけばいい事だろう。
「あらあら七海、あなた愛されているわね〜」
「う、うるさい……というかセンパイは
恥ずかしくないんですか!?」
「いやあまり、かな?」
「なんで!?」
「いやだって……なんかもうこの場は正直に言った方が
良いかなと思ってね。あれ七海はまさか照れている?」
「そ、そんな訳ないじゃないですか!!
この私が照れているなんて……うぅ……」
と言いながら顔が真っ赤になっている七海。
いつもは立場が逆なのでこの状態は珍しい。
「お熱いことね〜そんな2人にはこれをあげるわ〜」
と言うと1枚の書類を出してきた。
それにはこう書いてあった。

“婚姻届”と


「ちょっと待てぃーー!! 何故今それを出した!?」
驚きでいつもの口調が戻った僕。
「あれ? 違ったかしら?」
「何一つもあってないですからね!?
……というか僕の名前以外の記入欄全て埋まってる!?」
よく見てみると七海の名前、七海のご両親の名前
そして何故か僕の両親の名前まで書いてあった。
住所などの欄も埋まっており、唯一空欄なのが
僕の名前を書くであろう場所であった。
……ちなみに七海に至っては“国木田七海‘になってる。
「わぁーーい!! ありがとうお母さん!!
これであとはセンパイの名前を書けば終わりだね!!」
さっきまでの照れていた表情はどこにいったのやら
すっかりいつもの元気な表情に戻っていた。
「待って僕の話を聞いて!? というかいつの間に
僕の両親書いたんだ!?」
だって僕の両親は2人とも出張とかで殆ど日本各地を
飛び回っている。
「あぁ、これね。先輩達が書いた物を郵送して
くれているのよ〜」
「他に金使えよ親父ーー!!」
「み、認めんからな!!」
と今度は七海のお父さんが立ち上がった。
「七海と結婚したいなら俺を倒してからにーー」
「パパ嫌い」
七海の会心の一撃。
「ぐはっ!!」
お父さんは耐え難いダメージを受けた。
お父さんは倒れた。
「よし!! これで障害物は消えたね!!」
「……せめて人扱いしようよ七海」
「えっ、ここに私センパイとお母さん以外に
人っていたっけ?」
「お、俺は認めないからな……実力で俺を
倒してからじゃないと七海との結婚」
「いいもん、孫出来ても絶対見せないし」
「ガハッ!!」
お父さんは戦闘不能になった。
「七海、そろそろやめてあげようよ……」
「じゃあこの書類に名前を書いて〜」
「書くか!?」

なんて愉快な会話をしながらも穏やかな時間は
過ぎているのであった。

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