部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

大変なんだな











俺は桜に夢の世界から引きずり出されて現実に戻った。
「クソッ……狐が……巫女が……」
「何を言っているの吉晴は……」
珍しく呆れた表情をする桜。
桜には分からないだろうな、あの桃源郷は……!!
あぁ……素晴らしきシャングリラ。
狐巫女姿の桜……!!
「という事で行くか」
「待って、何が"という事で行くか"なの!?
珍しく私が吉晴にツッコミを入れているんだけど!!
ねぇその話の内容教えてもらえるかな!?」
「さて行くか!!」
「いつもの吉晴じゃない!!
狐に騙されているのかな、私!?」
失敬な。本物の俺だ。
それに狐は桜だろう。
「はいはい、行くぞ〜」
俺は前に進み出した。
「やっぱり私騙されているんだよね!?
夢なら早く醒めてよ〜!!」
頭を抱えながら叫ぶ俺の彼女。
「どうした桜? そんなに騒いで」
「誰のせいだと思っているの!!
貴方のせいだよ吉晴!!」
「大変なんだな桜も……」
「うが〜!? もう嫌〜!!」
なんか桜が壊れていた。



「鳥居が沢山ある……綺麗だね〜」
「あぁ確かにな」
先程までの会話とは打って変わり、千本鳥居の入り口に
立ち、奥に続いている鳥居を見て感動していた。
鳥居があるだけでかなり幻想的な空間に入れるというのに
それがいくつもあり、先か見えないとなると
その幻想さがさらに増してくる。
(……なんとなくだが、さっき桜が言っていた
厨二心をくすぐるのも分かる気がするな)
俺もその光景に見惚れていた。
「吉晴〜写真撮って〜!!」
と自分のスマホを押し付けてくる桜。
「はいはい、分かったよ」
「じゃあお願いね〜!!」
鳥居の前で元気良くピースサインを決めてくる桜。
俺はそれを丁寧に写真に撮った。
「どう? 可愛く撮れた〜?」
「あぁ、可愛く撮れたぞ。見るか?」
「見る見る〜!!」
と桜にスマホを返した。
「うん、可愛く撮れているね!! いや〜流石私だわ〜
来年ぐらいミスコン出ようかな〜」
「ーーいや、それダメだ」
「えぇ〜なんでよ〜吉晴だって可愛い彼女見たいでしょ?」
「可愛い姿を見るのは俺だけでいい」
「へっ……?」
「桜の可愛い姿を他の野郎共に見せる訳にはいかない
だからミスコンは出ないでもらえると嬉しい……」
俺の彼女はとても可愛いし綺麗だ。
(彼女にする前、どれだけ俺が苦労したか
桜は知らないんだろうな……)
国木田先輩や樋口先輩に協力してもらって
関係各所に手回しをしまくった。
彼女になったとは言えども結構声がかけられて俺が嫉妬する。
ミスコンなんていうか野郎共が沢山いる場所に桜を
行かせたら、俺がいつまで我慢出来るか分からない。
(てか俺、嫉妬心強すぎて気持ち悪いな……
流石に桜も重すぎて引くよな……)
"吉晴……それは重たいよ……嫌だ"
なんて言われるに違いない。
どんな風に罵詈雑言が飛んでくるのだろうかと
ビクビクしながら桜を見てみると……
「う、うわ……ち、ちょっと吉晴……そ、そ、それは
は、は、恥ずかしいな、な、な、……」
顔が赤くなり、混乱しているようだった。
「あ、あれ……?」
「そ、そ、そ、そりゃ、み、み、み、ミスコンは
出ないつ、つ、つもりだけど……ま、ま、まさか
よ、よ、吉晴がそんにゃこ、こと言うなんて
お、思わにゃいから……」
混乱の上、呂律が回っていない桜。
「桜さん〜?」
「そにゃ、そんにゃこと……い、いわなにゃ……
も、も、もう無理……ふにゃ〜」
とその場に膝から倒れる桜。
「ちょいちょい桜!? どうした!?」
「も、もう私、て、天国に行ける……幸せ……」
「ちょいーー!? 桜さん〜!! 戻ってこ〜い!!」
俺は桜を揺さぶる。
「あ……天国のひいおばあちゃんが手招きしてる……
待ってて今行くから……」
「いやいやそれ本当にマズイやつだから!!
カムバック〜!!」
というかこれ数分前逆の立場だったわ……。
なんて思いながら桜を必死に揺さぶるのであった。

コメント

  • 雪雨

    ボケとツッコミが逆転してるのなんか美味しいw

    2
  • ペンギン

    二つの意味で面白いです!w
    ありがとうございます!

    3
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