部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

こんな感じ

俺と凛子はあの後、仁和寺など様々な場所を観光した。
そして宿に戻ってきたのは午後の5時ぐらいだった。
受付で鍵の件を聞くと、既に誰かが帰っているらしい。
しかも男部屋の鍵だけ借りられているらしい。
「多分、国木田先輩か織田先輩のどちらかが
彼女と一緒に部屋にいるんじゃないですか?」
と凛子に言われて、とりあえず俺らは男部屋に向かった。
「ただいまっす〜!!」
俺がそんな風に声を出して部屋に入ると……
「……しっ〜」
と国木田先輩が口に指を当ててその様に言ってきた。
「へっ? どうしたんで
ーーあっ、そういう事ですか」
俺は先輩の膝付近を見て、理解した。
「すぅ……」
先輩の膝を枕代わりにして平塚が身体を丸めて寝ていた。
「すまないが、少し静かにしてもらえるか?」
「いえいえ分かりました。じゃあ俺たちはもう少し
外で時間を潰してきますね。凛子も大丈夫?」
「私も大丈夫です」
「じゃ、俺たちは行ってきますんで
ごゆっくりと〜」
「……言い方が癪に触るけど、いってらっしゃい」
と俺たちは部屋を後にした。


「あの2人って2人だとあんな雰囲気なんですか?」
「ん? あれ、そういえば凛子って先輩達のあの雰囲気
ってあまり見たこと無いんだっけ?」
「そうですね……あんまり無いですね」
「俺は見慣れているからな……」
なんせあの2人を付き合う前から見ているからな!!
……意外と進展無くて俺と織田、与謝野はどれだけ
イライラしたか。
しかも付き合い始めてからは甘すぎて見ていると
連日胸焼けだった記憶がある。
「……ご愁傷様です」
そんな俺の思いが届いたのか、凛子がそう言ってきた。
「まぁでも、見ていて嫌では無いな」
「確かに、私もそんな気がします。
七海はいつも国木田先輩の事を幸せそうに
ーー惚気てくるんで」
凛子の言葉を聞いて、平塚が惚気ている場面を
容易に想像出来てしまった。
「"センパイさ、寝顔可愛いんだよ〜!!
最早あれは国宝級だよ〜!!"
って知らないわよ!! しかも国木田先輩が
どれだけカッコイイかを自慢されても分からないわよ!!」
多分平塚が凛子に惚気ている場面を思い出して
怒っているのだろう。
「ち、ちょっと凛子!? 落ち着けって!!」
「しかも別の日には
"見て見て〜センパイ手作りのお弁当なんだよ〜!!
しっかりと栄養バランスも考えてあってさ〜
もぉ〜センパイたら私の事大好きなんだから〜"
貴方の方が彼氏の事大好きでしょうが!?
……あぁ無性にイライラしてきました」
「凛子、どうどう」
「だって結城先輩分かりますか!?
食事の会話の半分以上惚気ですよ!!
貴方は他に話すことはないのかしら!?
って思いたくなりますよ!!」
「あ……なんとなくわかるわ、それ」
だって俺も織田と与謝野とメシに行くと
大体同じ状況になる。
「今は私も付き合っていますから大丈夫ですが
付き合う前とかこめかみピクピクさせましたからね!?
それなのに気づかないあの子は……!!
あぁ〜もう!! なんなのよーー!!
親友やめてあげようかしら!?」
「ハハハッ……」
(なんて口で言っているけど多分凛子は平塚の事が
大好きだから親友やめるとか絶対言えないだろうな……)
なんて考えていると自然に笑みがこぼれた。
「どうしたんですか結城先輩!?」
相変わらずやや興奮気味の凛子。
「いやいや凛子は可愛いなって思ってさ」
「なっ……」
「平塚の事を口では文句を言っているけど
平塚の事大好きなのがまる分かりなのが
素直じゃなくて可愛い」
「な、な、な、な、な!?
ゆ、ゆ、結城先輩は何を言っているんですか!?
私と結婚したいとか!!」
「はっ!? 待て、そこまでは言ってないぞ!?」
「そ、そ、そんないきなり言われても困ります!!
あっ、でも私は構いませんよ!?
この旅行が終わったら互いの両親に紹介して
そして1月からは同棲を始めて……
6月に式とかどうでしょうか!!」
「随分具体的なプランだな、おい!?」
「そしてそしてゆくゆくは一線越えたりして……
子供は2人で……あ、でもその前に式ですね!!
確か先輩は……」
「ストップ〜!! ストップだ凛子!!
一度落ち着こうか?」
「せ、せ、先輩は和風と洋風どちらの結婚式が
いいですか!? ちなみに私はどちらでも大丈夫です!!」
「ダメだ……全然止まらない……」
「ーーお前ら周りに声響いているぞ?」
「「えっ?」」
俺らが後ろを振り向くと……
「……はぁ、何してるんだよ2人揃って」
「凛子ちゃん可愛い〜!!た、た、食べちゃいたい……」
「やめろよ、桜……」
そこには両手を前に出して今にも飛びつこうとする
与謝野とそれを掴んで止めている織田がいた。
「あれ、お前らも帰ってきたのか?」
「……俺の財布が2割切ったからな」
「あっ、察し」
よほど与謝野が食べたに違いない。
「ところで2人は何で部屋の前で痴話喧嘩
しているの〜? そして抱きついて
ーー吉晴〜痛い〜痛い!!」
「桜はいい加減にしような……!!
で何で部屋の前で痴話喧嘩?」
「実は……」
と俺らが部屋を出る前の出来事を織田達に話した。
「へぇ〜国木田先輩がか……」
「寝ている平塚に抱きつき
ーーだから痛いって!? 冗談だって!!」
与謝野は織田に頭を握られていた。
……こいつは学ばないのだろうか?
「とりあえず俺達がこんな風に騒いでいれば
平塚も起きるだろ」
「あっ……確かに
って事でただいまっす〜!!」
俺は再び部屋に入った。
だが……
「すぅ……」
「うへへ……」
先輩は平塚を膝枕をしたまま寝ていた。
「あらら」
「ほぅ」
「いや〜青春だね〜」
「……とりあえず俺らはもう少し時間潰すか?」
「「賛成」」
と俺ら4人は宿の外で時間を潰すのであった。

コメント

  • ペンギン

    いいですねぇーw
    いつも通り面白いです!これからも頑張ってください!

    3
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