部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

おばけ屋敷にはご注意を


今回は森と凛子の話です。









「ごめん待たせた!!」
俺は走って待ち合わせ場所にいる彼女の元に向かった。
「いやいや!! 大丈夫ですよ。それよりも部活の練習
お疲れ様です」
そこには彼女である江國凛子さんがいた。
「予想以上に長引いてさ……」
「大丈夫ですって、さっ行きましょうよ」
そういうと江國さんは読んでいた文庫本をしまうと
手を出してきた。
「そうだな、行くか」
俺はその手を掴み、手を繋いだ。
「先輩、合格です」
「良かった……間違って無くて……」
「ちなみに先輩は行きたい場所ありますか?」
「俺か……特に決まって無いな……」
というか昨日まで忙しくてロクにパンフレットを
見ておらず、全然考えてなかった。
「じゃあ与謝野先輩が勧めてきた場所があるんですけど
どうでしょうか?」
「与謝野のオススメか……うわぁ……」
絶対嫌な予感しかしない。
俺の本能が告げている。
"与謝野のオススメ、やめておけ"と……
「駄目ですか……そうですか……
そうですよね……私みたいな彼女とは
行きたく無いですよね……」
と江國さんは明らかに落ち込んでいた。
恒例の変な方向に暴走する江國さんだった。
「いや、大丈夫だ。行こうか与謝野のオススメ」
「えっ、でも……」
与謝野のオススメは行きたくは無いが
江國さんの笑顔の為、ここは頑張ろう。
「よっしゃーー行くぜーー!!」
「分かりました、フフッ」
と笑みを浮かべながら返事をした江國さん。
まぁこの笑顔の為なら、与謝野のオススメぐらい
喜んで引き受けようじゃないか!!
……江國さん以外なら絶対断るが。



「……本当にここなのか?」
俺は隣の江國さんに尋ねた。
「ええ、ここですよ」
俺達がいるのはおばけ屋敷のブースだった。
噂によると今年のブースの中では一番怖いらしい。
「というか与謝野ってホラーとか苦手なはず……
絶対裏があるぞ、これ……」
「さぁ行きましょうか先輩」
「あれ江國さんってホラー得意なんだ」
「えっ!?い、いや、怖いですよ? はい」
「……?変な江國さん……?」
「頑張れ、私」
うん、聞かなかった事にしておこう。



そして俺らはおばけ屋敷に入ったのだが……
「ウワッ!!」
とかな〜りリアルにおどかしてくる。
「おっとと……」
俺も驚くぐらい迫力があり、こりゃ一位になるのも
分かるのであった。
試しに隣の彼女を見てみると……
「まだ飛び出しが甘いわ……」
何故か駄目出しをしていた。
(試しにしばらく見てみるか……)
俺は隣の江國さんを観察することにした。
「暗すぎるとまず見えないし、音でおどかしてくる割には
音量に問題がある……まだまだだわ」
と1人で頷いていた。
「江國さんってホラー得意なんだな?」
「いえ!? こ、怖いですよ!? はい!!」
「だってさっきおばけ屋敷の駄目出ししてたぜ?」
「……」
といきなり固まる江國さん。
「あ、あれ江國さん……?」
「き、きゃあ〜、怖い〜」
「……」
多分怖がっているフリなんだろう。
だが江國さんは致命的なミスをしている。
「江國さん、1つ言っていいか?」
「わ〜怖い〜助けて〜森先輩」
「……演技下手だね」
あと演技をするタイミング遅いな。
まるで死んだ後の心臓マッサージぐらい遅い。
「……」
江國さんは怖がっていたフリをやめた。
そして顔を真っ赤にして
「い、家帰ります!!」
俺に背を向けて逃げようとした。
周りは真っ暗なので、江國さんの表情は見えないが
なんとなくそんな気がした。
「いやいや待て待て!? いきなりどうした!?」
俺は江國さんの手を掴んで、尋ねた。
「離してください!! もしくは殺してください!!
森先輩の手にかかるなら本望です!!」
「まずは落ち着いてって……てかそこまでいく!?」
「だって恥ずかしくて死にそうなんですよ!? 
あんな下手な演技して!!」
「あっ、下手って自覚あるんだ……」
「もう嫌だーー!! 森先輩に嫌われたーー!!
死にたい!! 死にたい!! 死にたいーー!!
どうか殺してください!?」
「だから落ち着いてって……」
となだめるものも、暴走し始めた江國さんは中々
止まらない。
(まさか、ここで使う事になるとは……
え〜い、やるしかないよな!!)
俺は決心をした。
そして
「凛子!! 落ち着けって!!」
彼女の下の名前で呼んでみた。
「は、はい!?な、な、なんでしょうか!?」
止まってくれた。
「大丈夫だって、俺は凛子の事を
それぐらいじゃ嫌いにならないから心配すんな」
「そ、そうですか? 本当ですか? 本当ですね?
本当だと言ってください!?」
また始まった凛子の暴走。
「わ、分かった、分かった。本当だ」
「本当ですね? 分かりました信じます……
ってあ、あれ? 今私の事……」
「ま、まぁそろそろいいかと思っていたからな……
何故かおばけ屋敷で言うことになったのだが……」
「確かに……ムードはしょうがないですね
ねっ、結城先輩」
「り、凛子……?今俺の名前だよな?」
「ちょうど私も下の名前で呼ぼうと思っていたところ
でしたので良いタイミングでしたよ」
と言うとお互い一気に恥ずかしくなり顔を逸らした。
「じ、じゃあ行くか、凛子……」
「え、えぇ行きましょうか結城先輩……」

俺らは恥ずかしくなりながらも手を繋ぎ
おばけ屋敷を出たのであった。








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参加されたい方はどうぞ!!

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コメント

  • ノベルバユーザー239382

    砂糖がゲロォ…(T┰T )

    1
  • ミラル ムカデ

    コーヒー飲みたい!
    糖尿病になりそう……

    3
  • Qual

    最近の話は甘すぎて砂糖作れる!

    3
  • A・L・I・C・E

    甘い。凛子さん可愛い。あと、甘い。森よく言った。それと、甘い。

    3
  • Flugel

    隊長!口から砂糖が出てきて止まりません!なんだこのカップルは!初々しすぎてあっまあまじゃねぇか!最高かよ!

    3
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