部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

似た者同士









行く前に紆余曲折あった俺らは東寺に着いた。
「やっぱ生で見る五重塔はちげぇな〜」
「それはわざと外から見える様になっているんですよ」
「どう言う意味だ?」
「あれはですね。元はお釈迦様のお墓みたいな意味が
あってですね。遠くからでも出来るだけ多くの人達に
見てもらいたかったからあの高さみたいですよ」
「へぇ……」
流石我が彼女。かなりの物知り。
前にゲーセンでのデートでクイズのゲームで
最高難易度のクイズをあっさりと解いていただけある。
「今でもこそ周りに大きなビルとかありますけど
当時からして見ればかなり遠くからでも見える建物
だったと思いますよ」
「確かにこんなに出かければ目立つから沢山の人が
見る事が出来るな」
俺は改めて目の前の五重塔を見上げる。
「はい、だから出来るだけ高く作る必要があった
らしいですよ」
「なるほど……勉強になった!!
凛子とデートしていると同時に賢くなった気分に
なれるな!!」
「いやいや私はまだまだですよ。
私より詳しい人は沢山いますよ?」
「それでも教えてくれるのが凛子で俺は嬉しい。
よっ、流石凛子」
手を囃し立てて凛子を煽ててみた。
すると凛子は
「ちょっとや、やめてくださいって……
ーーそれ以上言うと暴走しますよ?」
顔が赤くなったと思いきや、いきなり脅迫された。
「何故に!?」
「それは……褒められて嬉しいからですよ!?
あぁ文句ありますか!? ありますよね!?」
「待って文句がある前提で言われているの俺!?
というか既に暴走してるよな!?」
さっきまでの落ち着いたインテリの面はどこに行ったのか
いつものポンコツ面が出てきた。
「うるさいです先輩のくせに!!」
「酷っ!?」
「って言えば許してくれるって七海が言っていました」
「凛子……あまり君の親友を悪くは言いたくないが
ーー相談する相手間違っている……」
「……すみません、私も聞いておいて何か違うなって
思っていたんですけど、七海があまりにも嬉しそうに
言うものだから断れなくて……」
「あぁ……それ何となく想像つくよ、それ」
凛子は意外と押しに弱い。
更に平塚は押しが強い。
そして凛子はなんやかんやで平塚に甘いため
毎回平塚の要望を聞いてしまう。
(平塚があまりにも嬉しそうに話していたのが
尚更断れないよな……)
「凛子、親友は大切だと思うが……
相談する前に一度考えようか」
「ですね……でも誰に相談すれば……」
「そうだな……」
俺は頭の中で考えてみた。
(与謝野は……アウトだな)
だってあいつ絶対凛子に抱きつくし。
抱きついていいのは俺だけだ!!
(次は樋口先輩だが、あの人なら……
いや、一番ダメな人物だよな)
あの人に凛子が相談した瞬間に一気に俺たちは
樋口先輩のオモチャになってしまう。
(さて次は……あれ俺が話す女性ってもういない?)
俺の日頃の話す相手を男女問わず頭の中で振り返る。

1位   国木田先輩

2位   凛子

3位   織田

4位    与謝野


(あ、あれ……詰んだ)
「しまったーー!! 俺話す相手いなかったーー!!」
というか彼女より話す割合高い国木田先輩って
なんなんだ!?
「ゆ、結城先輩!? ど、ど、どうしたんですか!?」
「そう言えば俺コミュ症だったーー!!
話す相手まともにいないだと……!!」
「ほ、本当にどうしたんですか!?」
「まさかここでコミュ症の弊害が出るとは……
うぉーー!! しくじったーー!!」
俺は頭を抱えていた。
いや、文字通り頭に手を当てていた。
「先輩ーー!? お、起きてください!? 
あれ、起きてはいますね……目覚めてください〜
これも違いますね……」
「……すまん、俺の周りに凛子の悩みを聞いてやれそうな
人物はいなかった……国木田先輩が一番だった……」
「……? 先輩は何を言っているんですか?
私の悩みは別に構いませんが……」
「どうやら俺は凛子の悩みを聞く相手を探す前に
自分自身が話す相手を増やす必要があるみたいだ……」
「はぁ……?」
凛子は俺を不思議そうに見ていた。
「凛子の周りにはそういう人いないのか?
例えば母親とか……」
「ーー絶対嫌です」
「い、いやでも」
「死んでも嫌です」
「そんなにか……」
「別に両親を嫌っているわけではありません。
ーーただこの問題を相談したくないだけです」
「そうか……ちなみに高校までの友達とかは……?」
「……」
いきなり目線をそらす凛子。
「もしもし凛子さんや」
「……ナンデスカセンパイ」
「急に片言になるのやめようか。まさかだと思うが
ーー友達いないとかは無いよな?
まさか凛子に限ってそんな事……」
俺みたいなコミュ症じゃあるまいしと思い、見てみると
「……アハハ」
「ま、まさか図星?」
「だ、だってしょうがないじゃないですか!?
私もあまり人と話すの得意じゃないんですよ!!」
「嘘だろ……」
「私話すと口調が強めなので……ついつい言い過ぎて
気がついたら……ボッチでした……すいません」
「いやいいんだ……俺も人の事言えないから……」
多分俺らは似ているんだろう。

ただ違うのは俺は話せないコミュ症。

凛子は言い過ぎてしまうコミュ症という違いだ。
「なぁ凛子」
「なんですか?」
「ゆっくり直していこうか」
「そうですね……前途多難ですが……」
「だろうな……」
「「ハァ……」」
俺らは見つめ合い、溜息をついた。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品